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2019.07.22 NEW

ファイナンス思考を身につける! 朝倉祐介に学ぶ、ファイナンス入門【後編】

ファイナンス思考を身につける! 朝倉祐介に学ぶ、ファイナンス入門【後編】のイメージ

長期的な目線で事業や財務に関する戦略を総合的に組み立てる考え方「ファイナンス思考」。

前回の記事では、ファイナンスの基本的な概念、なぜファイナンス的視点が重要なのかについて解説した。では、一般のビジネスパーソンがそれを身につけるにはどうすればいいのか。

前回に引き続き『ファイナンス思考』(ダイヤモンド社)の著者、朝倉祐介さんにお話をうかがった。

会計は「企業の現在地」を知るために必要なスキルセット

GAFAの経営者たちが優れたファイナンス思考の持ち主だと聞くと、ファイナンス思考とは選ばれた人だけがもつ特別な資質で、自分とは関係のない話だと感じてしまうかもしれない。

しかし、ファイナンス思考は100%後天的なものであり、身につけることはそう難しくないと朝倉さんは断言する。

「ファイナンス思考において重要なのは、その考え方を知っているかどうかです。ただし、思考態度を実践する際に、最低限の基本的な会計の知識とファイナンスへの理解が必要になるので、少しだけ勉強しましょう、と。それだけの話ですね」

では具体的に、どのような知識を身につけるべきなのか。

「まずは損益計算書(PL)を読めるようになることですね。私は『ファイナンス思考』のなかで散々PL脳を揶揄しているので矛盾していると思われるかもしれませんが、前回もお伝えしたとおり、PL=悪ではありません。むしろPLを読めることは最低限必要な知識だといえます。小学生の算数にたとえると足し算のようなものです。

足し算ができるようになれば、次は引き算や掛け算を学ぶ。つまり貸借対照表(BS)やキャッシュフロー計算書(CF)についても学び、財務三表くらいはおおまかで良いので読めるようにしたい。財務三表の意味がわからなければ、投資をするにもどれだけの財務余力があるか、キャッシュはどれくらいの間隔で入ってくるのかなどを把握できないからです。

その意味で、こうした会計知識は『企業の現在地』を知るために必要なスキルセットだといえます。現在地がわからなければ、目的地への向かい方を把握することもできません」

図:損益計算書の構成

図:損益計算書の構成

出典:『ファイナンス思考』
※会計とファイナンスの基礎とポイントについては、『ファイナンス思考』巻末に収められている特別付録にて詳しく解説されている。

そうした会計知識を身につけることができれば、前回の記事で紹介したファイナンスの4要素(「外部からの資金調達」「資金の創出」「資産の最適配分」「ステークホルダーとのコミュニケーション」)を、より深い理解のもとで実践することができる。

「基礎知識が身につけば、あとは実践あるのみです。ベストは自分で実際に事業を回してみること。その意味で、中小企業で働く人や自営業、フリーランスの人は、大企業に勤めている人に比べてファイナンス思考の感覚をつかみやすいかもしれません。もし自分が事業を回せる立場にないのであれば、たとえば自社の活動をファイナンスの4要素に分解して把握してみるなどして、経営の疑似体験をしてみるとよいでしょう」

そのほか、公開されている上場企業の財務データを見てお金の流れを追ったり、起業が目標の人なら週末起業してみるという手もある。身近に「経営」を体験できる方法はないか、探してほしい。

ファイナンスの知識なきところに成功なし

会計の知識があれば、企業のなかをお金がどのように循環しているか理解することができる。お金の流れを把握できれば、次に打つ手も自ずと見えてくる。

しかし、ファイナンスを理解していれば、必ず成果を出せるわけでも、ビジネスで成功できるわけでもないと、最後に朝倉さんは釘を刺す。

「ミクシィの経営改革を行った際に感じたことですが、人が成功できるかどうかを左右する主たる要因は『理』『心』『運』の3つに因数分解できる気がしています。『理』とは頭で考える部分。目的の実現に向けて、最適な道筋を導き出す力のことです。『心』は、『理』から得た考えを実行する胆力のことで、『運』は字のごとく。

この3つのうち、それぞれの影響力は『理:心:運=1:4:5』くらいの割合で、実際のところ『運』が半分を占めるのではないかと思うわけです。これをいうと『なんだ、結局は運か』と呆れられそうですが、『運』は『理』と『心』が整っているところにしかめぐってこないのではないでしょうか。

ファイナンスの知識は、ここでいう『理』にあたります。『理』は全体のたった1割でしかありません。たかが1割、されど1割。正しい『理』がなければ『心』を貫いても成果は得られませんし、『運』もめぐってきません。その意味で、ファイナンスはすべての基礎になるものだと私は考えます」

ファイナンスは特別なものでも難しいものでもなく、これからの時代を生きるビジネスパーソンが当たり前に備えているべき知識。これを機に会計やファイナンスを勉強し、「理」を整えてみてはいかがだろうか。

【お話をお伺いした方】
朝倉 祐介(あさくら ゆうすけ)
シニフィアン株式会社共同代表。競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに勤務。東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィへの売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員を経て、政策研究大学院大学客員研究員。ラクスル株式会社社外取締役。株式会社セプテーニ・ホールディングス社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー。2017年、シニフィアン株式会社を共同設立。
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