“こだわりのお茶”でおうち時間をもっと豊かに。日本茶のおいしいいれ方&楽しみ方
2020年8月26日
ペットボトルや缶でも手軽に、おいしいお茶が楽しめるようになった現代。しかし、自宅でいれるお茶にはひと味違った“楽しみ”がある。さわやかな茶葉の香りを感じ、柔らかな色合いに癒やされ、独特の渋みやうまみを楽しむ。すると――。自然に心が落ち着き、調(ととの)ってくるから不思議だ。
自宅で過ごす時間が増え、「おうち時間」をいかに充実させるかが多くの人のテーマとなっている昨今、「お茶」はきっと私たちの暮らしを潤す味方になってくれるはず。そこで今回は、株式会社伊藤園の切手紀幸(きって のりゆき)さんに、自宅でできるおいしいお茶のいれ方・楽しみ方を聞いてみた。
おいしいお茶をいれるための“ひと手間”
――おうちで過ごす時間が増えたいま、「おうちでも専門店のようなおいしいお茶が飲みたい」とお考えの方も多いと思います。おいしいお茶をいれるためには、どんなコツがあるのでしょうか?
お茶の好みは人それぞれですが、一般的には苦味、渋み、うまみの3つのバランスがとれたものが“おいしいお茶”とされています。ちなみに、苦味はカフェイン、渋みはカテキン、うまみはアミノ酸(テアニン)によるものです。
カフェインとカテキンは高温でよく抽出され、アミノ酸は比較的低い温度でも抽出される性質があるので、お湯の温度が、お茶をいれる際の大事なポイントになります。伊藤園では、少しぬるめの80度のお湯でいれることをおすすめしているんですよ。
――なるほど。うまみ成分をしっかり出すためには、熱湯よりも少しぬるめがいいのですね。
その通りです。「80度という湯加減がわからない」という方のために、お湯を80度にするのにおすすめの方法をお教えしましょう。ポイントは、ポットで保温されているお湯を、一度湯のみに注いでから茶葉が入った急須に注ぐこと。ポットのお湯が約90度で保温されているとして、こうすることによりお湯の温度は10度ほど下がり、およそ80度になります。
同時に必要なお湯の量もはかれて、湯のみを温めることもできるので一石二鳥。とても合理的な“ひと手間”なので、ぜひ実践してみてください。
――お話を聞いたら、さっそくお茶をいれてみたくなりました(笑)。
いいですね! ぜひやってみましょう。お湯の温度のほかに、茶葉の量、お湯の量、抽出時間にもポイントがあるので、急須で2人分のお茶をいれる場合をイメージしながら、進めていきましょう。
まずは、湯のみにお湯を100mlずつ注いでください。続いて、急須に茶葉を入れます。ティースプーンすりきり1杯=2gが一人分の目安なので、ティースプーン2杯分を入れましょう。
次に、湯のみのお湯をゆっくりと急須に注いで、30秒ほど待ちます。この間に、急須のなかでお湯が対流し、茶葉が開くので、あわてずにじっと待ってくださいね。30秒たったら湯のみに注ぎ分けていきますが、注ぎ始めは薄く、徐々に濃くなるので、お茶の濃さが均等になるよう交互に注ぐのがコツです。
ちなみに、最後の1滴はおいしさが詰まっているといわれていますので、最後までしっかり注ぎ切りましょう。
――覚えておきます! おいしいお茶を楽しむためには、特別な道具をそろえる必要がありますか?
特別な道具をそろえる必要はありませんが、急須に使われている網の目は細かいほうがいいですね。湯のみに茶葉が入ると、どうしても苦味や雑味が出やすくなってしまうからです。
伊藤園も、網が細かく、茶葉が広がりやすい急須を販売しているので、よかったら一度試してみてください。
あとは、普段ご自宅で使っている湯のみや急須の容量、スプーンの大きさを把握しておくといいかもしれません。たとえば、「うちの湯のみは、8分目で100ml」ということがわかっていると、常に適切な湯量、茶葉量でお茶が楽しめますよ。
温度や時間、量を調節して、自分好みの味わいを探してみては?
