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【北野唯我】80年代生まれに向けてリーダーが語る 私が大切にしていること

【北野唯我】80年代生まれに向けてリーダーが語る 私が大切にしていることのイメージ

今、現場の中心となって働く80年代生まれのビジネスリーダーは、人生において、ビジネスにおいてどんなことを大切にしているのだろうか。ベストセラー作家でIT企業の役員でもある北野唯我氏にインタビュー。北野氏が「大切にしていること」から、生き方のヒントを見つけよう。

経営者として失敗を経て、愛の重要性に気づく

人生とは「世の中から受けた恩を少しだけ大きな輪で恩返しすることだ」と僕は考えます。誰しも幼少期は一人では生きられない。それでも、今生きられているのは大小あれど愛を受けたから。その愛や恩を、家族や仲間に返すのはもちろんですが、それより少しだけ大きな輪にして返す。それが僕にとっての人生の意義です。

僕はいま、複数のIT企業で役員をしています。そこで経営者として大事にしていることがふたつあります。ひとつは「価値について考えること」。現場のメンバーは事業や製品・サービスの「機能」について考える。一方、リーダーはひとつ上のレイヤーで、会社やサービスの存在価値を定義づけることが仕事です。

そして、ふたつめが「愛」。以前は「ビジネスで愛なんて綺麗ごと」と思っていたし、採用で気にしていたのは能力や経歴、「会社の目標に対して、適切なスキルを持っているか」といった部分でした。しかし、経営者としての失敗を経験するうち、一番重要なのは愛だと感じ始めています。現在は「その人が入社すると事業や会社にどんなメリットがあるか」ではなく、「その人の人生にとってベストか」「愛を持って接することができるか」を考えます。

北野 唯我のイメージ

もっと日常ベースでいうと、社員には「Why」を問うようにしています。「なぜ働いているのか」「なぜうちを選んだのか」を聞くことは、愛がないと面倒くさくも感じます。でもそれが、その人の存在自体を信じて認めるということです。普段のやり取りではなかなか聞き出せないことなので、定期的に1on1の場を設けています。そういう場では「仕事は順調?」ではなく、「人生の調子、どう?」「楽しい?ワクワクしてる?」と聞きますね(笑)。

人によって、何のために働くのかは違います。僕が働く理由は、仕事が持つ「誰かのためになる」「報酬をもらえる」「親友や同志を得られる」という3つの要素が、自分の人生を豊かにする要素でもあるから。つまり、自分の人生を豊かにするために働いているのです。

この3つの要素は、ジブリのアニメを見ているとわかりやすい。初期のジブリには黄金のルールがあって、それを僕は「食事と労働の法則」と呼んでいます。この法則は「労働を伴う食事は善であり、労働を伴わない食事は悪である」ということ。たとえば『天空の城ラピュタ』では、冒頭、シータとパズーが出会い、追手から一旦逃げおおせたところで、目玉焼きを乗せたトーストを一緒に食べます。一方で、敵から手荒に食事を与えられても、シータはそれを食べようとはしない。あるいは『千と千尋の神隠し』でも、無銭飲食した両親は豚になってしまう。これは『魔女の宅急便』でもそうなんですが、初期のジブリは全て「労働を伴う食事が善」として描かれているんです。

仕事というのは、本来、誰かのためになることです。誰かのためになったら、報酬をもらえる。その報酬をもって、一緒に戦った仲間と食事をともにすれば、心が通うような一生の仲間を手に入れられる。仕事とはなにか、食事とはなにか、仲間とはなにか。労働を伴う食事は善で、そうでないものは悪。その法則を美しく描いているということも、ジブリのアニメが多くの人に受け入れられる理由の一つではないでしょうか。

ただ単に飲み会に参加するだけでは、それをきっかけに親友になることはそうそうないでしょう。でも、一生懸命頑張ったプロジェクトで成果を出して、その打ち上げで仲間と楽しむ食事は最高ですよね。

「憤り」を育てることが独自の価値になる

では、僕がなぜワンキャリアを職場として選んだのかというと、自分自身が社会の理不尽さに割を食った経験があり、それを「変えたい」と憤ったから。

僕は昔から「本当はその人のせいではないのに可能性を阻害されている」状態が許せませんでした。新卒で入社した博報堂を3年で辞め、1年の海外留学から帰国したとき、仕事探しに苦労し、「長い人生のなかで、1年のブランクがこれだけキャリアに影響を与えるのか」と愕然としました。産休や育休、浪人、留年など、世間的にブランクとされる時間でも、当人の価値観を豊かにすることはあります。しかし、日本ではそれをウェルカムとされません。寿命が100年になる時代に「こんなのおかしい。何度でも人がチャレンジできる世界を作りたい」と考えたのです。

ちなみに、ワンキャリアが目指しているのは、職選びの「食べログ」を作ること。人生には数え切れないほどの意思決定が存在しますが、キャリアほど重要で、かつインパクトがある意思決定はありません。特に日本はファーストキャリアの影響がすごく強い。しかし、現状、ファーストキャリアの領域で、公正なデータをもとに意思決定を行うことはとても難しい。僕たちは、それを変えようとしています。

