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野村ウェルス・マネジメントのチーム

脇 康二 プライベート・ウェルス・マネジメント部

己を捨てて
世のため人のために

長い時間軸でお客様ファミリーを支える

脇 康二 プライベート・ウェルス・マネジメント部

  • 2005年、新卒で野村證券に入社。浜松支店、池袋支店、トレーニーとしてオランダ駐在と投資情報部勤務を経て、神戸支店で課長に昇格。2017年に、ウェルス・マネジメント部(現プライベート・ウェルス・マネジメント部)配属

プライベート・ウェルス・マネジメント部は、上場企業、大手の未上場企業のオーナーや経営者などに特化したチームだ。お客様の資産規模が大きいというだけでなく、事業の発展を目指して長い時間軸でお客様ファミリーをサポートする目線を持っている。富裕層向けに本業支援を含め様々なサービスを提供するプライベート・バンキング部、M&Aや資金調達、IPO等のソリューションを提供するコーポレート・ファイナンス部、他の法人オーナーを担当する課員と密接に連携し、お客様の様々なビジネスフェーズの課題に向き合う。世界規模での事業を手掛ける経営者の信頼を得る道のりについて、この仕事を8年間経験した脇康二は、「黒子に徹してきた」と言う。その詳細を3つのエピソードを通して語る。

「用はない」とおっしゃったお客様の初のご注文

どんなに気難しいお客様でも、まっすぐに目を見つめ、何度もお会いします。そういう方ほど、仕事熱心で従業員を思いやり、私たちの努力にも応えてくれる情の深さがあると経験的に知っているからかもしれません。

プライベート・ウェルス・マネジメント部(当時はウェルス・マネジメント部)に着任した当初、あるお客様を前任者から引き継ぎお電話でご挨拶をしたところ、「野村に頼みたいことは何もない。過去に野村の提案に従ったことを後悔している」と、いきなり苦言を呈されたことがありました。100億円規模の資産を持つ大手企業の社長ですが、損をした経験があり、もう資産運用はこりごりだと思っていらっしゃるご様子でした。

それでも私は、新幹線で片道2時間かけてお客様のもとに毎週通いつめました。5分、10分で面談が終了することもありましたが、その間も資産運用の提案は一切せず、お客様のビジネスの話を聞き続けました。事業の役に立つ情報をお持ちできるという姿勢を示していれば、何かお手伝いさせていただけるきっかけが訪れるかもしれないと思ったからです。

そのなかでお客様がご自身の事業で「新機軸のプロモーションを考えている」と、お話されたことがありました。社内で何かお役に立てる情報はないかを探したところ、別の同僚が担当していた企業がその戦略に合うんじゃないかと思い付き、お引き合わせしたこともありました。だんだんとお客様とのビジネスのつながりを作れていましたが、まだ野村としてのお取引は一切ない状況でした。

半年たったある日、勇気を出して初めて資産運用の提案を持って行きました。そのときにしかご提案ができないタイミングが限られた商品の話があり、お客様の考え方を想像すると、きっと興味を持っていただけると思ったからです。

「考えておくよ」とおっしゃっていただき、会社を後にしました。駅から距離のある会社でしたので、タクシーを待っていたのですがなかなか来ません。そのとき、私のなかである決意がわいてきました。会社の前から社長に電話し、「もう一度、話を聞いていただけませんか」と、初めてお願いごとをしたのです。社長は「わかった」とおっしゃって、提案した金額をはるかに上回る金額での資産運用を開始してくださいました。

今では社長個人のみならず、奥様の資産運用、法人の口座開設など、なんでもご相談いただけるようになりました。

ときには、お客様のビジネスにとって大切な節目に呼んでいただけたこともありました。お客様が投資した会社が上場することが発表された際、その会社の社長が出資の御礼とともに「ロックアップ」(大株主などの公開前の株主が、株式が公開された後に一定期間、市場で持株を売却することができないよう公開前に契約を交わす制度のこと)について説明するという機会があり、私もご一緒したのです。別の証券会社が主幹事会社だったにもかかわらず、お客様は「いつも相談している野村のパートナーにも聞いてもらいたい」との意向で、私にも声をかけていただいたようでした。

何がきっかけで信頼を得たのか自分ではわかりませんが、お客様が納得いただけるときまで具体的な提案はせず、お客様の事業の役に立てる情報はないかと社内を駆けずり回って探したことがよかったのかもしれません。

兄とラグビーとお客様の夢がつながった

このように、「一見遠回りに思えることが、実は近道である」ということはよく経験しています。大手法人オーナーのお客様は、大きな資産を持ち仕事で成功を収めている方ばかりで、求めているのは物質的な価値ではないことが多いのです。そのため、王道といえるソリューションとは全く違うご提案が刺さることもあります。

