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#書評

『伝説の7大投資家』から学ぶ投資哲学――彼らは何を重要視して投資をしているのか?

2022年02月09日

「伝説の投資家」と聞くと、どんな人を思い浮かべるだろうか。「偉業を成し遂げた人」と遠い存在に感じたり、「少ない努力で一攫千金した人」と思ったりするかもしれない。しかし、『伝説の7大投資家』(KADOKAWA/角川新書)で取り上げられている投資家たちの人生を俯瞰してみると、皆驚くほどに泥臭い努力をして、自らの投資・人生哲学を築き上げている。

伝説の投資家たちが重要視している点には役立つノウハウや哲学があり、プロの投資家でなくとも示唆に富む情報にあふれている。

ここでは、本書で紹介されている7名の投資家のうち、世界的にも著名な投資家ウォーレン・バフェット、投資によってバイクで世界旅行という夢を叶えたジム・ロジャーズ、アマチュアに投資を指南するピーター・リンチ、反面教師的存在のジェシー・リバモアの4名を取り上げいく。

世界一の投資家、ウォーレン・バフェット(1930年~)

「天才」と呼ばれ、世界3大投資家の1人であるウォーレン・バフェットがビジネスを始めたのは6歳の時。ビジネスで「稼ぎ」、節約で資金を「貯め」、11歳で人生初の株式投資を経験している。

そんなバフェットの投資哲学は下記のようなものだ。

買った時の株価に拘泥してはいけない(p.180)

人生初の株式投資では、購入時の株価より一時下落したため、株価が戻った際薄利で売却したが、その後株価は購入時の約5倍に上昇。より多くの利益を得るチャンスを逃した経験から、バフェットはこの教訓を得た。

まずまずの企業を素晴らしい価格で買うよりも素晴らしい企業をまずまずの価格で(p.191)

自身が経営する会社バークシャー・ハサウェイは、以前は繊維会社だった。手頃な価格で経営権を取得したが、衰退産業でビジネスを立て直す難しさを実感し、この教訓を得た。

投資の世界には見送りの三振はない。絶好球だけを打てばいい(p.198)

バフェットは、「よく分かる」分野への投資を重視している。よく知らない分野で、投資すべきチャンスかどうか判断がつかない場合は見送っても構わない。

バフェットは、資産が増えても贅沢に溺れず、ウォール街から離れたオマハに住み続けることから、「オマハの賢人」と呼ばれる。

そして、偉大であり続ける「優れた企業」の株式を長期間持つことを勧めている。人々の暮らしにとってなくてはならないものをつくっている企業は成長し続けるからだ。「優れた企業」の株式の長期保有。これぞ「賢人」らしい投資哲学ではないだろうか。

世界を飛び回る投資家、ジム・ロジャーズ(1942年~)

世界3大投資家のひとり、ジム・ロジャーズは、バフェット同様5歳という早い時期からビジネスを始めた。大学卒業後、ジョージ・ソロスと出会い、共同ファンドを設立。1980年までに「伝説のチーム」として驚異的な成功を収めた。

その後ロジャーズは、ファンドを退職し、バイクで地球中を走り回る夢を叶えた。旅の途中、オーストリアやボツワナ、ペルーといった国に目をつけ、投資で大金を手にしている。大きな変化をとらえ、影響を推論することで投資チャンスを掴んだ。

そんなロジャーズの投資手法は下記のようなものだ。

確信のある「バカな」行動こそが勝利を手繰り寄せる(p.94)

1990年代、ロジャーズは当時の世間の常識に反し、いち早く中国への投資を開始した。投資では、大衆に追従しないからこそ成功できることもある。

ビッグチェンジがあるところにビッグチャンスがある(p.104)

その変化は世界規模、国家規模である必要はなく、それぞれの業界にとっての数十年に一度の変化にチャンスがあるという。

本書におけるロジャーズの記載はこのように締めくくられている。

ロジャーズの投資は歴史に学び、自分の目で見て、そして考えることで成り立っている。世界に優れた投資家はたくさんいるが、ロジャーズほど「自分で見る」ことにこだわった投資家はいない。ロジャーズはまさに「百聞は一見に如かず、一見は一行(行動)に如かず」によって伝説の投資家となった。(p.110)

アマチュアにアドバイスするプロ中のプロ、ピーター・リンチ(1944年~)