僕が書いた『転職の思考法』と『天才を殺す凡人』も、キャリアにまつわる本ですが、「転職しなさい」と言うのではなく、いつでも転職できるカードを持つことが重要だと主張しています。

『天才を殺す凡人』のイメージ 発売3週間で5万部突破。なぜ才能はつぶされてしまうのか。天才、秀才、凡人の違いとは。30万PVを記録したブログが物語になって書籍化。

そして、これらの本も、やはり憤りからスタートしています。新しいことにチャレンジしようとしたとき、周りの人がそのエネルギーを奪うのをたくさん見てきました。たとえば、転職においては「転職は裏切り者がすることだ」というような一言。『天才を殺す凡人』では、秀才タイプの人や、手のひら返しをする人が、いかに才能を殺しているか、そして才能を殺されないためにどうすればいいかについて書いています。

孫正義さんは「夢と志は違う」とおっしゃいます。夢は個人の欲望。志は身の回りの人や世の中の人々を喜ばせるもの。最近、「『好き』を仕事に」という言葉をよく聞きますが、好きという感情の延長線上にあるのが夢でしょう。

一方、憤りの延長線上にあるのが志だと僕は考えます。「好き」ばかりがクローズアップされているけど、実は「憤り」も、ちゃんと育てれば、あなた独自の価値になる。とはいえ「好き」や「憤り」を、マネタイズするためには、何らかの優れたスキル(=「得意」なこと)が必要です。だから、「好き」「憤り」をマネタイズできる「得意」を育てること。これが、自分に合った仕事を見つけ、充実した人生を送ることにつながるのではないでしょうか。

40歳までに国家戦略の本をベストセラーに

僕にとって、本を書くことは「憤り」をきちんとビジネスに乗せるための「得意」ですが、実は、「40歳までに国家戦略の本を書く」ことを目標に掲げています。「いきなり何を言い出すんだ」と思われるかもしれませんね(笑)。

世界には豊かな国と貧しい国があります。でも、ある時点まで遡ればどちらの国も同じような状態だったはず。ということは、それらを分ける条件がある。自分の中では、豊かな国になるための条件についてもう仮説を立てています。それは、外貨を稼げる産業、適切な政治システム、アクセス容易な高等教育、そして社会的なインフラの4つ。

それをどういう順番で整えていけば最短で豊かな国になれるのかを解き明かし、世界レベルのベストセラーにしたい。その本が、発展途上国の大統領や首相が就任して最初に手に取る本になってほしい。

僕自身は、招かれれば、お金はもらわずにその国のために尽力したい。5年くらい働いて道筋をつけたら、成功事例を持って帰って、今度は日本のために働く。それが人生のベストケースです。

目標にしているのは、大前研一さんと村上龍さんの2人です。大前さんは国家レベルのコンサルタントとして世界的に有名です。村上さんは小説でありながら多くの経営者に影響を与える思想書でもある『愛と幻想のファシズム』や『希望の国のエクソダス』を書いている。2人とも32歳、35歳でそれぞれの本をベストセラーにしているので、僕も人生の目標として、32歳までに絶対にベストセラーを出すと決めていました。1冊目の『転職の思考法』が30歳のときベストセラーになったので、今のところ、なんとか「オントラック」ですね(笑)。

北野 唯我のイメージ

なぜこんなことを目標にしたのかを振り返ってみると、一つは、難しいものを解き明かしたいという願望があること。そして、自分が日本で一番になるにはどうしたらいいかを考えたからです。

誰でもそうなのですが、僕のなかにもビジネスパーソンとしての側面とクリエイターとしての側面があります。ビジネスパーソンは「誰が何を求めているか」を突き詰めて考える。一方のクリエイターは「自分が何者なのか」を突き詰める。そして、その答えを、今世の中にあるものでは表現しきれないから、新しい何かを生み出そうとする。

自分が何者なのか、つまりは「生まれてきた意味」の見出し方は、子ども、会社や組織、何らかのミームを残す……といくつか方向性がありますが、僕は、自分が死んでも「概念」として残りつづけたい。エゴじゃなく、みんなの役に立つミームを残し、それを生きた証にしたい。

自分が何者であるかを突き詰め、その結果として生まれた本が、多くの人に影響を与え、後世に受け継がれていく。それが実現できれば、最高の人生だし、最高の恩返しになるはずです。

北野 唯我(きたの ゆいが)
著述家、ワンキャリア 最高戦略責任者
1987年、兵庫県生まれ。神戸大学経営学部卒業。博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画、執行役員に就任。2019年1月から子会社の代表取締役、社外IT企業の戦略顧問も兼務。著書『転職の思考法』『天才を殺す凡人』。
(制作:NewsPicks Brand Design 執筆:唐仁原俊博 編集:大高志帆 撮影:小池彩子)

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