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定年後の理想的な働き方は、再就職? それとも…?

2023月10月26日

人生100年時代といわれるようになった今、60歳の定年と同時に仕事をやめ、その後は悠々自適に過ごすという人をあまり見かけなくなった。元気なうちは、積み重ねてきた経験・知識を活かし、会社や社会に貢献したいという人も増えているようだ。ただ、長年勤めてきた会社から提示される再雇用制度にのることが最善の選択肢なのかで迷うこともあるかもしれない。今回は、定年後の仕事や生き方について考えてみよう。

定年後にどんな働き方をしているか

2013年に施行された「高年齢者雇用安定法」により、希望すれば65歳まで雇用を継続できるなど、定年退職後も働き続ける環境が整ってきている。現にこの10年ほどで、60歳を超えても働く人が格段に増えている。総務省統計局の「労働力調査」(図1)によると、60~64歳の男女の就業率は、2012年に57.7%だったものが、2022年には73.0%に増加し、65~69歳の男女においても37.1%から50.8%に増加している。定年と同時に引退する時代ではなくなりつつある現状がうかがえる。

図1:年齢階級別就業率の推移

図1:年齢階級別就業率の推移

出典:総務省統計局「労働力調査(基本集計)」2022年(令和4年)をもとに編集部作成

では、定年後も仕事に就いている人は、どのような理由で仕事をしているのだろうか。シニアに特化した人材サービス会社、マイスター60の調査(図2)によると、「再就職した理由」について、「生活のため」と「やりがい・生きがいを求めて」が同率で一番多かった。必要に迫られて働くという理由だけでなく、「生きがい」という精神的な充足感を求めて再就職を希望している人も多いことが分かる。

図2:再就職した理由(n=150・複数回答)

図2:再就職した理由(n=150・複数回答)

出典:マイスター60「働く再就職シニアの実態調査」をもとに編集部作成

再就職に成功した60歳以上の男女計150名を対象(2018年調査)

では、実際に再就職を果たした人は、新たな仕事にやりがいを感じているのだろうか。同調査によると、現在の業務への満足度は、現役時代のキャリアを活かして働けているかどうかと関係があるようだ(図3)。再就職後も現役時代のキャリアを「活かせている」と回答した人は約7割(回答者150名中107名)で、キャリアを「活かせている」と回答した人ほど、今の業務への満足度が高い傾向にあることが分かる。現役時代の仕事の経験を活かして働くことができれば、再就職後も充実した気持ちで仕事を続けていくことができているようだ。

図3:現在の業務への満足度に関する集計結果

図3:現在の業務への満足度に関する集計結果

出典:マイスター60「働く再就職シニアの実態調査」をもとに編集部作成

再就職に成功した60歳以上の男女計150名を対象(2018年調査)

「自身のこれまでのキャリアが現在の業務で活かせているか」の問いについての「不明・無回答」を除く

定年後の仕事の見つけ方

とはいえ、必ずしも現役時代のキャリアを活かせたり、現役時代と同様の収入を期待できるわけではない。働く側としても、現役時代のモチベーションからは大きく変わってくるだろう。厚生労働省の調査(図4)によると、定年後の働き方について、「現役時代と同じ」と考えているのは、わずか5.1%だ。

図4:希望する老後の働き方

図4:希望する老後の働き方

出典:厚生労働省「平成30年 高齢期における社会保障に関する意識調査報告書」をもとに編集部作成

マイスター60の栁川忠興(やながわ ただおき)氏によると、60歳で定年を迎え、再就職した場合、給与が定年前の5~6割程度に減ってしまうケースも少なくないという。会社によっては、再雇用後の給与を下げるがために、あえて現役時代とは違う業務に就かせるケースも見られる。これは、再雇用をめぐる裁判で、[定年を迎えた人を再雇用し、以前と同じ仕事に従事させる場合、定年前と同じ給与を支払う必要がある]という判決が出たこともあり、会社として雇用条件を見直す場合には、現役時代とは異なる業務や働き方での再雇用となるケースもあるという。

では、実際に定年後に仕事を選ぶにはどのような方法があるのだろうか。主な方法としては次の3つが挙げられる。

(1)勤務先企業および関連企業との雇用契約延長や再雇用
定年後の再就職の主流は、それまで勤務していた会社の再雇用だ。同じ企業内での継続雇用や、関連企業への出向、転籍などのパターンがある。全体の8割ほどは、こうした再雇用を選択している印象とのこと。

