新設されたデジタル・アセット子会社の
運営を管理
私自身はデジタル・カンパニー内のデジタル・アセット推進室に所属し、デジタル・アセット子会社であるLaser Digital Holdings AG (レーザー・デジタル・ホールディングス AG、本社:スイス)の会社運営を管理しています。野村ホールディングスの各種会議体を設定し、シニアマネジメントや 各コーポレート部門との連携を進め、Laser Digitalがスピード感を持ってビジネスを推進できる土台作りを行っています。 Laser Digitalは2022年9月に設立された会社であり、デジタル・アセットを活用したトレーディング、ベンチャー・キャピタル、アセット・マネジメントの三つの分野に フォーカスした事業を展開しています。まだ事業は立ち上がったばかりですが、現在はベンチャー・キャピタルを中心に、特にDeFi(分散型金融)、Web3や ブロックチェーン・インフラなどデジタル・エコシステムを提供する企業への投資に注力しています。
「デジタル・アセット」という言葉になじみがない人も多いかもしれません。業界の流れを簡単に説明すると、2017年後半から2018年初頭にかけてビットコインの価格が急騰し、 暗号資産で資金調達をするICOが登場するなど、暗号資産ブームが起きました。詐欺やずさんな分別管理などの事件を経て法整備が進み、IEOやデジタル証券とも呼ばれる セキュリティ・トークンなどの事例が増えました。また、主にイーサリアム上でのスマートコントラクトの実装が進み、中央集権的な管理者を必要としない金融サービスである DeFiが広く知られるようになり、金融に関係した様々なサービスが広がっています。 私自身、デジタル・アセットとの出会いは2017年と暗号資産ブームの少し前でした。金融機関に在籍する人間として“危機感”というよりも、新しいことが起きるという “高揚感”の方が大きかったです。
テクノロジーのかけ合わせで
ビジネスが変わる面白さ
私は会計事務所から野村證券に転職し、ファイナンス部門で長く税務や会計に携わってきました。特にプロジェクトマネージャーとしてIT(国内・インド開発チーム)や 外部ベンダーを率いて、全営業店や本社で利用する会計システムの導入を成功させた経験は、今につながっていると思います。 当時は会計システムに関したビジネス側の要件をまとめ、インドのエンジニアとやり取りをしていたのですが、言語や文化の違いもあり、思うように進まないこともありました。 どう伝えれば彼らに響くのだろうと苦心しながら、ビジネスの背景や目的も丁寧に伝えることで納得してもらい、開発を進めてもらう、というようなやり取りもいい経験になりました。 様々なバックグラウンドを持つメンバーが最後はOne teamになり、会計システムが無事にリリースされ、ITの力でより良いサービスが生まれる現場を体験する中で、私は次第に ファイナンス×ITのフィンテックの面白さにのめり込むようになりました。 もっとフィンテックについて知りたいと考えて自発的に都内のビジネススクールに通い、そこでブロックチェーン技術に初めて触れました。取引そのものを参加者全員が捕捉でき、 仲介者が不要となるこの技術に、証券業のような仲介者としてのビジネスモデルだけでなく、これまで綿々と行われてきた複式簿記での記帳・財務開示の仕組みも根本から変える 可能性があると衝撃を受けました。分散型のデータベースにスマートコントラクトを載せると世界中の人とピア・ツー・ピアでつながり、暗号資産やNFT(非代替性トークン)の ようなデジタル資産をやり取りできるようになるというコンセプトが画期的で、こうしたサービスが未来を作っていくんだろう、そうした技術の発展をずっと見ていきたい、と 思うようになりました。そんな出会いから今も変わらず、デジタル・アセットへの興味を抱き続けています。 また、当時はまだファイナンス部門に在籍していましたが、デジタル・アセット・クラブという野村社内のクラブ活動を通じて、社内のデジタル・アセット事情を知る機会に 恵まれました。メンバーとの会話の中で暗号資産ビジネスを立ち上げるプロジェクトが社内で動いていると知り、その現場に飛び込んでみたいと考え、社内公募で2023年4月に デジタル・カンパニー内のデジタル・アセット推進室に来ました。
発想の自由度が高い部署で
引き出しを増やす
ファイナンス部門から来た身としては、他業種からのキャリア採用の人も多いデジタル・カンパニーに対し、発想の自由度が高まりそうだなという雰囲気を感じました。 例えば、Laser Digitalは野村ホールディングスのデジタル・カンパニーと共同で、2023年10月にThe Sandbox(ザ・サンドボックス)のメタバースに出展し、私はその 広報活動などを担っていますが、当初はメタバースの知見が十分にあるわけではありませんでした。そんな中、前職でメタバースを実際に運営していたデザイナーの社員と 議論ができたことは、自分の引き出しを増やすきっかけになりました。また、伝統的金融サービス、いわゆるCeFi(中央集権型金融)のフロント部署出身の同僚からは、 多角的な面からDeFiなどの金融サービスや技術を学んでいます。 デジタル・カンパニー内にはAI活用に取り組んでいる人たちもおり、情報のキャッチアップの一助になっています。これからは一つのプロジェクトが独立して進んでいくのではなく、 様々なテーマのプロジェクトが有機的に結びついていき、新しいサービスが生まれていくんだろうなと感じています。AI活用はその大きな流れだと思っています。 デジタル・アセットの新しいサービスが生み出す現場にいる人間として、デジタル・アセット×AIのようなサービスも一つ形にしてみたいと考えており、データサイエンス・ Python(パイソン)・AIを学びながら業務に活用しています。デジタル・アセット×AIへの思いはありますが、まずは事業が立ち上がったばかりのLaser Digitalを軌道に 乗せることが直近のミッションです。会社運営の管理業務としてまだ影も形もないところから考察し、調査し、業界の方々や社内の様々な部署と連携しながら作っていく過程は 素直に面白いなと感じています。特にデジタル・アセット領域にはベンチャー企業が多く、業界を変えていこうとする気概を感じ、真剣にビジネスに取り組んでいる姿に私も 刺激を受けています。そんな方々と一緒に、更に色々な人たちを巻き込みながら、新しい暗号資産ビジネスを立ち上げていきたいと考えています。 デジタル・アセット領域のテクノロジーは日進月歩で進化するため、日々のキャッチアップとともに柔軟な発想とひらめきが欠かせません。その意味では個人プレーではなく、 チームプレーが求められるところだと思います。色々な専門分野を持っている人たちが集まり、みんなでかけ算できるようなチームになっていけたらと考えています。
※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです。
My Project
Career
Emi Hidaka
- ~2023年
- 会計事務所から野村證券転職
ファイナンス部門で税務・財務会計・会計システム導入プロジェクト・CFOの株主総会対応などに従事 - 2023年
- デジタル・カンパニー内のデジタル・アセット推進室に参画