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お金の流れは「地理」からわかる―世界を楽しく、深く読み解く方法

お金の流れは「地理」からわかる―世界を楽しく、深く読み解く方法のイメージ

時代とともに変わりゆく各国の産業構造、次々と頭角を現す新興国。世界経済が日々目まぐるしく変化する現代において、ビジネスパーソンはいかにしてミライを読むべきか。

必要なのは政治経済の知識? 統計の知識? 意外な盲点が「地理」だ。なぜ地理なのか、ビジネスパーソンが地理を学ぶことにどのようなメリットがあるのか。『経済は地理から学べ!』(ダイヤモンド社)の著者、代々木ゼミナール地理講師の宮路秀作さんに話をうかがった。

誰もが「地理」を勘違いしている

そもそも「地理」を学ぶとはどういうことなのか。「地理」と聞くと、国内外の河川や山脈の名前を暗記させられた、中高時代の退屈な授業を思い出す人も多いだろう。

しかし本来の「地理」は、地形や気候などを暗記するだけの科目ではない。「地理」には、産業や貿易、交通、人口、民族など、現代世界で目にするありとあらゆるものが含まれていると宮路さんは語る。

それ故に、「地理」を学べば、世界経済がわかる。そのことを説明するにあたり、宮路さんはいつもアイスランドの話をするという。

アイスランドといえば、北欧に位置する島国。では、アイスランドの主要産業を知っているだろうか。

島国で、豊かな自然に囲まれているから、水産業や観光業が盛ん。それくらいはだれにでも推測できる。しかし実際には、それらに加えて「金属」──具体的には「アルミニウム精錬」が主要産業のひとつになっており、輸出品目のトップを占めていることはあまり知られていない。

なぜアイスランドの主要産業がアルミニウム精錬なのか。一見、イメージギャップを感じる両者の関係は、「地理」の知識を用いれば簡単に理解できると宮路さんは言う。ポイントは、アイスランドの地理的特徴と、アルミニウムの性質にある。どういうことか。

「アルミニウムは、中間製品の酸化アルミニウムを電気分解して生産されるので、生産過程において大量の電気を使います。アイスランドは典型的な資源小国で鉱産資源に恵まれないため、1973年の石油危機を機に、火山大国であることを活かして地熱発電の開発をはじめました。その結果、現在では総発電量の26%を地熱発電が占めるまでになっています。

また、アイスランドの国土の北端は北緯66.6度とかなり高緯度に位置して寒冷であるため、氷河の侵食によって形成されたU字谷が多数存在します。その土地の高低差を利用し、水の落下エネルギーを用いた水力発電が盛んで、総発電量における割合は74%。先ほどの地熱発電とあわせて、なんと国の電力を再生可能エネルギーだけでまかなっているのです。

再生可能エネルギーは火力発電や原子力発電より安価にエネルギーを得ることができる。だからこそ、アイスランドはアルミニウム工業を発展させることができたのです」

自然地理を知れば、それを土台にした経済活動の理解につながる。そのようにして、土地に紐づく要素を複合的に眺めることが、本来の「地理」なのだ。

インドネシアが成長する地理的根拠

「地理」の知識は、先に紹介した産業構造の例のみならず、経済発展予想にも役に立つ。

たとえば「中国やインドの次に伸びる国はどこか」といったビジネスパーソンにはおなじみの問い。地理的に考えるとどうなのか宮路さんに質問したところ、個人的に気になるのは「インドネシア」だという。

なぜインドネシアなのか。宮路さんによると、ポイントは「資源が豊富であること、人口が多いこと、賃金水準が低いこと」。かつての中国やインドも備えていたこの3つの地理的条件を、現在のインドネシアも満たしているからというのが宮路さんの見立てだ。

「まず資源を見ると、インドネシアは石油も石炭も天然ガスもとれる資源豊富な国です。一方で金属資源に乏しく、自動車、家電製品、建築物などあらゆる産業の基礎資源といわれる鉄鉱石がとれません。

ただ、世界でも屈指の鉄鉱石埋蔵量を誇るオーストラリアが近くにあるという立地的に有利な条件を備えています。しかも、オーストラリア北西部に位置する国内最大の鉄鉱石生産エリア、ピルバラ地区とインドネシアは目と鼻の先(図)。船を使えばかなり安く運べるはずです。

図:ピルバラ地区とインドネシアの関係

図:ピルバラ地区とインドネシアの関係

人口はどうかというと、2億7000万人と多く、十分な内需が見込める。そして、2億7000万人の8割が、なんとジャワ島に集中しているんですよ。インドネシアは世界最多の島嶼(とうしょ)を抱える島国ですが、じつはジャワ島以外の島々にはそれほど人が住んでおらず、土地が余っている。ならば、その土地を安く買い、工場を建てることができる。これは海外企業にとって魅力的な話だと思います。いまはまだ人件費も高くないですしね。

また2024年から首都移転が始まると聞いていますが、これは現在のインドネシアにおける経済の地域格差を埋めていくためにも、地理的中心となるカリマンタン島が選ばれました。ジャワ島への一極集中の是正は、他地域の経済成長を後押しするかもしれません」

地理を学ぶことは、現代世界で目にするありとあらゆる分野を学ぶこと

ただし、この経済発展予想は、ほかの要因にも左右される。たとえば、仮にインドネシアとオーストラリアが犬猿の仲だった場合、鉄鉱石を安価に輸入できなくなり、宮路さんの仮説は成り立たなくなる。

本当にインドネシアは成長することができるのか──それをより正確に見極めるには、ある程度の歴史知識や、インドネシアが外国資本に寛容な国柄なのかといったような文化的知識も必要になる。

地理的特徴をベースに、それに付随して必要となるさまざまな分野の知識を身につけていく。それこそが「地理を学ぶことは、現代世界で目にするありとあらゆる分野を学ぶこと」と言われるゆえんだ。

続く後編では、「地理」の視点を用いた時事ニュースの読み解き方を紹介する。

【お話をお伺いした方】
宮路 秀作(みやじ しゅうさく)
代々木ゼミナール講師。「東大地理」「センター地理」などの講座を担当する。「地理」を通して、現代世界の「なぜ?」「どうして?」を解き明かす講義が人気を博し、「代ゼミの地理の顔」に。2017年に刊行した書籍『経済は地理から学べ!』(ダイヤモンド社)が10万部に迫るヒットを記録したほか、地理学の普及・啓発に貢献したと認められ、2017年度日本地理学会賞(社会貢献部門)を受賞。その他の著作に『中学校の地理が1冊でしっかりわかる本』(かんき出版)、『目からウロコの なるほど地理講義 系統地理編』(学研プラス)などがある。

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