良い借金は人生を豊かにする?ローンの上手な使い方—親子で学ぶお金の話(5)
ローンや借金と聞くとネガティブなイメージを持つかもしれません。
しかし賢く活用することで人生をより豊かにしてくれます。すべての借金が、悪い借金というわけではありません。
ローンって何?
ローンとは銀行などの金融機関からお金を借りる金融商品のことを言います。代表例が住宅ローンです。高額なマイホームを一括で購入できる人はそう多くありません。住宅ローンを利用することで、比較的若い年齢からマイホームを所有することができます。
その他にも教育費のための教育ローン、車を購入するためのカーローン、用途自由のカードローンなど様々なローンが存在します。
さらに、将来起業したい、お店を開きたい、などの夢がある人は、銀行の融資などのビジネスローンを利用することができます。
ローン金利について知ろう
ローンにおいて必ず忘れてはいけないのが金利です。ローン金利とは、借りたお金に対して支払う利息のことを言います。ローンは借りた分をそのまま返せばいいわけではなく、元本に加えて金利を支払って返済していく必要があります。
ローン金利はローンの種類や金融機関、返済期間、借りる人の信用度合いによって異なります。少しの金利の差が総返済額に大きく影響してきますので、良い条件の金利で借りることが非常に重要です。例えば車を購入する際に利用できるマイカーローンの場合、銀行から借りれば1~5%ほどですが、カードローンなど銀行以外の金融機関で借りると4.5~18%ほどになるなど、金融機関によって大きく変わってきます。
以下は3万円借りた場合、金利によって返済額が大きく変わることを示しています。
返済額の比較(金利1%、8%の場合)
項目 | 金利1%の場合 | 金利8%の場合 |
---|---|---|
借入額 | 30,000円 | 30,000円 |
返済期間 | 2年(24か月) | 2年(24か月) |
月々の返済額 | 1,263円 | 1,356円 |
総返済額 | 30,301円 | 32,551円 |
利息の総額 | 301円 | 2,551円 |
借入額を30,000円、返済期間2年間で金利1%と8%を比較した場合、総返済額に約2,000円の差が出ています。このように、身近な例で伝えていただくとイメージがしやすいのではないでしょうか。ローンを組む前には、ローン金利などの条件をしっかりと比較することが大切であることを伝えましょう。
良い借金の代表例
良い借金と言えるいくつかのローンを見ていきましょう。
1.資産・収入に応じた住宅ローン
良い借金の代表例の1つが住宅ローンです。住宅ローンは様々な金融機関の中から選ぶことができます。また、すでに借りている場合でも借り換えをすることで月々の返済額を減らすことも考えられます。住宅は資産として価値が増える可能性もあり、その場合ローンを活用してマイホームを購入することで、資産形成にも役立ちます。単なる「消費」や「浪費」で終わらせるのではなく、資産として残っていくのが良い借金の特徴になります。
2.奨学金、教育ローン
奨学金や教育ローンも無理のない範囲で借りることで、より良い教育を受けることができ、キャリアの選択肢が広がることや、長期的には収入を上げることにも繋がります。
生涯賃金比較(2022年)
項目 | 中学卒 | 高校卒 | 高専・短大卒 | 大学・大学院卒 |
---|---|---|---|---|
男性 | 1億9,000万円 | 2億1,000万円 | 2億1,000万円 | 2億6,000万円 |
女性 | 1億5,000万円 | 1億5,000万円 | 1億7,000万円 | 2億1,000万円 |
独立行政法人労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2022」の労働統計加工指標集では、学歴ごとの生涯年収のデータが発表されています。これによると、学校卒業後フルタイムの正社員を続けた場合の60歳までの生涯 賃金は、大学・大学院卒とそうでない場合に比べて生涯年収は4,000万円から7,000万円も差が出ていることがわかります。学費以上に生涯年収が上がるのであれば、ローンを借りて教育資金に充てるのは「投資」と言うこともできるでしょう。
良い借金の例として、将来的に資産価値を生むことや、収入を増やすための借金を紹介しました。借りる目的が「消費」や「浪費」ではなく「投資」に当たるかどうかを親子で話し合ってみましょう。特に教育費の話題はお子さんに直接関係するため、将来の話をする上で良いきっかけになるかもしれません。ただし、大学進学が唯一の選択肢ではなく、就職、起業など様々な道があることは伝えましょう。
ローンは借りる目的と返済計画が重要
ローンを利用するときは、借りる目的と、借りたお金をどのように返していくかという返済計画やライフプランをしっかり立てましょう。
1.借りる目的を明確に
良い借金で大切なのは借りる「価値」があるかどうかです。そのためには借りる目的を明確にしておく必要があります。借りる目的が曖昧だと、消費や浪費の原因にもなってしまいます。
2.返済計画を立てる
ローンを借りるにあたり最も重要と言えるのが返済計画を立てることです。素晴らしい目的のためのローンであっても、きちんと返済できなければそれは悪い借金になってしまいます。自分の収入にあった生活を送りながらで無理のない返済計画を立てましょう。そのためには収支の把握、将来の資産推移などライフプランを作って、人生全体にわたる資産の計画を立てていくことが大切です。
お子さんのお小遣いでシミュレーションをしてみましょう。月々のお小遣いを収入とし、毎月使っている支出を把握、その上で親からお金を借りて欲しいゲーム機を買えるのか?など一緒に考えてみるとお子さんのローンにおける返済計画の大切さへの理解も深まります。
お小遣い 使い道のシミュレーション(例)
毎月のお小遣い 3,000円 |
毎月の支出 2,000円 (お菓子、ゲームの課金など) |
ローン 500円 (ゲーム機のお金を親に返す) | |
貯金 500円 |
まとめ
いかがでしたか?ローンは適切に活用することで人生を豊かにしてくれる可能性があります。同時に、それが本当に必要なものなのか、ローンを借りてまで買うべきなのかを考える必要があります。しっかりと金融機関や金利を比較検討し、返済計画を立てて借りるようにしましょう。
お金を借りることを含め、金融教育に繋がるお金の話題は家族の価値観や目標を共有する良い機会にもなるため、積極的に家族で話していきたいものです。
編集協力:内田優帆 AFP/編集・文責:野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング室