新たな交流やライフワークを生む。「家系図づくり」の醍醐味とは?

2023年01月11日

家系図とは、一族のつながりがわかるように系統を書き表した図のこと。両親へのプレゼントや結婚の記念など、家系図作成の目的は人それぞれだが、家系図を作る過程でどのような事実がわかり、どのような楽しみが生まれるのだろうか。

戸籍の情報をもとに家系図を作成する行政書士フカサワ事務所・代表の深澤真恵さんに、家系図づくりの醍醐味などをうかがった。

家系図を作ると、知らなかった先祖の存在が明らかに!?

家系図を作成すると、どのようなことがわかりますか?

家系図を作ることで、祖父母には戦争で亡くなった兄弟姉妹がいたなど、それまで知らなかったご先祖様の存在が明らかになるケースがあります。戸籍には「いつどこで生まれて、誰と婚姻し、どこに転籍したか」といった事実関係が記載されているため、戸籍を遡ると、親族関係やご先祖様の本籍、生没年月日などがわかります。

また、代々伝わる家系図があるお宅でも、改めて戸籍をたどって家系図を作ってみると新たな事実が判明する場合もあります。戸籍を調べることで、直系の人物以外の存在がわかります。

戸籍は、どの時代まで遡れますか?

現在取得できる一番古い戸籍は、1886(明治19)年に編成された戸籍です。そのため江戸時代の終わり頃に生まれたご先祖様、つまり、現在50 ~ 70代の方であれば4 ~ 6代前のご先祖様まで遡れることになります。

ただ、2010(平成22)年の戸籍法改正前に古い戸籍を廃棄してしまった自治体があるほか、戦災や震災によって戸籍がなくなってしまった場合もあるため、どこまで遡れるかは、戸籍の保存状態や家族構成などによって状況が変わってきます。

「プレゼント」や「先祖供養」と、家系図を作る目的はさまざま

どんな目的で、家系図を作る人が多いですか?

一番多いのは、両親や祖父母の長寿のお祝いとして家系図を作り、プレゼントされるケースです。そのほか、ご結婚された際に自分たちのために作成される方や、終活の一環として作成される方もいらっしゃいます。

また、ご両親が亡くなり、親族や先祖のことを何も聞いていなかったことに気づき、改めて調べてみたいと思った方や、自分に良くしてくれた親族が亡くなったため、その人の周縁について詳しく知りたいと感じた方など、人生の節目で家系図を作ってみようと思われる方が多いようです。

最近増えている家系図づくりの目的はありますか?

コロナ禍以降、「お墓参りに行けないので、ご先祖様を供養するために家系図を作りたい」という声が聞かれるようになりました。家系図を見ながら、ご先祖様一人一人に思いを馳せることは、ご自宅でできる先祖供養になると思います。

そのほか、印象に残るエピソードはありましたか?

ご自身の病気を機に、一人っ子のお子様の将来の親族付き合いのために家系図を作成したいとご依頼いただいたことがあります。当時、大学生だったお子様は歴史が大好きで、家系図を毎日眺めては、その時代にあった出来事などを調べ、想像をめぐらしていらっしゃったとのことで、ご依頼主様にも「家系図を作って本当によかった」と喜んでいただきました。

家系図が、人生の楽しみを広げるきっかけに

完成した家系図は、どのように活用されているのでしょうか?

親族とのコミュニケーションツールに活用
ベーシックなところでは、冠婚葬祭の場などで、話す機会のなかった親族や、遠縁の親族との会話の糸口になることがあるようです。家系図が、世代を超えて交流できる一つのきっかけにもなるのでしょう。

先祖ゆかりの地を旅するなど、自身のライフワークに
また、一歩踏み込んだ活用法として、家系図を手に、先祖の本籍地や本家を訪れる方がいらっしゃいます。家系図のもとになった戸籍から本家の場所を推測して訪問し、先祖にまつわる話をうかがったり、郷土史に関する書籍を所蔵する図書館で先祖が生きた時代の詳しい情報などを調べ新たな発見をしたり…といった楽しみがあるようです。

こうして得られた情報を自分なりにまとめ資料を作ることを、ライフワークにしている方もいらっしゃいます。家系図が新たな人生の楽しみ方を探すきっかけにもなるようです。

そのほか、家系図が実用的に役立つことはありますか?