ピーター・リンチは、1800万ドルの資産を140億ドルに成長させた伝説のファンドマネジャーとして知られる。11歳からゴルフ場でキャディのアルバイトを始め、成功した株式投資の秘訣を耳にし、投資への関心を強くしていった。

大学卒業後アナリスト、ファンドマネジャーとしてのキャリアをスタート。興味のある企業に自ら足を運び、生きた情報で投資先を決定していった。その後、家族との時間を確保するために退社を決意し、以降はアマチュアを対象にアドバイスを行うようになった。

そんなリンチのアドバイスは以下のようなものだ。

身近な情報に目を向けろ(p.158)

成長する株式は、自分が暮らす街、日ごろ利用するお店、日常的に利用しているサービスの中にも存在する。「これはすごいぞ」と思えるものがあったら、目を向けるとよい。

投資の成否を決めるのは知能指数よりも性格、資質(p.168)

株式を持ち続ける大切さを頭では理解しながら、株価が急落すると冷静さを失い、売却してしまう人がいる。信念のなさは大けがの元になる。

「伝説のファンドマネジャー」と聞くと遠い存在のような気がするが、リンチのアドバイスは誰にでもわかりやすく、納得のいくものではないだろうか。

世界恐慌を引き起こした男、ジェシー・リバモア(1877年~1940年)

ジェシー・リバモアは「大恐慌の引き金を引いた男」として知られる。貧しい農家の生まれだったが、ボストンに出て、株式の仲買店で企業名や株価を黒板に書き込むチョークボーイになった。やがて、数字の規則性に気づき、投資に興味を持つようになった。

徹底的に数字を分析した結果、一時は、金融界の大立者であるJ・P・モルガンと変わらないほどの力を持つようになり、確固たる投資哲学を身につけていった。大恐慌の数カ月前から、リバモアは株価の下落を見込んで適時に株式を売り込み、1929年の世界恐慌を尻目に巨万の富を手に入れたが、4度目の破産と共に生涯の幕を閉じた。

リバモアのエピソードからは、投資で失敗する理由を学ぶことができる。

内部情報や極秘情報を信じるな(p.37)

リバモアはコットンキングと呼ばれる人物と組んで、大金を失った。儲け話を教えるという人がいたら要注意だ。もし真に有利な情報なら、秘密にして一人で大金持ちになるはずだ。

損は切れ、利益を確保せよ(p.40)

リバモアは損失を取り返そうと、本来、損切りしなくてはいけない場面で損切りできずにさらなる勝負に出て大けがを負った。あらかじめ損切りの基準を持つとともに、それを守ることが重要だ。

リバモアの投資スタイルは、大きな波に乗って、大きな利益を手にするというものだった。一時の感情でそのルールを破り破産へとつながってしまったリバモアは、反面教師になるのではないだろうか。

7人の投資家に共通する点はあるのか?

ここでは、本書に収められている7名の投資家すべてを紹介することができなかったが、このほかに、ジョージ・ソロス、フィリップ・フィッシャー、ベンジャミン・グレアムが登場する。著者は彼らに共通する点を以下のように述べている。

7人の生き方も、投資に対する考え方もさまざまだが、いずれの投資家にも共通するのは、誰かの真似をするとか、何も考えずに誰かのあとをついていくのではなく、自分の頭で考え、自分の責任で行動するという強さである。それゆえ時に周囲から理解されないこともあれば、「愚か者」と呼ばれることもある。あるいは、リバモアのように手痛い失敗をすることもあるが、それでも自分たちの信じるやり方を貫くことで彼らは驚くほどの成功を収めたり、投資の世界に革命を起こすことになった。(p.5~6)

これは投資哲学であると同時に、人生哲学ともいえるのではないだろうか。ぜひ本書を手に取って、自らの投資スタイルや人生哲学を深めていってほしい。この書籍を知識の習得で終わらせるのではなく、実際に投資に活かしてみてはいかがだろうか。

野村證券ではマーケット情報など、投資に関する情報を提供しているので、活用してみるのもよいだろう。

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【作品インフォメーション】

『伝説の7大投資家 リバモア・ソロス・ロジャーズ・フィッシャー・リンチ・バフェット・グレアム』桑原 晃弥 KADOKAWA/角川新書

2017年、株式会社KADOKAWAより発行。