ある上場企業の会長の話です。転職してきたばかりの部下のサポートとしてお会いしたのですが、開口一番、「上司を連れてくるなと言っただろう」と険悪な雰囲気です。しかし、超富裕層の様々なネットワークや、希少価値のある不動産のご案内など、会長の関心に合いそうなことを調べ上げて案件をお持ちするうちに、だんだんとご自身の本当の望みを語ってくださるようになりました。

仕事の成功や物質的幸せはもう十分手にした。本当は仕事の第一線から退き、家族と一緒に特別な体験をしたい。そういう想いをお持ちだったのです。

ある面談の前日、企業のラグビーチームに所属している私の兄が、「チームのスポンサーを探しているが苦戦している」という話をしていました。私自身も高校から大学までラグビーに打ち込んでいたこともあり、自分のチームを応援する興奮は格別だろうと想像して、これをお客様に提案してみようと思い立ちました。

翌日、会長に「まったくビジネスと関係のない話なのですが」と切り出し、「ある企業のラグビーチームがスポンサーを探している」という話をしました。すると会長が、「こういう面白い話を待っていたんだ」と目を輝かせたのです。

早速お引き合わせしたところ、日本代表でもある選手たちと話した会長は、スポンサー契約を即断してくださいました。会長の家族や従業員の方は、定期的に試合を応援に行くようになり、私もたびたびご一緒させていただきました。従業員から「会長ファミリーとラグビー観戦で盛り上がれるのが楽しい」という声が聞かれるようになり、会長から「従業員達が会社に誇りを持つようになってきたことが一番うれしい、ありがとう」と御礼の言葉をいただけたとき、自分のアイデアがこのような形で生きるとは、と胸がいっぱいになりました。

この件をきっかけに、兄のラグビーチームが所属する企業と野村證券は、顧客紹介業務提携を契約することになり、他のスポーツチームにも取り組みが広がっています。お客様の夢をかなえるところから始まり、Win-Win-Winの新しいビジネスを構築できるまでに至ったのは、まさに野村の柔軟性の高さを表していると思います。

秘密を守る“相棒”になる

大企業のオーナーにとって、創業家ファミリーに分散した自社株の存在が大きな課題に発展することがあります。ある会社では会長がかなりの割合の株式を保有していたのですが、頻繁に連絡をとっている他の株主はおらず、株式保有についての話し合いができる状況ではありませんでした。しかし、そのままにしていると相続が発生したときに株式が分散してしまい、経営のかじ取りが難しくなることが予想できました。

そこで私は、会長との関係構築に集中することにしました。7年間、食事やゴルフをたびたびご一緒し、よい話し相手に徹しました。1年に1度は、家族ぐるみのご旅行もご一緒するようになったほどです。

そしてついに、創業メンバーであった社長が次の世代への経営体制と資本政策を検討する節目がやってきたのです。会長のもとに、社長から株式売却についてご相談するお手紙が届きました。会長がお手紙を開けるときにも私はたまたまご一緒しており、「話をしてみようか」という会長の想いの聞き役となっていました。

久しぶりに社長と会長とご家族の食事会が開かれ、外部の人間として唯一同席させていただきました。食事の途中で、会長が社長に「たばこ吸いにいこうや」と声をかけたのです。20分か30分か席を外された間に、株式売却についての話がまとまったようです。企業にとっての将来を決定づける、歴史的な瞬間に立ち会うことができました。

その後、社長からは具体的な資産承継手続きについて野村を指名いただき、プライベート・バンキング部、コーポレート・ファイナンス部など各部署のプロフェッショナルを紹介しました。社内で万全のチーム体制をつくり、その企業の繁栄へ尽力することができたのです。

今回の件では、私は会長に比較的近い立場にいましたが、会長が決心するまでは、会長のお言葉を社長にも野村の人間にも一切漏らすことはありませんでした。ときには、ある人の秘密を守る“相棒”になることがビジネスには欠かせないことを、身をもって実感しました。

自分や特定の人の「利」を重視しない

私の仕事を支えているのは、学生時代のラグビーを通して培った「己を捨てて世のため人のために」という考え方です。ラグビーは、一人ひとりにどんなに能力があっても、自分のプレースタイルを押し通すだけは決して勝利することはできないスポーツです。

野村の利益、特定のお客様の利益だけではなく、かかわるすべての人にとって最良の結果になるにはどうしたらいいか。そのために自分が目立たなくてもかまいません。すぐに自分の成績につながらなくてもいい。お客様の望みをかなえるための黒子であり、社内のプロフェッショナルたちがお客様をサポートするモチベーションを上げる、コンダクターでありたいのです。プライベート・ウェルス・マネジメント部のパートナーは、経験を積めば積むほど広い世界が拓ける、刺激的な仕事だと思っています。