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2019.12.02 NEW読み方の角度

成功者たちが走り抜けた「サードドア」。失敗を恐れず、王道よりも裏道を選ぶワケとは

成功者たちが走り抜けた「サードドア」。失敗を恐れず、王道よりも裏道を選ぶワケとはのイメージ

「このまま、いまの仕事を続けていっていいのだろうか……」。年齢とともにキャリアを重ねていく中で、あるいは急速に変化していくビジネス環境における自身の行く末を考える中で、そうした迷いや不安を抱いているビジネスパーソンは、少なくないだろう。

新しい一歩を踏み出す必要性をひしひしと実感してはいる。しかし、どのようにそれを行えばいいのかがわからない、勇気も足りない……。もし、あなたがそう感じているのなら、ぜひとも手に取ってもらいたい一冊がある。世界18カ国で刊行されたベストセラー、『サードドア 精神的資産のふやし方』(東洋経済新報社)である。

18歳の若者が、ビル・ゲイツやレディー・ガガなどに突撃インタビュー

本書の著者であるアレックス・バナヤンは、1992年にカリフォルニア州ロサンゼルスで生まれた米国の作家だ。簡単に紹介しておくと、19歳でシリコンバレーの投資家となり、米国の有名ビジネス誌で「30歳未満の30人」にも選出。数々の有名大手企業で講演を行うなど、若くして大きな成功と名声をその手に掴んだ人物である。

本書は、そんな彼が「何者でもない」ただの大学1年生だった頃に敢行した「米国各界の成功者たちへの突撃インタビュー」の構想から実行までの過程、そしてその成果を一人称の視点から綴った一冊だ。

突撃インタビューのアタックリストに名を連ねるのは、ビル・ゲイツやスティーヴン・スピルバーグ、ウォーレン・バフェットにレディー・ガガといった超大物ばかり。彼らはどのように成功へと至る第一歩を踏み出したのか。それを聞き出すことが、本書における著者のミッションである。

本書のユニークな点は、ただの“成功者へのインタビュー集”ではなく、著者自身の成長あるいは成功物語としても読めるような構成にまとめられているところ。著者はミッションに挑む過程で、さまざまな困難に出会い、それを乗り越え、成長を重ねていく。ゆえに、著者の視点や経験を追体験しながら読み進めていくことで、成功者たちの言葉をより深い理解と共感をもって噛みしめ、吸収していくことができるのだ。

また、著者がミッションに挑み実現していくプロセスは、まさに著者が成功者たちから聞き出そうとしていた「成功への道を踏み出し、それを獲得するまでの物語」そのもの。読者である私たちに、成功者の言葉と同じくらい大きな示唆と感動をあたえてくれるだろう。

ここでは、「著者がどの様にして成功への第一歩を踏み出すのか?」の始まりの光景を覗いてみるとしよう。

知りたかったのは、成功者たちが歩んだ「第一歩」

物語は、著者が大学1年生だった頃から始まる。ペルシャ系ユダヤ人の移民の息子として生まれた著者は、小さい頃から医者になることを親に期待されて育った。そして、その期待に応えようと勉学に励み、名門である南カリフォルニア大学に合格を果たす。そこから、前途洋々の希望に満ちた新しいライフステージが始まる……はずだった。

入学からわずか1カ月が経ったある日のこと。著者はベッドに横たわりながら天井を見つめ、「一体どこで間違ったんだろう?」と、この上なく悲観的な言葉をつぶやくことになる。

医者になるべく敷かれたレールの上を必死で進んできたものの、そのための勉強が本格化していく中、頭に浮かんでくるのは、“設定された目標”に対する疑問ばかり。本当のところ、自分は何に興味があり、どのように生きていきたいのか――。

悩みに悩んだ著者は、刺激やきっかけを与えてくる本との出会いを期待して、図書館の伝記コーナーをさまよう。そこでまず手に取ったのが、ビル・ゲイツに関する一冊だった。ご存知のようにビル・ゲイツは、若くしてソフトウェア会社を創業。その後の情報技術の発展や社会のイノベーションに多大な貢献を果たし、巨万の富を築き上げた成功者。ビジネスの第一線から退いた後も、慈善事業として積極的に活動を続けている。

著者からしてみれば、ゲイツが成し遂げてきたことはあまりにも巨大で、「エベレストのふもとに立ってはるか山頂を見上げている気分」だった。と同時に、「彼はいったいどうやって登頂の第一歩を踏み出したんだ?」という、新たな疑問が湧いてきた。

何者でもない若い頃に、成功者たちはどうやってキャリアの足がかりを見つけたのか。今度は、その疑問に対する答えが綴られた本を探し求め、数週間に渡って図書館に通いつめる著者。しかし、残念ながら「これだ」という本を見つけることができない。そこで著者が考えたのは、「誰も書いていないなら、自分で書く」ということ。米国各界の成功者たちから“始めの一歩”を聞き出し、本にまとめ、自分と同様に迷える人々のためにシェアしよう――。著者はそれを自身のミッションに設定し、その実現に向けて行動を開始していくのだ。

