2019.03.07 NEW
【地方移住特集:前編】若い世代で高まる“地方移住願望”。半数以上が「関心あり」
満員電車や高い家賃とは無縁な、のどかな地方や田舎の町でのんびりと暮らしてみたい。都会で働くビジネスパーソンであれば、誰もが一度くらいはそんな風に思ったことがあるのではないだろうか。
リモートワークなどを導入する企業が増えつつある現在、そうした「地方移住願望」を持つ若者が増えつつある。
東京在住者の約半数が地方移住に関心あり!
実際、どれだけの人が移住願望を持っているのか。調査データを見てみよう。
ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を企画・運営する株式会社トラストバンクが東京在住者を対象に実施した調査によると、20代、30代の回答者の半数以上が「地方移住に関心がある」と答えている(図1)。
さらに、関心があるだけでなく、20代の16.3%、30代の12.2%が地方移住を「現在検討している」と回答しているのだ。「すでに地方移住することを決めている」と答えた人の割合も、20代10.1%、30代で5.9%となっている。
n | 既に地方移住することを決めている | 現在検討している | 関心はあるが具体的には検討していない | 特に関心はない | ||
---|---|---|---|---|---|---|
年齢 | 20歳~29歳 | 227 | 10.1% | 16.3% | 27.3% | 46.3% |
30歳~39歳 | 222 | 5.9% | 12.2% | 33.3% | 48.6% | |
40歳~49歳 | 222 | 0.9% | 5.4% | 39.2% | 54.5% | |
50歳~59歳 | 222 | 2.3% | 5.0% | 40.5% | 52.3% | |
60歳以上 | 222 | 0.9% | 9.0% | 34.2% | 55.9% |
※東京都在住の20歳以上の男女1,115名を対象にしたインターネット調査。2017年6月26日〜6月29日に実施。
また、最新の国土交通白書で発表されている国民意識調査においても、三大都市圏に住む20代の24.8%が「地方移住推進への希望」を持つという結果が出ている(図2)。30代は13.6%と20代に比べてその割合が低くはなっているが、それでも10人いれば1人以上が地方への移住を望んでいるのだ。
出典:平成29年度国土交通白書
※国土交通省「国民意識調査」から編集部作成。
理想は沖縄移住。現実は?
では具体的に、移住希望者はどこへ移住を希望しているのだろうか。
株式会社トラストバンクの調査では、リゾート地としても人気の沖縄が1位、次いで2位に北海道、3位に長野がランクインしている(図3)。
順位 | 都道府県 | 人数 | 割合 |
---|---|---|---|
1 | 沖縄県 | 71 | 13.1% |
2 | 北海道 | 46 | 8.5% |
3 | 長野県 | 31 | 5.7% |
4 | 静岡県 | 30 | 5.5% |
※東京都在住の20歳以上の男女1,115名を対象にしたインターネット調査。2017年6月26日~6月29日に実施。
一方、地方移住を支援する認定NPO法人ふるさと回帰支援センターが、センター来場者や移住相談会参加者などを対象に行なった調査では、1位が長野、続いて山梨、静岡がトップ3にランクイン(図4)。30代の地方移住希望者のみで見ても、1位が長野、2位が山梨、3位が広島という、ほぼ変わりのない結果になっている。
沖縄の海や北海道の雄大な自然に憧れる人は多いものの、いざ現実的に移住を検討する段階になると、ある程度の交通の便や住みやすさ、仕事への影響などを考慮する必要が出てくる。
首都圏や近畿圏から近いうえ、自然環境も豊かな長野や山梨、静岡や広島といった土地は、そうした理由から有力な移住先候補となっているのだろう。
順位 | 都道府県 | |
---|---|---|
全体 | 30代 | |
1位 | 長野県 | 長野県 |
2位 | 山梨県 | 山梨県 |
3位 | 静岡県 | 広島県 |
4位 | 広島県 | 静岡県 |
※ふるさと回帰支援センター来場者(移住相談、相談会・セミナー参加者等)へのアンケート調査。2017年1月5日~12月24日に実施。
働き方の多様化が地方移住の追い風に
とはいえ、地方移住に憧れはあっても、都会と地方には企業数や給与面などにおいて、依然として格差がある。移住を検討している人たちは、その点をどのように考えているのだろうか。
株式会社トラストバンクの調査では、移住先でも「同じ会社で働きたい(支社やリモートワークなど)」と回答している人が20代で23%、30代で19.3%。また、20代の30.3%、30代の19.3%が「独立して働きたい(起業や自営業、フリーランスなど)」と答えている(図5)。
n | 同じ会社で働きたい(支社やリモートワークなど) | 独立して働きたい(起業や自営業、フリーランスとしての働き方など) | 現地の会社に転職して働きたい | 地方移住後は働く予定はない | 特にこだわりはない | その他 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年齢 | 20歳~29歳 | 122 | 23.0% | 30.3% | 18.0% | 5.7% | 22.1% | 0.8% |
30歳~39歳 | 114 | 19.3% | 19.3% | 21.9% | 11.4% | 27.2% | 0.9% | |
40歳~49歳 | 101 | 6.9% | 20.8% | 28.7% | 9.9% | 33.7% | 0.0% | |
50歳~59歳 | 106 | 4.7% | 17.0% | 16.0% | 26.4% | 34.0% | 1.9% | |
60歳以上 | 98 | 0.0% | 12.2% | 7.1% | 43.9% | 28.6% | 8.2% |
※東京都在住の20歳以上の男女1,115名を対象にしたインターネット調査。2017年6月26日~6月29日に実施。
確かに、最近ではリモートワークを導入する日本企業も徐々にではあるが増えており、また、ITが発展したことで業種によっては地方で起業するハードルも低くなっている。
世代が若いほど「同じ会社で働きたい」と「独立して働きたい」と回答する人の割合が多くなっており、若い世代ほどそうした環境の変化が追い風となって、地方への移住を現実的に考える人が増えているのかもしれない。
一方、生活の拠点を完全に地方へ移すのではなく、最近では都会と田舎の両方に生活拠点を持つ“デュアルライフ”にも注目が集まっている。そこで後編では、地方移住を志向するビジネスパーソンなら知っておきたい新潮流、デュアルライフについて紹介しよう。