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2017.08.24 NEW 境界線の越えかた

1日3本しか作れないネクタイ―だからこそ日本製にこだわるファクトリエ山田敏夫

世界に誇るMade in JAPANの技術を守り、世界に発信すべく、「ファクトリエ」を立ち上げた山田敏夫氏。閉ざされてきたファッション業界に風穴を開けた彼が語る、ものづくりの本質とは何か―。

ご実家は熊本で100年続く婦人服店。子どもの頃から家業を引き継ぐものと考え、大学時代はフランスにも留学したと伺っています。「日本のものづくりの技術を残したい」「日本から世界ブランドをつくりたい」という思いを抱くようになったきっかけは何だったのですか?

日本のものづくりの技術や本質について考えるようになったのは、パリのグッチでアルバイトをしたことがきっかけです。彼らの中には工房だった時代からずっと受け継がれてきた、“ものづくりに対する高い意識”があります。だからこそ自分たちの商品に対しては強烈なプライドを持っていた。
でも、当時の日本はすっかりアメリカナイズされていて、表層的な価値をつくるブランディングやマーケティングばかりが重視されるようになっていました。アメリカのバスケットボール選手を広告に起用したり、ハリウッドスターに着てもらったり。
だからこそ、グッチのものづくりの精神に触れた時に、「本当のブランドはものづくりからしか生まれない」と思うようになったんです。

日本のそうした状況は、パリの人たちの目にどう映っていたのでしょう。

日本には華道や茶道、武道、そして何百年も続く織りや染めなど、一流のものづくりの歴史があるのに、なぜそれを捨ててアメリカナイズする方向に向かうのか。それをもったいないと言って不思議がっていましたね。
当時、僕はそんなに日本の現状に詳しくなかったんですが、調べてみたら確かにMade in JAPANは風前の灯だった。海外ではすごく評価されているのに、です。
それもまた、日本のものづくりの本質に立ち返って、ものづくりにプライドを持ったMade in JAPANのブランドをつくろうと思ったきっかけですね。

ほかにフランスへの留学で学んだこと、身についたものはありますか?

「学んだ」という観点とは少し違うのですが、実は渡仏初日にスリに遭って財布を盗まれてしまったんです。ほかにもいくつかトラブルはありましたが、そうした災難のおかげで、適応力がついたかなとは思います。しなくてもいいような経験も含めて、いろんな経験を重ねたおかげですね。

その後帰国して就職。でも、はじめに選んだのはアパレル系ではなく、IT系でした。そこには何か特別な理由があったのでしょうか。

もし当時の日本に、Made in JAPANのものづくりをし、世界を目指している会社があったら、そこに入社したと思います。でも、そういう会社は見つからなかった。だから「だったら自分で会社を経営するしかないか」と思っていたんです。
でも、そんなときにある大手企業の人事の方から、「経営には営業が大事だ」と言われた。それから営業に興味を持つようになり、営業とインターネットの両方が学べるという理由で、転職サイトやwebメディアの運営を行っている会社に入社しました。

営業やITサービスの知識は、現在のファクトリエの活動にも生かされていますよね。その後、2012年に独立してライフスタイルアクセントを設立。Made in JAPANの工場直結ファッションブランド「ファクトリエ」を立ち上げました。そのときの思いは?

最初に決めていたのは、効率を追うのではなく、むしろ非効率でも感性が宿るものづくりをしなくてはいけないということです。

例えば、ファクトリエで販売しているネクタイの中には、1日3本しかつくれないものもあります。旧式の木製の編み機を使って、1本ずつ手で織っていくんですが、それって世界でも希少な技術なんですよ。もちろん効率はよくないし、コストもかかる。

でも、そこを効率化してしまったら、日本のものづくりの技術や本質なんて必要なくなると思うんですよね。感性で戦うからこそMade in JAPANに意味があると思うし、そういう感性こそが国際競争における武器になるはずです。

これからはビジネスの世界でも「感性」が大事?

機械化が進んでいく業界ではコスト削減が重要な課題になりますが、コスト削減を突き詰めていくと、行き着く先にあるのは機械が商品を作る時代。AIが人間に取って代わる時代になると思うんです。
でも、AIは感性の世界には入りにくい。ピカソと同じ絵の描き方はAIにもできますが、AIが描いたピカソの絵をピカソと同じ価値だと思って買う人は少ないでしょう。そこには、人間の感性がないですから。そういう意味で、感性はビジネスとしてやっていくための指標になり得るものです。

感性を大事にしていくと、作業的に非効率になる部分も出てくると思います。そのへんは何か工夫されていますか?

経営は徹底的に効率化して、非効率なものづくりに最大限投資する。これがファクトリエの考え方です。だからこそ、流通にインターネットを使いますし、そこにいるのは必要最低限のメンバー。起業してから現在までの半分ぐらいの期間、社員は僕一人でした。
とはいえ、ものづくりの現場である工場が「どうすれば儲かるか?」を考えていかないと、非効率なものづくりをやり通すことはできません。インターネットを活用して工場と一緒につくった洋服を直接消費者へ届けたり、売る値段を工場が決めるようにしたり、店頭に在庫を持たないショールームでの販売をしたりという取り組みは、そのへんを考えた結果、たどり着いたものです。

そうしたやり方は、起業する前から考えていたのでしょうか。

最初からモデルがあったわけではありません。すべては壁にぶつかったりするうちにできた「改善」ですね。工場が販売価格を決めるという方法も、もともとは「僕らが価格を決めていたら彼らの自主性が育たないな」という思いから生まれたもの。「どうすればみんなが幸せになるか?」を考えた結果でしかないんです。

起業して、改善を重ねながら、事業を軌道にのせてきた。ご自分の強みは何だと思いますか。

「信じる力」じゃないでしょうか。実は、起業した当初に400枚のシャツの在庫を抱えてしまったのですが、そのときはこう考えていました。こんなに丈夫で仕立てのいいシャツなら2年でも3年でも使える。いや、それ以上かもしれない。

だとすると、結果的にはファストファッションよりコストパフォーマンスはいいんです。そうやって、本当にいいものを長く着ていただきたいと思っています。

今、必要なのはいい商品である点をみんなに伝えていくこと。そうすれば必ず買ってくれるはずだし、支持してくれるはずだ、と。僕は未来も信じているし、日本のものづくりも信じています。それを信じてなくてはモノを売ることも、みんなに喜んでもらうこともできませんからね。

最後に読者に向けてアドバイスをお願いします。

これは本当に難しいですね(笑)。今は、小学生から老人までスマホを通してみんな情報を得ることができるじゃないですか。そんな時に僕が何をアドバイスしていいかわからないですよ。もう大学に行くべきかもわからないです。
ひとつ言えるのは、腹の底からやりたいと思えるものが見つかっていない人は、熱量の高い人の近くで働いたりして時期を待つといいですよ、ということぐらい。そうすれば自分の熱量も上がっていくはずなので。そのときがきたら、あとは一歩踏み出す勇気を持つだけです。

山田 敏夫(やまだ としお)
1982年、熊本県出身。1917年創業の老舗婦人服店の次男として生まれる。良質のメイドインジャパン製品に囲まれて育ち、「長く良いものを丁寧に着る」が自身のアイデンティティーに。2012年、ライフスタイルアクセント株式会社を設立。日本初のメイドインジャパンの工場直結ファッションブランド「ファクトリエ」をオープン。九州未来アワード2016最優秀賞、CHIVAS BROTHERS YOUNG ENTREPRENEUR 2017最優秀賞、中小機構主催Japan Venture Award 2017審査委員長賞を受賞。

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