家庭で学ぶ、価値あるお金の使い方—親子で学ぶお金の話(3)


お金の使い方は人生を左右すると言っても過言ではありません。学校の成績が良くても、将来高い給料をもらう仕事に就いたとしても、お金の使い方がわからなければ、お金に振り回される人生になってしまいます。また、保護者のお金の習慣は子どもの習慣にも影響を与えます。本コラムでは家庭で学べるお金の使い方についてお伝えします。
お金を使うことは「悪」ではない
お金を使うこと自体は決して悪いことではありません。むしろ、賢くお金を使うことで、生活を豊かにし、新しい経験や思い出を得ることができます。過度な節約は長続きしません。かえって生活の質を落とし、心身に負担をかける可能性があります。大切なのは、『上手なお金の使い方を学ぶ』ことです。
お金の使い方を幼少期から学ぶメリット
お金の使い方は大人になってからでもいいのでは?と思う方もいるかもしれません。しかし、幼少期からお金の使い方を学ぶことで身につけられる習慣や考え方は、将来大いに役立てることができます。
1.お金の使い方が養われる
お金は無限にはありません。例えば限られたお小遣いをどう使うか考えてもらうことで、物事の優先順位をつけることや、お金を有意義に使う能力が育ちます。
2.欲求をコントロールする力がつく
欲しいと思ったモノに対し、「本当に必要なのか」を考え、資金が貯まるまで我慢する経験は、自身の欲求のコントロールや将来の金銭管理に役立ちます。
3.夢の選択肢が広がる
将来思い描いている夢を叶える方法として、お金があることで実現に近づけることはたくさんあるでしょう。目標を立て、その目標に向かって資産形成をする。その積み重ねが夢の実現につながることは大いに考えられます。
これらは大人になってから学ぶこともできますが、幼少期より日々の会話の中に自然に取り入れることで、「学ぶ」という意識を持つことなく身につけられる、将来のメリットが大きい知識です。ご家庭でもお金の使い方を日々意識していただけたらと思います。
これは消費?浪費?NeedとWantトレーニング
お金の賢い使い方を学ぶ上で、「消費」と「浪費」を見分けることがポイントとなりますが、ここでは、お子さんに説明することを意識して、NeedとWantという風に分類するのがわかりやすいのではないでしょうか。
1.定義
Need:生活に必要不可欠なもの
Want:自分の心が満たされるもの、人生が豊かになるもの(=どうしても必要、というわけではないもの)
2.具体的な例を挙げる
NEED:食べ物、水、服、学校の文房具
WANT:おもちゃ、ジュースやお菓子、ゲーム、
子どもの身近な経験を使って説明しましょう。例えば、「学校に行くために靴は必要(Need)だけど、毎日違う靴を履きたいからたくさん欲しい(Want)のは、違うよね」といった具合です。
可視化について
欲しいものリストを作成、お小遣い帳をつける
欲しいものリストを作り、それぞれの項目をNeedとWantに分類したり、お小遣い帳をつけたりすることもお勧めです。
欲求のコントロールについて
時間をおく
Wantに分類されるものは、時間をおいてみて、それでも欲しいかどうかを考えてみましょう。「今」本当に欲しいと思っているもの、必要なものは「来週」になっても欲しいはずです。時間が経って忘れてしまうようなものは、本当に欲しいものではないかもしれません。
大きな目標の実現に向けて長期的に考える
欲しいものリストのいくつかを我慢することで、将来より大きな目標が実現できるかもしれないことを伝えていきましょう。
以上のように、家庭でNeedとWantを区別するトレーニングを行うことで、浪費を抑えることができます。Wantを全て我慢する必要はありません。時には自分へのご褒美としてWantに分類したものを買うことも、人生を豊かにする上で大切な要素となります。お金の使い道を自分でコントロールできることで、より価値のあるものや経験にお金を使うことが可能になります。
バーゲンセールや広告に潜む危険性
バーゲンセールや広告は、私たち消費者の購買意欲を刺激するように巧妙に設計されています。「安くなっているから買う」や「広告を見て欲しくなった」といった理由で購入すると、必要のないものに無駄にお金を使ってしまう恐れがあります。
「この商品は本当に必要?」
「セールがなくても欲しいと思った?」
「今すぐ必要?それとも待つことができる?」
「この『お得感』は本当に価値がある?」
家庭で考えてみることで、家族全体の金銭感覚を向上させることができます。情報に惑わされず、本当に必要なものかどうかを冷静に判断する力を一緒に養っていきましょう。
人生を豊かにするお金の使い方
では一体何にお金を使えば人生は豊かになるのでしょうか?判断基準は「価格」ではなく「価値」で決めることが大切です。高額だからといって必ずしも価値があるわけではありませんし、安いからといって価値がないわけでもありません。その商品やサービスが自分にとって払う価値があるかを考えることが重要です。
1.モノよりも経験にお金を使う
モノは時間とともに価値が下がることが多いですが、経験は思い出として長く残り、人生を豊かにします。家族旅行や体験などにお金を使うことで、子どもの成長にも良い影響を与えることができます。
2.誰かのためにお金を使う
自分よりも人のためにお金を使うことで、より大きな満足感を得られることがあります。子どもが誰かに渡すプレゼントを自分のお小遣いから出してもらいましょう。相手が喜んでくれた時に、プレゼントの価値をより感じることができるのではないでしょうか。また、寄付やボランティア活動への参加など、社会貢献的な支出も価値ある使い方の一つです。
3.「エシカル消費」を考える
エシカル消費とは「地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動」のことを指します。例えば、子供と一緒に商品が手元に届くまでの過程を考えることで、モノを大切にし、商品を選ぶ際に商品の背景まで深く考えるきっかけになります。
4.自己投資する
将来の価値を高めるための投資も大切です。自己投資、例えば読書や学習、資格取得のための支出は、将来、大きなリターンとして返ってくる可能性があります。
5.時間をお金で買う
時間をお金で買うという考え方も有効です。例えば、家事代行サービスや時短家電を利用することで、その時間を家族との時間や趣味の時間に充てることができます。
自身や家族にとって価値あるお金の使い方を
お金の使い方に正解はありません。それぞれの家庭や個人の状況、価値観に応じて使い方は変わってきます。「見栄」ではなく「自分の価値観」を大切にしましょう。他人と比べても幸せにはなれません。お金はあなた自身の人生を豊かにするための道具です。あなたにとって価値のあるお金の使い方をしましょう。
編集協力:内田優帆 AFP
編集/文責:野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング室