相場操縦取引の類型

見せ玉

「見せ玉」とは自身の売付(買付)注文を約定させようとして、約定の意思がない大量、あるいは頻繁に発注、取消、訂正を行い、他の投資家に取引の状況を誤認させ、取引を誘引しようとする取引のことを指します。相場操縦取引の中でも不公正の度合いが高い取引として厳しく規制を適用します。

【具体例】

  • 寄付(後場寄)前に大量の指値、または成行注文を発注し、寄付(後場寄)直前に取消をする取引。
  • 売り(買い)指値注文を約定させようとして、買い(売り)注文を発注し、もとの指値注文が約定した場合に反対側の指値を取り消すか、劣後する価格に指値訂正を行う取引。など

買い上がり(売り崩し)

買い上がり(売り崩し)とは特定の銘柄等の株価を高く(安く)することを目的として現在値を上回る(下回る)価格で反復継続して発注し、あたかも当該銘柄が上昇している(下落している)と他の投資家に誤認させ、取引を誘引しようとする取引のことを指します。

【具体例】

  • 直近の出来高に比較して、大量の買付(売付)注文を断続的に発注し、株価を上昇させる、または下落させる取引。

株価の固定・釘付け

株価の固定・釘付けとは特定の銘柄等の株価を一定の価格近辺で保つことを目的として、継続して行う取引のことを指します。

【具体例】

  • 下値または上値で大量の指値注文を行い、株価が上昇、または下落しないようにする取引。

終値関与

終値関与とは特定の銘柄等の終値を高く(安く)する、あるいは一定にすることを目的として、立会終了時を含む特定の時間帯に多量もしくは反復継続した注文を発注する取引のことを指します。

【具体例】

  • 終値の形成に連続、あるいは短期間で反復して関与をする取引。

仮装売買

仮装売買とは同一の投資家が同一の銘柄で同時刻に売付・買付注文を対当させるような権利の移転を目的としないで行う取引のことを指します。

【具体例】

  • 制度信用取引の期日更新以外のクロス取引(対当)。
  • 出来高が大量であると誤認させることを目的とした取引。
  • 信用取引買建と現物売付注文、あるいは信用売建と現物買付を同時刻に同一価格で行う取引

馴合い通謀売買

馴合い通謀売買とはあらかじめ連絡を取り合った者同士が行う、仮装売買と同様の取引のことを指します。

【具体例】

  • 外形的には仮装売買と同じであるが、同一ではなく、予め連絡しあった別の投資家と行う取引。

高(安)値形成売買

高(安)値形成売買とは特定の銘柄等の株価を高く(安く)するのを目的に、当日の高(安)値を付ける取引を反復継続して行なったり、複数日にわたって高(安)値を付ける行為を繰り返すような取引を指します。

【具体例】

  • 高値なら高値、安値なら安値をつける取引を連日連続して行う取引。

空売り規制

  • 2013年11月5日より、空売り規制の内容が改正となり、従前は常時適用されていた価格規制が、一定の要件に該当した場合にのみ適用されることになりました。
    なお、改正の変更内容にかかわらず、取引所規則により、規制対象の取引(51単元以上の信用取引新規売注文、等)を分割して発注することはできませんのでご注意ください。

空売り価格規制の内容

法令により、一定の要件に該当した場合に価格規制が発動されます。価格規制が発動された場合、一定期間、51単元以上の信用新規建て等の空売り注文に、一定の規制がかかります。

価格規制が発動する要件および適用期間

株価が基準値(通常は前営業日終値)と比較して10%以上値下がりした場合に価格規制が発動されます(トリガー方式)。価格規制の発動の有無は取引所のホームページ(注1)で確認できます。

  1. 主たる市場(注2)が基準値と比較して10%以上値下がりした場合
    • その日の残りの取引時間は、当該市場で価格規制が適用されます。(他市場では適用なし)
    • 翌営業日は、終日、全ての市場において価格規制が適用されます。
    • 翌々営業日以降は価格規制はありません。
  2. 主たる市場以外の株価が基準値と比較して10%以上値下がりした場合
    • その日の残りの取引時間は、当該市場で価格規制が適用されます。(他市場では適用なし)
    • 翌営業日以降は価格規制はありません。
  1. 価格規制の発動の有無は、取引所ホームページでご確認ください。
  1. 主たる市場とは、毎月末日から起算して過去6ヶ月の売買高がもっとも多い市場をいいます。

各銘柄の主たる市場は、取引所のホームページで確認できます。

取引所のホームページ

価格規制の内容

価格規制が発動された場合、51単元以上の信用取引新規売注文等の空売り注文に一定の規制がかかります。

当日始値決定前
当日基準値段以下(注)での空売りは禁止
当日始値決定後
  1. 直近公表価格よりその一時点前の異なる公表価格の方が低い場合(上昇局面)
    直近公表価格未満(注)での空売りは禁止
  2. 直近公表価格よりその一時点前の異なる公表価格の方が高い場合(下降局面)
    直近公表価格以下(注)での空売りは禁止
  • 成行注文を含みます。

空売り価格規制にかかるご注意事項

個人投資家等による信用取引のうち、1回あたり50単元以下の信用取引については、規制の対象から除外されています。ただし、次のような注文については、発注状況や銘柄の相場状況等を勘案のうえ、適用除外とはならず、空売り価格規制の適用を受ける場合がありますのでご注意ください。

信用取引新規売注文の分割発注

1回の発注数量が50単元以内であっても、空売り規制を潜脱する目的で、合計51単元以上の注文を短時間(注)に連続して発注する場合等は、空売り規制に抵触するお取引として、適用除外の対象とはならない場合があります。
51単元以上の信用取引新規売注文を発注する場合はできるだけ一度に発注するようにしてください。もし、その注文が受け付けられたのであれば、価格規制に該当しなかったのであり、エラーになれば注文が価格規制に該当したことになり、判定が極めて容易につきます。

  • 「短時間」とは、「○分以内」というような具体的な基準があるわけではなく、銘柄の値付状況等を勘案のうえ、判断されます。

「同時呼値」の約定となる信用取引新規売注文

寄付や引けで約定される発注形態(寄成注文、引成注文、ザラ場中に約定しなかった不成注文、等)は、それぞれ「寄付」・「引け」において「同時指値」として発注されます。そのため、複数の注文で合計して51単元以上の注文となる場合には、空売りの価格規制に抵触するお取引として、適用除外の対象とはならない場合があります。

つなぎ売りにかかる信用取引新規売注文

公募増資等にかかる「つなぎ売り」は規制の適用除外となっていますが、適用除外となるのは当該公募増資等にかかる株式の取得が確定している場合に限ります。
したがって、割当株数に確定前に「つなぎ売り」目的で行う信用取引新規売注文は、空売りの価格規制の適用除外とはなりません。

複数口座を利用した信用取引新規売注文

次のような発注に該当する場合、1口座からの発注は50単元以内であっても、合計数量が51単元以上であれば、空売りの価格規制を潜脱するための分割発注であるとして、空売りの価格規制違反となる可能性があります。

  • 複数の証券口座にまたがって分割発注されているような場合
  • 同一のお客様が異名義の口座を利用して分割発注されているような場合 等

取引所ルールについて(成行注文の取扱い、分割発注の禁止)

取引所ルールにより、価格規制の発動有無に関わらず、51単元以上の空売りは成行では受注できません。また、51単元以上の注文を50単元以下に分割してもいけません。価格規制が発動されていなければ、51単元以上の空売りは、指値(注)では注文可能ですので、ご希望の株数を一括で指値でご注文ください。

  • トリガー価格より高い指値に限ります。トリガー価格の計算方法は、「当日基準値段(前日終値又は最終特別気配)×0.9」を呼び値の単位に切り下げた価格です。

募集/売出し公表翌日~発行/売出し価格決定までの間に行った信用新規売りについて

法令により、募集/売出しの公表から発行/売出し価格が決定されるまでの間に、その銘柄の有価証券を空売りした場合、その募集/売出しに応じて取得した有価証券により、当該空売りの際の有価証券の借入れの決済を行うことは禁止されています。以下のような取引は違反となります。

  • 当社に申し込んで得た募集/売出し玉を、当社以外で行った信用新規売り(募集/売出しの公表から発行価格/売出し価格が決定されるまでの間に行ったもの)の決済に充てること
  • 当社で行った信用新規売り(募集/売出しの公表から発行価格/売出し価格が決定されるまでの間に行ったもの)を、当社以外に申し込んで得た募集/売出し玉で決済すること