デジタル時代のお金のリスク管理—親子で学ぶお金の話(4)


スマートフォンやタブレットの普及により、私たちの生活は大きく変化しました。その中でも、お金の使い方や管理方法は劇的な変化を遂げています。かつては現金が主流でしたが、今では様々な決済方法が登場し、財布を持ち歩かなくても買い物ができる時代になりました。
この変化は、大人だけでなく子どもたちの生活にも大きな影響を与えています。アプリやゲームの課金、オンラインショッピングなど、子どもたちが直接お金を使う機会が増えています。そのため、デジタル時代におけるお金のリスク管理について、家庭で一緒に考えることが重要になってきています。
色々なデジタル時代の決済方法を知ろう
現代の決済方法は多岐にわたり、私たちの生活を便利にしています。代表的な決済方法をみていきましょう。
1.カード決済
クレジットカードとデビットカードがあります。クレジットカードは、利用後にまとめて支払いを行う「後払い方式」で、ポイントが貯まるなどのメリットがありますが、計画的に使用しないと支払いに困ることもありえます。
デビットカードは「即時払い方式」で、利用と同時に銀行口座から引き落とされるため、使いすぎを防ぐことができますが、残高管理を行っていないと、あるタイミングで口座のお金が空になってしまうということも起こりえます。
2.プリペイドカード
プリペイドカードも広く利用されています。これらの多くは事前にチャージした金額内で利用する「前払い方式」です。Suica、PASMOのような交通系ICカードや、nanaco,WAONのような流通系プリペイドカードは、使いすぎを防ぐ効果がありますが、チャージ残高が不足すると利用できないというデメリットもあります。
3.スマホ決済
電子マネーやQRコード決済などスマートフォンアプリを使って、現金を使わずに決済できる方法です。代表的なものにはモバイルSuica、モバイルNanaco、Paypayなどがあります。現金やカードを持ち運ぶ必要がなく、非常に利便性の高い決済方法です。
この他にも様々な決済方法が日々誕生しています。これらのデジタル決済方法は、現金を持ち歩く必要がなく、スピーディーな決済が可能になるなど、私たちの生活を非常に便利にしています。一方で、使いすぎによる家計への影響や、決済・個人情報が盗まれるといったセキュリティリスクなど、特有の課題も忘れてはいけません。
便利さの裏に潜む危険性
デジタル決済の便利さの裏には、いくつかのリスクが潜んでいます。まずは使いすぎるリスクです。デジタル決済は簡単に決済できるため、お金を使っている感覚が薄く、つい必要以上の買い物をしてしまう可能性があります。
クレジットカードは、その仕組み上支払いが後日になるため実質的に支払日まで借金している状態になります。
さらに、子どもたちの間で人気のオンラインゲームやスマホアプリには、多くの場合課金システムが組み込まれています。ゲームに夢中になり、気軽に課金を繰り返した結果高額請求が来たり、課金をきっかけにゲームへのを引き起こす可能性もあります。例えば、生活が乱れる、食事を十分取っていないということがあったり、使用を制限されると感情的な反応を示すことがあります。
これらのリスクを親子共に認識し、適切な対策を講じることが、デジタル決済を安全に利用する上でポイントになるでしょう。
あなたの身にも起こり得るお金のトラブル
デジタル決済に関わらず、日常生活でのお金のトラブルは誰にでも起こり得ます。悪質な商法や詐欺、クレジットカードの不正利用、架空請求など巧妙な手口で私たちの生活を脅かす存在がいます。最近では誰もが知っている著名人やフォロワーの多いインフルエンサーなどになりすまして、SNSを通して金融商品や投資サービスを勧誘しているケースも見受けられます。
そして第三者だけではなく身近な人とのお金のトラブルも少なくありません。安易に「家族だから」「友達だから」とお金の貸し借りなどをしてしまうと、後々関係が悪化する可能性があります。また、子どもたちの間でもお金のトラブルは発生することがあります。特に奢ったり貸したりする行為は子どもたちの中で上下関係を生み、いじめやその他のトラブルに発展することもあります。お子さんには、友達同士でのお金の貸し借りはしてはいけないと伝えましょう。
トラブル時の対処法と相談窓口
第一にトラブルに巻き込まれないことが重要ですが、万が一巻き込まれてしまった場合は自分だけで解決しようとせず、必ず誰かに相談することが重要です。自分だけで解決しようとすると状況が悪化する恐れがあります。
クレジットカードの不正利用が疑われる場合は、直ちにカード会社に連絡し、カードの利用停止を依頼してください。次に、相談窓口がある場合はそちらに電話をしてください。どこに相談すればよいかわからない場合は、「消費者ホットライン188」に相談をしましょう。このホットラインでは、お住まいの地域の消費生活相談窓口を案内してくれます。なお、消費者は「消費者契約法」をはじめとする様々な法律で保護されていますので、一人で悩まず専門家に相談することが大切です。
親子で取り組む安全なお金の管理
お金のリスク管理を安全に行うためには、具体的にどのような対策を講じていけば良いのでしょうか。以下、まとめてみました。
・世の中で起きている様々なトラブルの事例を知っておく
・スマホやタブレットなどは年齢に応じた利用制限を設定する
・課金には保護者の承認を必要とする設定にする
・ゲームやアプリの利用時間を制限する
・定期的に家計の状況を家族間で共有する
・子どもの年齢、成長に応じてデジタル決済の仕組みを説明する
・子どものうちはできるだけ現金で決済する
他、様々な対策がありますが、家庭で日々コミュニケーションをとることで避けられるお金のリスクはたくさんあります。お子さんが成長するにつれ会話が減ることもあると思います。それでも何かあった時に遠慮なく話すことができるよう、日頃から意識的に話し合いの場を設けるようにしましょう。
デジタル時代を賢く生き抜く力を育てる
お金の管理は年齢に関わらず一生涯に渡って必要になるスキルです。現代のデジタル時代だからこそ、「お金を使っている」という実感を持ち、リスクを回避しながら着実にお金とつきあっていくことが大切です。
適切な金銭感覚は、日々の暮らしの中で一緒に学び、考え、実践することで身につけることができます。技術の進歩とともに、決済方法はこれからも変化していくことが予想されます。新聞やニュースで取り上げられた新しい情報について会話をするなど、日常に金融や経済を学ぶ機会を取り入れることで、賢く生き抜く力を育てていきましょう 。
編集協力:内田優帆 AFP
編集/文責:野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング室