先祖のお墓の管理でお悩みの人へ。みんなが幸せになれる墓じまいの方法とは?

2022年04月27日

「田舎のお墓の管理を放置してしまいがち」「距離は近いがアクセスが悪く、思うようにお墓参りに行けない」「複数のお墓をまとめたい」など、お墓についての悩みを持つ人は少なくないだろう。また最近では、お墓を継ぐ人がいないという問題もある。

そこで、お墓について漠然と悩んだ末に、元々のお墓を「墓じまい」して、その後、遺骨を別の場所へ移動して納める方法を考えている人もいるだろう。しかし、お墓の在り方は、お墓に眠る先祖から親族、自身の親世代や子世代まで、多くの人に影響が及ぶ。それぞれの気持ちに配慮することで家族間でも意見がまとまらなかったり、暗い話題だと考えて、気軽に相談を持ち出せなかったりという人も多いのではないだろうか。

葬送・終活ソーシャルワーカーとして多くの家庭のお墓の在り方に向き合ってきた吉川美津子(きっかわ みつこ)さんは、「お墓について考えることは、先祖を思う気持ちを次世代に受け継ぐために大切なこと。しっかり話し合って、家族の縁をより深めるために行動してほしい」と言う。今回は、お墓について悩んだときのアドバイスや、家族と話し合うポイントについて話を伺った。

お墓の管理で悩み、墓じまいを考えるときに気をつけたいこと

墓じまいを考える家庭が増えていると聞きます。

そうですね。特に目立つのは、お墓のあるふるさとを離れてしまっていて、戻るきっかけがなくなってしまうケースです。たとえば九州にお墓があり、お子さん世代はみな都市部へ居住。さらに両親ともに亡くなったことで、墓じまいを考えるようになったという事例がありました。また、お子さんが女性のみでみな嫁いでいたり、お子さんがいらっしゃらなかったりして、跡継ぎがいないことで墓じまいを考えるケースもあります。

墓じまいを考えるときに、気をつけたい点は何でしょうか。

お墓を継ぐ人(祭祀承継者)は原則1人で、相続のように仲良く分けるという考え方はなく、その1人がすべての権限を持っています。その人の判断だけで墓じまいをすることはできますが、周囲の意見を聞かずに墓じまいを行えばトラブルに発展し、心情的な面でしこりが残ってしまう可能性もあるでしょう。

先ほどの九州の方の事例だと、お墓を継いだ方が「九州のお墓を墓じまいして、東京に遺骨とお墓を移して先祖を守っていこう」と考えました。ところが九州に住んでいた親戚から、「自分たちは定期的にお墓参りをしていたのに、なぜ東京にお墓を持って行くのか」と反対されたそうです。このように、家族だけでなく親戚間でもお墓に対する思いが一様になるとは限りません。故人や先祖に対する思いは、自分よりも親戚のほうが強いかもしれないのです。

あとは、墓じまいはそれなりの費用がかかることも注意点ですが、こちらはお墓を継ぐ人が必要なお金を用意できれば問題ありません。とすると、やはり特に注意していただきたいのは、周囲の故人や先祖への思いの部分で、時間をかけて話し合っていくことが大切です。

家族・親戚間での話し合いが大切

お墓の移動で不満を持つご家族・親族もいるのですね。意見が合わない場合は、どのように解決していけばいいでしょうか。

まず、今のお墓について悩んでいる問題を明確にしましょう。みなさんが墓じまいを考えるようになるのは、お墓を大切にしたい、しっかりと守り続けたいという気持ちからではないでしょうか。遠方だからなのか、次世代がいないからなのか、今のままではお墓を守るのが難しいと思っている問題を明確にして、周囲に伝えてみましょう。

たとえば、先ほどの九州の方の事例のように、親戚がお墓に対する思い入れが強く、お墓を移すことに難色を示している場合であれば、お墓の管理を一部お願いするという選択肢もあるでしょう。お墓の悩みを打ち明けてみると、お墓を移動させずに、みんなで協力して守っていこうという結論に至る可能性もあります。意見は聞いてみなければわからないので、親戚も交えて焦らず時間をかけて話し合っていくことが大切です。

親世代が存命で「自分たちはこの土地のお墓に入りたい」と希望を言われることもあると思います。それがお墓を守っていく自分たちの都合に合わないとき、どうすれば良いでしょうか。

親世代の気持ちを受け止めることはとても大切です。まだまだ元気な方でも80・90代になると「自分はここのお墓に入る」というイメージを持っていらっしゃることが多いので、まずはお墓に対する希望やイメージをしっかりと聞いてみるといいでしょう。

ただ気持ちを受け止めた結果、将来的にそのお墓の管理がおろそかになってしまう事態は避けたいですよね。親世代の気持ちを受け止めつつも、お墓を継ぐ世代が守り続けていけるお墓の在り方も同時に考えなければなりません。

たとえば「お父さんお母さんが馴染みの土地にいたいという気持ちは大切にしたい。でも、私たちはたくさんお墓参りして会いに行きたい気持ちがあるので都心にお墓を移したい」と話してみるのもいいかもしれませんね。お互いに正直な気持ちを話し合って、次世代へ繋ぐお墓の在り方を一緒に考えてみてください。

墓じまいの手順、新しい納骨先を考える4つのポイント

実際に、墓じまいをする場合は、どのような手順で進めていくのでしょうか。一般的な墓じまいの手順を教えてください。

墓じまいの手順は、「1.関係者の理解を得る」「2.新しい納骨先を確保する」「3.行政手続きをする」「4.元のお墓から遺骨を取り出す」「5.新しい納骨先に納骨する」の流れです。

1の“関係者の理解”というのは、家族や親戚など遺骨に対する縁者に「こういう理由で墓じまいを考えている」というのを相談して、了解をもらうことです。また、お寺と代々檀家としての付き合いがある場合は、お寺に「檀家をやめて墓じまいを考えている」という打診をしておく必要もあります。

「新しい納骨先」には、どのような選択肢があるのでしょうか。

今は昔と違って選択肢がものすごく多様化しているため、「墓じまいをした後どうするか」を選ぶことが大変だと悩んでしまう方もいらっしゃると思います。新しい納骨先を考える際は、以下4つのポイントでお墓への考えを棚卸ししてみましょう(図1)。

図1:「新しい納骨先」を考える4つのポイント

図1:「新しい納骨先」を考える4つのポイント

吉川さんへのインタビューをもとに編集部が作成。

まずはポイント1の、次世代に引き継ぐのか、自分の一代限りなのかを考えましょう。次世代に引き継ぐ場合は、お参りしやすく、次世代に引き継ぎやすい形かどうかの配慮も大切です。

引き継がない場合は、永代供養(永代管理)にするか散骨を行うかです。お墓を継ごうと考えている人でも、条件によってお墓に入れる遺骨の上限があるため、以前の先祖は永代供養に移すことを検討する人もいるかもしれません。

永代供養をマイナスなイメージで捉えてしまっている方もいますが、先祖の気持ちを熟慮した結果、永代供養が最適な選択肢になることもあります。特に戦前に亡くなった先祖の場合、土葬が多く、地方に住んでいた方は一度も都心を訪れたことがない人も多いです。そういった先祖のお墓を掘り起こして都心に移動するよりも、先祖が住んでいたゆかりの土地で永代供養するのも有効です。

その他のポイントについても教えてください。

話し合う際にイメージしやすいポイントは、3のお墓の形でしょう。圧倒的に多いのは一般的な墓石ですが、都心部に多い屋内の納骨堂や、木や花などの植物をシンボルにして納骨する樹木葬も増えてきています。それぞれのお墓の形で、自分たちでお墓を継いでいくことも、永代供養という方法をとることもできます。お墓の形をなくすとなると、社会的モラルに配慮したうえで、海などへの散骨も候補になります。

4つのポイントごとにお墓への考えをまとめ、その組み合わせで合った場所を探してみてください。

お墓は先祖との縁を次世代へ繋ぐもの

お墓の話は普段改めて話し合う機会をなかなか持てないと思います。たとえば、お墓は、「お墓に入る側」の気持ちを尊重するものなのか、「お墓へ参る側」の気持ちを優先するべきなのかという問題はどのように考えていらっしゃいますか?

両方だと思います。私は社会福祉士でもあり介護職でもあるので、最期を間近にした人ともお話する機会が多くありますが、みなさん「死は怖い」ということをおっしゃいます。それは、行ったことがない場所だからです。だから自分が入るお墓のイメージが見えると、「自分はここで弔われる、ここに行ける」という気持ちになり、少しでも安心できます。

一方、弔う側にとっては、お墓参りによって大切な人を失った悲しい気持ちを癒やすことができる、心の拠り所になります。実際に都市部の納骨堂へ行くと、心労が重なっていそうなサラリーマンや、受験生のお子さんがお参りしている姿を見かけます。世界最古のお墓は旧人類のネアンデルタール人のお墓だと言われていますが、昔から何か対象物を見ることで心を寄せたり、頼りたいときにぱっと手を合わせたりできる場所がお墓ではないでしょうか。

お墓の在り方について「こうでなければならない」と堅く構えず、「いつでも気軽にご先祖に手を合わせることができる場所」という捉え方で良いと思います。

最後に、墓じまいを考えている読者へのメッセージをお願いします。

墓じまいというと、店じまいのようなイメージで後ろ向きに考える方が多いです。ところが私が出会ってきた方は、ご先祖のことをすごく大切に考えていて、前向きに墓じまいを考えている方ばかりでした。

葬儀のことになると少し現実的になって話しにくくなってくるのですが、お墓は「亡くなった後にみんながどうしたいか」をライトに考えるきっかけになるんです。たとえば樹木葬は、場所によっては本当に明るい雰囲気で、敷地内で緑を眺めながらお茶ができるようなところもあるので、こういう場所で過ごしたいねとフランクに話せると思います。

私は、先祖からの縁を次世代へ繋ぐものが墓じまいだと考えています。今のお墓を閉じてしまうけれども、それで縁が消えるわけではなく、先祖を大切に考えているからこそ、別の場所で未来へどう繋げ、守っていくかを考えるきっかけになります。これを機に今後はどうやってお墓を守っていこうか、どうやって縁を繋いでいこうかと、ぜひご家族で話し合ってみてください。

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プロフィール

吉川 美津子(きっかわ みつこ)

葬儀ビジネス研究所「アルック」代表。社会福祉士。「終活」「葬儀」「お墓」関連の著書多数。監修本は50冊以上。メディア取材や出演は500本以上の実績がある葬送・終活ソーシャルワーカー。