2018.02.08 NEW
【質問力特集:中編】聞き出すプロの質問力トレーニング。いい質問は普段の準備が生む
年間2000人以上のインタビューを行う、マーケティング業界のプロインタビュアー早尾さんに、本音を聞き出すための質問力の鍛え方を聞いた。
前編では、「相手も気づいていない意識(=インサイト)」を引き出す質問力を身につける重要性と、それがビジネスに与える影響について見てきた。
中編となる今回は、「聞き出す技術」を左右する「質問力をどう鍛えるのか」について、モデレーター養成講座を運営する早尾恭子さんに教えてもらった。
いい質問をするためには事前準備が大事!
いい質問というのは、求められる場所によって意味合いが変わってくるものだ。例えば、激しい議論の場では、相手を黙らせるような鋭い質問が求められる。
ただし、前編で解説したように、聞き出したいのが「顕在化されていない情報」の場合は、鋭い質問はむしろNG。
相手に気持ちよく話してもらうための質問が「いい質問」になる。相手の懐に入り、リラックスしてもらうことで、本音を話してもらいやすくなる。とはいえ、リラックスしてくれたものの雑談で終始してしまっては意味がない。
雑談にしないためには、事前に質問しなければならないテーマについて全体像をとらえておこう。さらに考えられる質問をできるかぎり用意し、想定される返答(仮説)を考え、目的に向かって話を引き出せるような準備が必要となる。
もちろん、誰でも最初から100、200の質問を出せるわけではない。早尾さんによると、質問力を鍛えるには、自己分析といろんな情報に触れることが大切だと言う。
自分の行動を「なぜ?なぜ?」と分析する
質問の幅を広げるには、「もし私だったら?」と想像すること。そのためには、自分の日々の行動を分析するといい。例えば、コンビニで朝に何気なく買った「ナッツと乾燥フルーツのお菓子」。なぜこの商品を買ったのだろう?と自分に質問をしていく。
「シュークリーム食べるよりもカロリーが少ない」
「ダイエット中の身にはちょうどいい」
「乾燥フルーツとアーモンドなら、栄養も取れる」
「乾燥フルーツだけではなく、アーモンドが入っているのが良い」
「アーモンド入りの良さは食感」
「仕事中に、ポリポリという食感は心地よくストレス解消になる」
こんなふうに、理由を洗い出していく。これを習慣化すると、質問を考える時に、「きっとこのジュースを購入する理由は〇〇だな」と、今までの自己分析の結果から、いろんなパターンを想像できるようになる。
また、一つの思考パターンをなぞって経験値をためるだけでなく、物事を深く掘り下げる訓練となる。
ピンからキリまで体験する
自己分析の次は、あらゆる体験をすることをおすすめする。なぜなら、普段通りの生活を続けていては「なぜ?」の問いの幅が広がらないうえに、インタビュー中に直面するさまざまなシチュエーションに対応できなくなるからだ。
特に「ピンからキリまで体験すること」と、早尾さんが説くには理由がある。「相手の返答に対して、どこぐらいのレベルのことを話しているかを把握できるようになる」からだ。例えば、ホテルの場合、超高級ホテルに泊まる予算がないなら、せめてロビーでお茶をしてみる。反対に、あえてお金を払ってカプセルホテルに宿泊してみるのも良いだろう。
また、なるべくなら、トレンドと言われている場所へ行ったり、体験したりするのもいい。自分の五感を使って経験したことは、ただ単に写真を見ただけの質問と違ってくる。そういうリアルな質問ができるかで、相手の懐に入っていけるかが決まるのだ。
また、トレンドなど世の中の動きを知っていれば、老若男女と会話を広げる糸口が増える。特に若者は、同じ言語を共有することを好む。流行りのアイドルの名前を知っているだけで、一気に心を開いてくれることもある。
このように、日々の生活の中でも、思考パターンの種類を増やすこと、物事を深く掘り下げること、話題の幅を広げることを意識して鍛えておく。
また、これを応用してビジネスの現場でもさまざまな事例を検討してみたり、顧客との立場で考えてみることで、「質問力」を磨き上げることができるだろう。
では、「質問力を鍛える」準備ができてきたところで、後編は質問する際に役立つ、「相手が話したくなる聞き方のコツ」を聞いていこう。
- 監修:早尾 恭子(はやお やすこ)
-
株式会社シー・ユー代表取締役。マーケティングの定性調査として行われる、グループインタビュー・デプスインタビューのプロ、「モデレーター」として活躍。2001年より、自社にてモデレーター養成講座を開講。学習院大学ビジネス講座講師、明星大学マーケティング講座講師、企業向けの講習も担当。著書は『モデレーター 聞き出す力』(すばる舎)。