「相続」に役立つ
相続の範囲には、養子縁組をして他家に入った人なども含まれます。家系図があれば、親族を確定し相続人を明らかにできるので、もしものときに慌てる心配がなくなります。また、子どもに相続の話をするきっかけになったという方もいらっしゃいます。

「墓じまい」に役立つ
親族が入っているお墓に誰だかわからない人物の名前が刻まれている場合、家系図を作ることで、その人物との関係が明らかになることも。実際に、墓じまいをする際に役に立ったという方がいらっしゃいました。

どうやって家系図を作る?

自分で家系図を作ることはできますか?

戸籍さえ取り寄せれば、自分でも家系図を作ることができます。まず、ご自身の戸籍を自治体から取り寄せ、ひとつ前の本籍や筆頭者、転籍していないかなどを確認し、その前の本籍を管轄する自治体に請求するという作業を行います。「一番古いものまで」をまとめて請求することができるので、転籍していない場合には一挙に揃うこともあります。

戸籍を自治体に郵送で請求する際にかかる費用は、戸籍の必要通数分の手数料、定額小為替の手数料、郵送代金です。発行手数料は定額で、ご自身の現在の戸籍が450円、改製原戸籍(戸籍法改正前の戸籍)と除籍謄本(死亡、転籍、結婚、離婚などで抜けてしまって誰もいない状態の戸籍)が1通750円です。転籍などが多い方でも、予算は3万円ほどで収まることが多いと思います。ただし、遡って戸籍を取得できるのは父母・祖父母などの直系尊属だけで、いとこや甥・姪といった傍系親族の戸籍は取り寄せることができません。

古い戸籍は家制度のため戸主を中心に記載されており、つながりを遡っている自分の直系尊属と戸主との関係性を確認しながら読み解かないといけません。さらに、明治・大正時代の戸籍は手書きなので、書いた人ごとに書体などが異なり、くずし字や旧字、旧仮名が多用されていると読み解きが難しくなります。解読が難しい場合には、取り寄せた自治体に問い合わせると親切に教えていただけるケースもあります。

戸籍が揃ったら、記載されている親族を確認し、家系図に記載する順番を決めていきます。家系図の記載方法に決まりはありませんが、ツリー型家系図の場合には上から下、右から左に年長の順にするのが見やすいと思います。

家系図作成を依頼して作成することもできるのですか?

弊所の場合には戸籍をもとに家系図を作成しますが、その他の方法で作成している専門家もいます。戸籍をもとに作成する弊所の場合、転籍の回数などにもよりますが、ご依頼から3 ~ 4カ月程度で作成できます。ただ、現地調査を行う事務所の場合には、さらに時間がかかるようです。専門家に依頼される際は、行政書士などの資格保有者かをご確認の上、ご自身の希望内容と予算に合うところに依頼されるとよいと思います。

出典:深澤さん提供資料

最後に、家系図に興味のある読者へのメッセージをお願いします。

家系図は決まった書式のない自由なものですので、ご自身が後世に伝えたい情報を家系図に盛り込み、作成することができます。古い戸籍は解読が難しい場合もありますが、その難題を読み解いたときの喜びはひとしおです。

家系図を作成すると、ご先祖様の生きた証や、ご自身のルーツを実感できるだけでなく、ご親族やお子さまとの新たなコミュニケーションや、新しいライフワークが見つかるきっかけにもなります。自分にまつわる「過去」を知ることが、より豊かな時間を過ごす「未来」につながる、そんな魅力が家系図にはあると思います。家系図づくりは気軽にスタートできますので、ぜひお試しください。

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プロフィール

深澤 真恵(ふかさわ まさえ)

「行政書士フカサワ事務所」代表。行政書士。都立高校卒業後、大手通信会社・社会保険庁・大手事務機販売会社勤務を経て、家系図作成専門の行政書士として独立開業。