「サードドア」は、失敗を恐れない者の前にあらわれる

本書のタイトルに使われている「サードドア」とは、数々の成功者たちへのインタビューを遂行していく中で、著者が見出した気づきを象徴する概念である。著者によれば、人生やビジネスの成功には、ナイトクラブと同じように、3つの入り口があるのだという。

1つめは「正面入り口」。中に入れるかどうか気をもみながら、世間の99%の人が長い行列をつくってそこに並ぶ。2つめは「VIP専用入口」。並ぶことなく楽々と中に入ることができるが、このドアを利用できるのはセレブや名家に生まれた人だけに限られる。そして、「いつだってそこにあるのに、誰も教えてくれないドア」が、3つめの入り口=「サードドア」なのである。その入り口を見つけ出し、こじ開けたからこそ、ビル・ゲイツはソフトウェアの開発・販売を実現できたのであり、スティーヴン・スピルバーグはハリウッド史上最年少の監督になることができたのだと、著者はいう。

ここで、「サードドア」を理解するために、強調しておきたいことが2つある。

1つめは、「サードドア」は具体的な特定の方法論、ハウツーの類を意味するようなものではないということ。著者がいうところの「サードドア」は、既成概念や前例にとらわれることなく、王道から外れることを恐れずに行動・決断していくマインドセットのようなものなのだ。

次に2つめ。多くの人に知られていない成功へとつながる入り口という言葉から、「楽に成功を掴むためのショートカット」のようなものをイメージしてしまうかもしれないが、事実はまったく逆であるということ。人とは異なる視点を持ち、行列から外れて進んでいく道には、多くの場合、失敗や困難がつきまとうことになるのだ。

大学を休学し、自らのミッションに邁進していく著者の選択は、「サードドア」をこじ開けて進んでいく過程そのもの。だからこそ、数々の失敗も経験する(ある意味、本書は失敗の記録集といってもいい)。形式的なメールでのインタビュー依頼が次々に断られていくのは、まだ序の口。コネクションを使って、何とか接近することができたスピルバーグにあと一歩のところで連絡先を渡し損ねたり、インタビューを強く希望するあまりにしつこくアプローチし過ぎて、「連絡禁止」の通告を叩きつけられたり、せっかく実現させたインタビューを思うように進められなかったりと、失敗のオンパレードである。

しかし著者にとって、そうした失敗は、決して恐れたり避けたりするべきものでなかった。それどころか、失敗こそが成功の糧だということを、身をもって学んでいく。もちろん、成功者たちの言葉からも、失敗の大切さを学んだ。失敗について、特に印象的な言葉を伝えてくれる成功者は、次の2人。新しい仕組みの浄水器や携帯用人工透析器などを生み出した発明家のディーン・ケーメンと、グラミー賞の歴代最多ノミネーション記録を誇る音楽プロデューサーのクインシー・ジョーンズだ。

発明家ディーン・ケーメンは、アメリカ大陸の横断をはじめて成し遂げたルイスとクラークを引き合いに出しながら、失敗を恐れずに進み続ける覚悟の重要性を著者に伝える。先駆者として何かを成し遂げたいのであれば、「彼らみたいに、失敗して凍傷になる覚悟を決めて、自分でやるしかないんだ」とケーメンは述べる。

一方、音楽プロデューサーのクインシー・ジョーンズが教えてくれるのは、失敗から学ぶ姿勢。マイケル・ジャクソンの『スリラー』をはじめ、ポピュラー音楽史に燦然と輝く名盤を手掛けたプロデューサーはこう断言する。成長するためには、失敗から学ぶほかないのだと。そして、「成長は失敗から生まれる。失敗を大事にすれば、そこから学べる。失敗は最高の贈り物なんだ」というクインシー・ジョーンズの言葉は、著者に大きな気づきをもたらす。それは、「ビル・ゲイツにインタビューしたい」と思い立ち、行動し、そこで経験した数々の失敗こそが、自分を大きく成長させてくれたという気付きである(事実、失敗を重ねながら成長していった著者は、インタビュー相手の成功者たちと、より深く親密な対話が行えるようになっていく)。

既存の枠組みにおさまらないこと。人と異なることを恐れずに、新しい可能性を信じること。試行錯誤し、失敗を重ねながら、それを糧として成長していくこと。そんなマインドセットや覚悟を持った者の前にこそ、成功へと続く「サードドア」は姿をあらわす――。それを体現する著者の言葉、行動には、小手先のテクニックや知識にはおさまらない、新しい一歩を踏み出すための気付きと勇気が詰まっている。

サードドア 精神的資産のふやし方のイメージ

■書籍情報

書籍名:サードドア 精神的資産のふやし方

著者 :アレックス・バナヤン(Alex Banayan)
1992年8月10日、カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。
大学1年生の期末試験の前日、アメリカの有名なテレビ番組『プライス・イズ・ライト』に出場して優勝し、賞品の豪華ヨットを獲得。それを売って得た金を元手に、世界で屈指の成功者たちから「自分らしい人生のはじめ方」を学ぼうと旅に出る。

訳者 :大田黒 奉之(おおたぐろ ともゆき)
京都大学法学部卒業。洋楽好きが高じ、主にミュージシャンの伝記の翻訳を手掛けるようになる。主な訳書に『SHOE DOG(シュードッグ)』(東洋経済新報社)など。

※本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです。

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