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2019.08.15 NEW変革のメソッド

武器としての数字! ビジネスパーソンが最低限身につけるべき、数字の使い方

武器としての数字! ビジネスパーソンが最低限身につけるべき、数字の使い方のイメージ

あなたの日々の仕事における課題を思い浮かべてほしい。「生産性を向上させたい」「上司やクライアントへの説得力を高めたい」など、ビジネスパーソンとして成長するための課題は尽きないだろう。

これらの課題は「数字で考える力」を身につけることによって解決できる──そう提唱するのが『「数字で考える」は武器になる』(かんき出版)の著者、中尾隆一郎さんだ。いったいどのように課題を解決できるのか。ご本人にお話をうかがった。

生産性を左右する「ROI思考」

まず、「数字で考える力」が「生産性の向上」においてどのように役立つのかを見てみよう。次の例題について考えてみてほしい。

かなり忙しくなることが予想される週の火曜日、あなたは上司から「すまないが、3日間で資料を作ってくれないか?」と新たな資料作成を依頼された。そのときの対応は以下のうちのどれに近いだろうか。

A. 今週は忙しいことを説明し、やんわりと断る
B. とりあえず上司の依頼を引き受け、それからスケジュールを考える
C. 内容と納期を確認し、対応を考える
D. 内容と納期を確認し、現在抱えている仕事の状況を伝えて、優先順位を確認する

この質問に対する回答によって、あなたの「数字で考える力」の有無、生産性の高さがわかると中尾さんはいう。

結論から言うと、C、Dと回答する人は生産性が高いタイプであることが多いというのだ。

「A、Bと答えた人は、タスクを納期──締め切りだけで管理している人です。一方、C、Dと答えた人は、タスクを工数──タスクにかかる見積もり時間で管理できる人です。後者は、たとえば『新たな資料作成にかかる時間は4時間』と全体に必要な時間を見積もり、そこからさらに『設計に1時間』『資料収集に1時間』『ドラフト作成に1時間』『レビューに30分』などとタスクを分解して管理することができているのです」

なぜ、C、Dのように工数管理をおこなえる人は生産性が高い傾向にあるといえるのか。生産性とは、数式によって求めることができるからだ。

中尾さんは生産性を“ROI(投資対効果:Return On Investment)”という概念を用いて、数字で管理しているという。

ROIは「リターン(成果)÷インベストメント(必要となる時間やお金)」という式によって算出される(図1)。この値が小さい仕事は、投じた時間やお金に対してリターンの少ない、生産性の低い仕事だということになるのだ。

図1:ROIの求め方

図1:ROIの求め方

出典:中尾隆一郎『「数字で考える」は武器になる』(かんき出版)

逆に、ROIの大きい仕事は生産性の高い仕事だということができる。ROIの高め方は大きく2つ。リターンを上げるか、インベストメントを下げるかのどちらかだ(図2)。

図2:ROIの高め方

図2:ROIの高め方

出典:中尾隆一郎『「数字で考える」は武器になる』(かんき出版)

こうした数式を用いた計算をするためには、リターンやインベストメントなどを、数字で把握している必要がある。先の例でいえば、A、Bタイプの人は納期しか意識していないため、「インベストメント」の数字を把握することができていないことになる。ゆえに、生産性を高めるための調整ができない。

一方で、C、Dタイプの人は工数という数字をもとに仕事を把握しているため、インベストメントを調整することにより生産性を高めたり、より優先度(ROI)の高い業務を率先して進めることで、仕事全体の生産性を高めたりすることができる。

「これができていれば『設計に必要な1時間は水曜の夕方に』『レビューは木曜の朝に』といったふうに隙間時間に作業を割り当てる、あるいは他のメンバーに作業を割り振ることで、すでに抱えている仕事に影響を与えずにタスクを納期までに完了することもできます。いずれにしても、工数という『数字』で管理することにより、生産性が高まるということです」

このように、業務を工数などの単位で管理する習慣、「数字で考える力」は、「生産性を向上させる」ために不可欠なのだ。

フェルミ推定で未知の数値を把握する

生産性を高めるためには、仕事を工数などの数字で把握し、ROIを意識しながら取り組む必要がある。

しかし、仕事に取りかかる前、ROIを計算しようとした段階では、最終的な成果やかかる時間、経費などが把握できず、計算できないということもあるだろう。そんなときに役に立つのが「フェルミ推定」だ。

「フェルミ推定とは、調査しないとわからないような数量を、いくつかの手がかりをもとに論理的に推論し、概算することです。コンサルティングファームやIT企業の入社試験などでおなじみなので、知っているという方も多いかもしれませんね。『琵琶湖の水は何滴か』『日本にガソリンスタンドは何軒あるか』といった、一見、荒唐無稽にも思える設問に短時間で回答するための方法論です」と中尾さん。

たとえば「日本全国の電柱の数は?」というお題の場合、まずは日本の面積を推定する。面積あたりの電柱の数は「都市部」と「その他」の地域では異なるだろうから、次は「都市部」と「その他」の地域の面積を推定。その次に、それぞれの地域ではどれくらいの距離ごとに電柱があるのかを推定する。最後にこの数字に都市部と地方の面積をかけると、日本の電柱の数を推定できる(図3)。これがフェルミ推定だ。

