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2020.10.22 NEW変革のメソッド

【セルフ・イノベーション】元アップル日本法人代表の前刀禎明が掲げる“2つの知性”

【セルフ・イノベーション】元アップル日本法人代表の前刀禎明が掲げる“2つの知性”のイメージ

昨今は、グローバリゼーションの進展やコロナショックなどによってVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)──いわゆる「VUCA」が加速したといわれている。変化が激しく、不確実性が高く、事業展開や働き方が複雑化していく中で求められるのは、経験や固定観念にとらわれず、自由な発想で思考できる人材だ。

そこで注目されているのが、個人が常に自分自身を変え成長させていく「セルフ・イノベーション」という概念。提唱者であり実践者でもある前刀禎明(さきとう よしあき)さんは、ソニーやアップルなどで大きな成果を上げてきたにもかかわらず、いまも自分は成長の過程にあると言ってはばからない。どうすれば自分自身を変え成長させていけるのか。ご本人にうかがった。

「iPod mini」を機能でなく“感性”訴求で大ヒットさせた立役者

2020年8月、アップルの時価総額が米企業ではじめて2兆ドルを超えた。

かつてアップル本社のバイスプレジデントと同社日本法人の代表取締役を兼任していた前刀さんはこのニュースに触れ、「あのままアップルを辞めずに勤めていたら、いまごろストックオプションで莫大なお金を手にしていましたよ」と笑う。

前刀さんといえば、音楽携帯プレーヤーである「iPod mini」をファッションアイテムとしてアピールして大ヒットさせ、アップルが日本で復活するきっかけをつくった立役者だ。

当時、“音楽好きな機械オタクのためのガジェット”程度の認識だったMP3プレーヤーを単なる機能面ではなく、“ファッションアイテム”として感性に訴えかけるプロモーションを展開。それまで一般的だった“機能アピール”一辺倒のマーケティングの固定概念にとらわれない戦略は、スティーブ・ジョブズも気に入り、のちに他国でも採用されたという。

そんな前刀さんは、これからの時代を生き抜くカギになるのが「セルフ・イノベーション」だと断言する。いったいどういうことだろうか。

時代が求める“セルフ・イノベーション”人材

「コロナによって多くの企業が在宅勤務を実施したことで時間や環境の制約が少なくなり、これまで慣習的におこなわれていた業務が、実は不要なものだったり、あるいは優先順位の低いものであることがわかりました。

結果として、雇用は『メンバーシップ型』から『ジョブ型』への移行が加速していくと考えられます。そうすると、当然ながらビジネスパーソンは一人一人の価値を問われるようになるわけですね。自分の価値をしっかりと認識し、高め続けないといけない。

そのために必要なのが『セルフ・イノベーション』だと考えています。

この「セルフ・イノベーション」は3つの要素で構成されます。まずは“Free Yourself”──固定概念から自分を解放して、“Create Yourself”──自らの強みやスイートスポットを発見する。それから“Exceed Yourself”──成長を実感し、自分を超え続ける。

セルフ・イノベーションの3要素

  1. Free Yourself:固定観念などから自分を解放する
  2. Create Yourself:自らの価値と個性を確立する
  3. Exceed Yourself:成長を実感し、自分を超え続ける

私の肌感覚では、サイクルの2つめ“Create Yourself”ができたところで満足する人がほとんどで、そこで成長を止めてしまう。しかし、3つめの“Exceed Yourself”まで到達しきることが、これからの時代では一番重要なんです」

これまで大きな成果を上げてきた前刀さんがアップルを辞めた理由は「iPod miniの大ヒットを受けて、アップルでの自分の役割が終わったように感じたから」。まさに“Exceed Yourself”──自分を超え続けるためだ。

必ずしも前刀さんのように転職する必要はないが、現状の自分に満足せず、常に高みをめざして成長し続けるのは簡単なことではない。30代以降のビジネスパーソンともなれば尚更だろう。

固定観念から自分を解放し、自分の強みを発見し、さらに自分を超え続ける「セルフ・イノベーション」の3つのサイクル。

このサイクルを絶やさずに回すために、磨くべき“2つの知性”が『クリエイティブ・インテリジェンス(創造的知性)』と『ラーニング・インテリジェンス(学び続ける知性)』なのだという。

5つの力からなる“クリエイティブ・インテリジェンス(創造的知性)”を磨け!

この2つの知性のうち、まずは「クリエイティブ・インテリジェンス(創造的知性)」とはなにかを見ていこう。前刀さんによると、観察力・質問力・実験力・相談力、そしてそれらを関連づける力、という5つの力で構成されるものだという。

具体的には、物事をよく観察し、自問自答し、仮説を立てて実験し、うまくいかないときは自分とは違った視点をもった人に相談する力。そして、それらから学び取ったことを総合的かつ創造的に関連づけていく力のことだ。

いわゆる問題発見力や課題設定力に近く、これができれば、「Free Yourself:固定観念などから自分を解放する」「Create Yourself:自らの個性を確立する」にあたるクリエイティブ・インテリジェンス(創造的知性)が身につく。

この「クリエイティブ・インテリジェンス(創造的知性)」を身につけるにはどうすればいいのか。実は、前刀さんは「クリエイティブ・インテリジェンス」を養うためのゲームアプリ「DEARWONDER(ディアワンダー)」を開発して無料で配布しているのだ。

「『DEARWONDER』は、立体空間のプレイグラウンド上にある球体を指で動かしながらゴールをめざすシンプルなゲームですが、ステージをクリアするには立体を影などから想像して、トライ・アンド・エラーを繰り返しながら適切なルートを探る必要があります。

『ああしたらどうなるかな』『あ、こうしてもいけるんだ』とやっているうちに、正解はひとつではないことがわかるんですね。

私たちが用意したプレイグラウンドで遊ぶほか、ユーザーが自分でプレイグラウンドをつくって公開することもできます。そうすると今度は、ほかのユーザーが自分では想定していなかった方法でステージをクリアしたりして、あらたな気づきを得ることができる。繰り返しているうちに、柔軟な思考力や多角的な視点が磨かれます」

要するに、スマホアプリをプレイするだけで、観察力・質問力・実験力・相談力、そしてそれらを関連づける力が養われる、というわけだ。

成長の核となる“ラーニング・インテリジェンス(学び続ける知性)”を磨け!

そして、自身の成長において最重要となる「ラーニング・インテリジェンス(学び続ける知性)」とはどんなものなのだろうか。日本のビジネスパーソンは講座に通ったりセミナーに参加したりと、“学び”好きなイメージがあるが、このラーニング・インテリジェンスは「そういう生涯学習的なものとは違う」と前刀さん。

「世間ではリカレント教育や生涯学習が注目されていて、メディアに『ビジネスパーソンの学びたいものランキング1位はプログラミングです』みたいな記事が出る。日本人は肩書や資格に価値を置くのでそうなりがちなんですが、私のいう“学び”は違います。

“やらないといけないもの”や“やらされるもの”ではなく、あらゆる物事に好奇心をもち、自主的に観察したり探求したりして学び取っていく力。それがあると、『これができたから次はあれに挑戦しよう」と、成長する大きな力になってくれる。つまり“Exceed Yourself”──成長を実感し、自分を超え続けるための力ですね」

要するに、ラーニング・インテリジェンスとは、常に好奇心をふくらませ、さまざまなことに興味をもち、貪欲に新しいことを学び続ける姿勢。これがないと、セルフ・イノベーションは機能しない。では、ラーニング・インテリジェンスを身につけるにはどうすればいいのだろうか。

「ことラーニング・インテリジェンスにかぎっては、明確にメソッド化されていません。さっきも言ったように、“やらないといけないもの”や“やらされるもの”ではない。自分のなかから湧き出る好奇心のようなものなので、論理的に鍛えるのが難しいんです。

だけど、方法がまったくないわけではない。たとえば私は空に浮かぶ雲を見上げて、『あの雲はなんのかたちに見えるか』なんてことを日々考えながら、刻々と変わるかたちを面白がっています。好奇心の有無で、同じ景色を見てもそこから得られるものに大きく差が出てしまう。素直な感性で感じて、表現しましょう。

あるいは、だれからでも学べるという意識をもつこと。最近、『DEARWONDER』を使った教育プロジェクトをある中学校と進めているのですが、柔軟な発想をする自発的な中学生から教えられることは驚くほど多い。年齢や肩書、性別はどうでもいい。スティーブ・ジョブズからも、中学生からも、同じように学べるということです」

ラーニング・インテリジェンスを高めるには、何事にも興味をもつこと。これは簡単なようで難しくて、『DEARWONDER』をプレイすればわかるとおり、最初の一歩としてまず重要なのは「観察すること」

前刀さんの言うように、空を見上げて雲を観察してみる。いつもより一駅手前で地下鉄を降りてみる。リモート会議の画面越しに相手を見つめてみる。もしあなたが「ブレイクスルーしたい」と感じているなら、それから始めてみてはどうだろうか。

前刀 禎明(さきとう よしあき)
株式会社リアルディア代表取締役社長。ソニー、ベイン・アンド・カンパニー、ウォルト・ディズニー、AOLジャパンを経て、1999年に無料ISPを展開する株式会社ライブドアを創業。2004年、アップルコンピュータ(現アップル)米国本社マーケティング担当バイスプレジデント 兼 日本法人代表取締役に就任。携帯音楽プレーヤー「iPod mini」を大ヒット商品へと仕掛け、スティーブ・ジョブズに託された日本市場でアップルを復活させた。2007年、株式会社リアルディアを設立。現在は、創造的知性を磨くワークショップ、感性アプリの開発などを手がけている。著書に『僕は、だれの真似もしない』(アスコム)、『5年先のことなど考えるな』(PHPビジネス新書)などがある。

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