(2)知り合いからの紹介による再就職
現役時代に培ってきた人脈、ネットワークを活用し、知人や関係者の紹介などによって再就職する方法もある。知り合いからの紹介の場合、条件面をしっかり確認せずに食い違いがあったり、思っていた仕事と違ったが紹介者の手前仕事を断りづらい、退職しにくい、といったトラブルが起こりがちだという。事前の確認が重要になるだろう。

(3)人材紹介会社を通じての再就職
人材紹介会社を利用した再就職も増えている。需要が多いのは、ビルや建設現場のガードマン、ビルの設備管理員、マンション管理人、清掃スタッフや駐車場・駐輪場管理など、比較的体力を要する仕事が多い傾向にある。一流企業で役職に就いていたようなハイクラス人材向けの求人もあるが、そのような募集がたくさんあるわけではない。こうした狭き門であるハイクラス人材の求人で採用に至るのは、自分の市場価値を理解できている人だ。ただし、自身の市場価値を客観的に判断するのは難しい。現役時代の早いうちから人材紹介会社に登録し、自分がどんな業界や企業に期待されているのか、そして、どんなことが自分の市場価値の向上につながるのかを知った上で、再就職に向けて早めに準備しておくことが強みとなる。再就職している先輩に話を聞いて、リアルな現状を知っておくことも重要だ。なお、再就職の面接にあたっては、「健康管理への意識」や「謙虚に話を聞ける」といったことも重視されるそうだ。

会社勤めだけではない、定年後の生き方

ここまで、再雇用や再就職というスタイルを見てきたが、退職後の人生の選択肢はそれだけではない。例えば、現役時代と同じモチベーションで働き続けたいという人には、これまでのキャリアの集大成として「起業」という選択肢もある。日本政策金融公庫の「2022年度新規開業実態調査」(図5)によると、2022年度に新規開業した人の年齢は60歳以上が7.5%。50歳代を含めれば26%以上。起業者の4人に1人は50歳以上なのだ。しかも、60歳以上の比率は年々上がり、1990年代に比べると3倍以上になっている。

図5:開業時の年齢

図5:開業時の年齢

出典:日本政策金融公庫「2022年度新規開業実態調査」をもとに編集部作成

しかし起業となると、会社勤め時代と違っていざというときに頼れる組織はない。自分や家族の健康のことも考えた上で決断すべきだろう。定年退職後の起業について栁川氏は、「60代で起業となると、家族に反対されることがあるかもしれません。しかし、そんな反対を押し切れるだけのバイタリティや、説得できるコミュニケーション能力、企業勤務時代に培ったリーダーシップがある人ならば、起業という選択肢にもチャンスがあると思います」と語る。

また、定年後の生活資金に心配がないのならば、いっそのこと、仕事という枠にとらわれず、趣味や社会貢献活動など、別の面で「やりがい」や「生きがい」を見いだすという道もある。現役時代から資産を運用する能力を養って、退職前にある程度の資産を築き、資産運用を続けながらセカンドライフを自由気ままに送るというスタイルもあるだろう。第二の人生を考える際には、「まわりが再雇用を選択しているから自分も!」というだけではなく、「自分や家族にとって一番幸せな選択肢はなんだろうか?」と考え、その実現のために、現役時代からしっかり準備しておくことが大切だといえそうだ。

(以上、マイスター60への取材に基づく記事です)

セカンドライフを悠々自適に過ごすライフプランを

人生100年時代、「定年後の生活」をどのように充実したものにするかは大きなテーマです。ゆったり過ごすもよし、新たな可能性にチャレンジするもよし。理想の生き方を探しましょう。
セカンドライフの選択肢を増やすには、安心して過ごすための資産の準備も大切です。第二の人生のスタートにあたって、あなた自身はもちろんのこと、共に暮らすご家族が楽しく過ごせる道を探りましょう。
野村證券では、現在の資産状況や生涯にわたっての収支のバランスを確認するために、ライフプラン表を無料で提供させていただいております。退職という大きな節目の前後で、将来のライフプランを明確にしてみてはいかがでしょうか?


取材協力
栁川 忠興(やながわ ただおき)

(株)マイスター60 取締役シニアビジネス事業部長、(公社)全国民営職業紹介事業協会理事
マイスター60は、シニアに特化した人材サービス会社。「年齢は背番号 人生に定年なし®」をテーマとし、1990年から高齢者に特化した人材サービスを展開。