図3:日本の電柱の数を求めるフェルミ推定

図3:日本の電柱の数を求めるフェルミ推定

出典:中尾隆一郎『「数字で考える」は武器になる』(かんき出版)※一部表記を変更。

日頃から「数字で考える」習慣があれば、仕事の最終的な成果や必要な工数も、フェルミ推定を用いて求めることができる。

「与えられた仕事のROI、リターンがどれくらいなのか、インベストメントがどれくらい必要になるのかを推定してみてください。その上で、ROIが高い仕事は優先する。逆に、ROIが低ければ、思い切ってその仕事をやらないという選択をする。そうすることで、仕事全体の生産性がぐっと上がるのです」

「数字」はマネジメント職や経営者との共通言語

次に「説得力」について考えてみよう。「優先順位(ROI)が低い仕事をやらない」といっても、それを上司に納得させるのはむずかしい──そう思ってしまう人もいるのではないだろうか。そこでモノをいうのもやはり「数字」だ。

会社という組織が利益を上げるために存在している以上、上に何かを提言するときには、それをお金に換算して説明する必要がある。逆にいえば、お金に換算する、つまり、数字をもとに考えて説明することができれば、正当な判断をしてもらえる可能性が高まるということだ。

「きちんと部下の状況を把握し、その仕事の工数や優先度を理解した上で仕事を依頼する上司もいます。しかし、そうした考えを持たずに仕事を振ってくる上司も少なくない。後者に対しては、先ほどのように数字を算出し、『これだけの工数を納期までにこなすことはできないのですがどうしましょう?』『この仕事の優先順位(ROI)は低いと思うのですが、どうでしょうか?』と尋ねる。そうするだけで、上司の理解が促進され、交渉がスムーズに進むはずです」

数字を見せながら丁寧に説明すると、人は耳を傾けてくれる。わかりやすいのが、「無駄な会議をなくしたい」と上司に提案するときの例だ。

「会社には驚くほど無駄が多い。必要以上に多い会議はその最たる例ですが、無駄な会議をするなと言っても人は動いてくれません。そこで重要になるのが、お金に換算して無駄を『見える化』することです」

たとえば年収400万円の従業員Aさんの年間労働時間を2,000時間とすると、時給は2,000円。年収1,000万円の管理職Bさんなら、時給は5,000円になる。この2人が3時間の会議をすると、2,000円×3時間+5,000円×3時間=約2万円。それぞれ同じ年収の社員が5人ずつ集まって10人で会議をすれば、3時間で約10万円の人件費がかかったことになる。

人を雇うには社会保障や税金などが必要になるため、実際のコストは約2倍の20万円。20万円のコストを使うということは、最低でも同額の利益を稼ぐ必要があり、営業利益が10%だと仮定すると20万円÷10%=200万円の売上に相当するという考え方もできる、と中尾さんは指摘する。

「会議に求められる生産性を『お金』で説明されると、会議の生産性を高めたいと考えるのが普通ではないでしょうか? その結果、無駄な会議を減らそうという提案は通りやすくなるのです。対クライアントも同じで、何かを提案するとき、施策の成果をすべて数字で『見える化』することで、態度変容を期待することができます」

その意味で、「数字」は上司やクライアントとの共通言語だといえる。『数字で考える力』は、説得力をも圧倒的に高めてくれるのだ。

「数字で考える」を習慣づけるために必要なこと

ここまで「数字で考える力」を用いた効率化や生産性、説得力の向上についてみてきた。

では、これまで数字で考える習慣のなかった人が、その習慣を身につけるにはどうすればいいか。最後に、それを中尾さんに聞いてみた。

「まずは目的を明確にすることです。たとえば私の場合、なぜ数字で考えるかというと、じつは儲けたいからでも経営者になりたいからでもなく、自分の人生をどう生きるかを自分で決めたいからです。どれだけ余暇を確保するか、どういう家庭をつくるか、どんな友だちと付き合うか。要するに、数字を使って人生を管理したかったんですね。目的が明確になれば、習慣づけようという意識が強くなる。もちろん、儲けたい、起業したいといったことも、立派な目的だと思います。

その上で、何かを習慣づけるにはどうしたらいいか。これは簡単で、小さなことでもいいからすぐに始め、毎日継続することです。たとえば運動しようと決めたら、腕立て伏せを1日1回だけでもいいのでとにかく続ける。数字で考える習慣を身につけたいのなら、同じように1日1回でもいいので、たとえばコンビニで手にとったお菓子1つでメーカーが得る利益はいくらなのか計算してみる。本当に些細なことでかまわないので、ぜひ実践してみてください」

ビジネスパーソンであれば無視することのできない「数字で考える力」。もちろん、すぐに全てを数字で管理することは難しいかもしれない。しかし、小さなことからでも習慣づけ、努力を重ねていく。そうすれば、その努力は将来的にあなたがビジネス上の課題に立ち向かうにあたって、大きな武器となる力になってくれるはずだ。

【お話をお伺いした方】
中尾 隆一郎(なかお りゅういちろう)
1964年生まれ。大阪府出身。1987年、大阪大学工学部卒業。1989年、同大学大学院修士課程修了。同年、株式会社リクルートに入社し、主に住宅、人材、IT領域の業務に携わる。住宅領域の新規事業であるスーモカウンター推進室で室長を務めていたときは、同事業を6年間で売上30倍、店舗数12倍、従業員数5倍に拡大させた。リクルート住まいカンパニー執行役員、リクルートテクノロジーズ代表取締役社長、リクルートホールディングスHR研究機構企画統括室長、リクルートワークス研究所副所長などを務め、2018年3月にリクルートを退職。株式会社中尾マネジメント研究所を設立した。著書に『最高の結果を残すKPIマネジメント』(フォレスト出版)などがある。

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