――基本のいれ方を知っておけば、自分好みにアレンジすることもできそうですね。
「おいしい」と思う味は、人それぞれ。渋めのお茶が好きな方もいれば、うまみたっぷりのお茶が好みの方もいるでしょう。そういう意味では、お湯の温度や量、茶葉の量、抽出時間などを変えて、好みの味わいを探すのもお茶の楽しみのひとつといえます。
また、その日の気分やお茶請けに合わせて、お茶の種類やいれ方を変えてみるのも粋ですね。洋菓子ならさっぱりと香りのよいほうじ茶、和菓子には温かい煎茶、気分を落ち着かせたいときにはやさしいうまみの冷茶、なんていかがでしょうか。
――いろいろな楽しみ方ができるのは、とてもいいですね。お茶をいれる時間、味わう時間が、暮らしに潤いを与えてくれそうです。
丁寧にお茶をいれるひとときは、気分のリフレッシュにもつながります。お茶に含まれるカフェインには覚醒作用があるので、気持ちを切り替えたい時にぴったり。うまみ成分であるアミノ酸(テアニン)にはリラックス効果があるので、食後にゆっくりくつろぎたいときは、ぬるめのお茶や冷茶を飲むのがいいでしょう。
――素敵ですね! お茶のことがわかってくると、茶葉の種類や産地にもこだわりたくなってきます。
お茶の世界は奥深く、産地や生産者、また品種や加工の仕方によっても味わいが異なります。たとえば浅蒸し茶はさっぱり系。深蒸し茶は緑が濃く、うまみが強いのが特長です。お茶屋さんに行くとさまざまな種類、値段の茶葉が並んでいますから、いろいろなお茶を試しながら、自分好みの味わいを探していくのも楽しいですよ。
――お気に入りのお茶をおいしく飲みきるためには、保存の仕方も大事だと思います。保存する際の注意点はありますか?
開封した茶葉は遮光性・密封性のある容器に入れて、冷暗所に保存してください。密閉袋に入れて、冷蔵庫で保存するのもいいですね。ただし、冷蔵庫から出したばかりのお茶は、温度差で発生した水滴を吸収しやすいので、常温に戻してからいれるようにしましょう。
もし、風味が弱くなった場合は、フライパンで炒ってほうじ茶にしてみるのがおすすめです。香ばしい香りがふわっと立ち上って、リラックス効果も抜群! ちなみに、ほうじ茶は熱湯でいれて、香りを楽しむのがポイントです。
一杯のお茶で笑顔が広がる、なごやかなセミナー
――「野村のハッピーライフセミナー」でも、「おいしいお茶のいれ方」というセミナーを開催されていますね。講座ではどのようなことが学べるのでしょう?
講義と実技の2本立てで、おいしいお茶をいれるポイントやその理由、茶葉の保存方法などをお伝えしています。といっても、座学は冒頭のみで、ほとんどの時間は急須と湯のみを使用した実技の時間。2人1組でペアになって、お互いにお茶をいれて飲み比べたりしながら、なごやかに進んでいきます。お一人で参加される方が多いのですが、みなさんすぐに打ち解けて、あちこちで笑い声が広がりますよ。
――おいしいお茶があれば、会話も弾みますよね!
初めてお会いする方同士でも、「私のお茶、どうですか?」といいながらコミュニケーションが広がるのも、お茶の楽しみのひとつかもしれません。そして、「いれ方次第でこんなにおいしくなるんだ!」と驚くみなさんの笑顔をみると、私たち講師もうれしくなります。
――講師を務められるのは、伊藤園のなかでも厳しい試験をクリアした方々だと伺いました。
厚生労働省に認定を受けた社内検定制度「伊藤園ティーテイスター」に合格した者が講師を務めています。筆記、実技、面接の審査があり、最上位の1級となると有資格者数はわずか17名(2020年5月時点)という難易度の高い試験です。私は2級を持っています。
――セミナー参加は、お茶のことをより深く知るための“いい機会”になりそうです。
一人でも多くの方にお茶の楽しさを知っていただきたいので、参加された際はお茶についての疑問をなんでもぶつけてください。
「野村のハッピーライフセミナー」は、「より心豊かに、楽しく、ハッピーなセカンドライフを送る」ための秘訣を、野村證券と各分野の専門家の講師が、シリーズでお話しするセミナーです。現在は新型コロナウイルス感染症の影響で開催を見合わせておりますが、再開した際にはぜひお気軽におこしください。
プロフィール
切手 紀幸(きって のりゆき)
2001年に株式会社伊藤園に入社。法人向け営業を担当し、販路拡大提案などを行う。2014年に伊藤園ティーテイスター2級を取得。お茶についての豊かな知識を生かし、「野村のハッピーライフセミナー」などでお茶の楽しみ方についての講座も受け持つ。