孫や友人と遊びながら脳を活性化 ゲームで認知症対策!?

2023年03月29日

「いい大人がゲームなんて……」。そんな意見もあるかもしれない。だが、いわゆるテレビゲームが認知機能の低下予防・維持向上に役立つということが医学的にも証明されてきている、としたらどうだろう。さらに、ゲームをすることで記憶力の向上や老化予防など、心身の健康増進にも役立つといったメリットが次々と明らかになってきている。

そんなゲームを競技としてスポーツのように楽しむのがeスポーツだ。eスポーツは「エレクトロニック・スポーツ」の略で、PCやテレビゲームで他の人と対戦し、技を競って楽しむもの。普通のスポーツと同じように、自らプレイすることもできれば、他の人のプレイを観戦したり応援したりして楽しむこともできる。楽しい上に健康に役立つとなれば、注目せざるを得ないのでは?

そんなeスポーツの普及・振興に携わっているのが、一般社団法人 日本eスポーツ連合(JeSU)の戸部 浩史(とべ ひろふみ)さんだ。eスポーツの魅力についてうかがった。

eスポーツは誰でも楽しめるエイジレスのレクリエーション

ゲームをなぜeスポーツというのでしょうか?

スポーツという言葉には、もともとはラテン語の「気晴らし」「レクリエーション」といった意味が含まれています。日本ではスポーツというと、体を動かすものというイメージが強いですよね。しかし欧米では、チェスやボードゲームのような頭を使って楽しむものも、ブレインスポーツやマインドスポーツなどといってスポーツの範疇のうちに捉えます。そういう広い意味では、ゲームもスポーツなのです。

なるほど。eスポーツと普通のテレビゲームとはどんな違いがあるのでしょうか?

eスポーツは、通常のゲームを他の人と技を競いながらプレイするのが特徴です。自ら相手と競い合う楽しみ方もあれば、他の人たちが競うのを観戦したり応援したりする楽しみ方もあります。

eスポーツというと普通のテレビゲームより難しいのかな、と感じますが。

そんなことはありません。競うゲームの種目には、ゴルフやカーレース、将棋や囲碁などよく親しまれたゲームもあります。実際にやったことのあるスポーツやゲームならば、ルールもよく知っているのでプレイするにしても観戦するにしても楽しめると思います。
eスポーツの特徴のひとつに世代を選ばず楽しめることがあります。最近はゲームが認知機能の向上に役立つという研究結果もあり、楽しみながら心身の健康増進に役立つというのも嬉しいところだと思います。
若い頃にゲームをされていた方ならば、昔とった杵柄(きねづか)で、あらためてeスポーツとして始めるのもよいと思います。

どうして高齢者の心身の健康増進に役立つのでしょうか?

テレビゲームは指先と目を同時に使うため、脳を活発に動かす作用があります。さらに、eスポーツともなれば、チームメイトや対戦相手、または観客とのあいだにも多くのコミュニケーションが発生します。こうしたことがよい刺激になって、認知機能の低下防止やフレイル(心身の働きが弱まった状態=虚弱)防止につながっているといわれています。

ゲームと健康に関する研究例

■カナダ・モントリオール大学の研究
アクションゲームがアルツハイマー病の予防に役立つことが明らかになっている。

■アメリカ・カリフォルニア大学の研究
老齢になると衰えがちな「マルチタスク能力(複数の作業を同時にこなす能力)」の改善に、カーレースゲームが役立つことが明らかになっている。

ゲームを通じてコミュニケーションができるのもいいですね!

はい。ゲームをすることで、プレイしている人同士や観戦している人との会話も盛り上がります。私たちは、地方自治体などのeスポーツを活用した取り組みに協力していますが、「80代のご夫婦がeスポーツを一緒に始めてからコミュニケーションが増えたと喜んでいる」「参加者が、自分ではプレイできなくても、観戦し、話をするだけでも元気になっている」といった感想を耳にしました。広い世代に普及しているパズルゲームでは、お孫さんなど家族と一緒に遊ぶ機会が増えたという喜びの声も聞きます。

世代を超えた交流ができるのも大きな魅力なんですね。

そうですね。eスポーツは、インターネットでプレイできる環境さえあれば場所を選びません。離れた場所に住んでいる相手と、操作を教え合ったり、一緒に練習したり、試合を応援したり。ゲームをきっかけに、なかなか会う機会のないご家族やご友人とやりとりができるんです。さらにはゲームという共通の趣味を通じて、会ったことのないさまざまな人とコミュニケーションがとれるのも魅力です。

自治体などでは、具体的にどういった取り組みをされているのですか?

たとえば熊本県美里町では、「eスポーツでいい里づくり」という事業を行っています。理学療法士や作業療法士、熊本eスポーツ協会認定指導者の指導に基づいたeスポーツの実施や、パズルゲームを活用した高齢者チームと小学生チームの対抗戦などを行うことで、高齢者の介護予防を軸にした健康対策や認知症予防、高齢者と若年層の世代間交流、他地域間交流、高齢者のICT(情報通信技術)利用のサポートなどを目指しています。健康、教育、コミュニケーションと、さまざまな期待のかけられた取り組みです。

自分に合うゲームを見つけるには?

ゲームの種類はたくさんあるようですが、興味のあるゲームを、どうやって見つけたらいいですか?

まず、実際に購入するよりも前に、インターネットで検索して、ゲームの実況や解説などの動画を覗いてみてはいかがでしょうか。さまざまな種類のゲーム関連動画がアップされていますので、興味のありそうなゲームのジャンル名などで検索し、実際のプレイ内容を見てみたり、自分に合いそうなゲームを探してみるのがおすすめです。中には信じられないようなテクニックを披露した動画もありますので、プレイを始めて以降も、動画を見てスキルアップしていくこともできます。ゲーム関連動画や有名選手が出場する大会を覗いてみることで、お気に入りプレイヤー、いわゆる「推し」を見つけて応援する楽しみ方もあります。話題のプレイヤーを知っていれば、お孫さんとの話が弾む、なんてこともあるかもしれませんね。

初めてでも気軽に楽しめるジャンルは?

どんなゲームがおすすめでしょう?

操作がシンプルでわかりやすいもの、そしてお孫さんやご友人など、気軽に誰とでも一緒に楽しめるものがいいですね。パズルやボードゲーム系のゲーム、車を運転するなどのレースやスポーツ系ゲーム、太鼓を叩くなどのリズムゲーム、の3つがおすすめです。

(1)パズル・ボードゲーム系のゲーム

(1)パズル・ボードゲーム系のゲーム

落下してくる異なる形のブロックを組み合わせたり、同じ色を合わせたり、マークの個数をそろえる、といったゲームです。ルールがシンプルでとっつきやすく、超有名なゲームもあるため、お孫さんなど世代を超えて一緒に楽しみやすいジャンルです。短時間でできるゲームもあるので、ちょっとした空き時間に楽しめる、という点もおすすめです。
オセロや将棋、囲碁、麻雀など、実際の世界でやったことがあり、ルールを知っているゲームも取り組みやすい分野だと思います。こういったゲームだと頭脳戦になり、経験を生かすことができるので、若い世代に引けをとらずに楽しめそうです。同じ趣味を持つ友人を誘って一緒に始めてみるのもよいと思います。

(2)レース・スポーツ系ゲーム

(2)レース・スポーツ系ゲーム

カーレースでゴールまでの速さを競う、といったゲームです。ご自身のかつての愛車やあこがれの一台を、リアルに再現された世界中の景色の中で乗り回すこともできます。リアルの趣味で実現できなかった夢の走行もバーチャルの世界であれば思う存分楽しむことができます。
趣味の世界の延長で楽しむのであればゴルフやテニスなど、かつてプレイした経験のあるスポーツ系もよいと思います。ルールも勘所もわかって、入門にはうってつけです。かつてのチームメイトを誘って一緒に始めてみてはいかがでしょうか?

(3)リズムゲーム

(3)リズムゲーム

曲に合わせ太鼓を叩くようなゲームです。画面を指先でタップするゲームもあれば、両腕で実際に太鼓を叩く動作を行ってリズムに合わせて楽しむ専用のゲーム機もあります。用いられる曲は、流行の歌謡曲から洋楽、演歌などさまざま。世代を超えたコミュニケーションのきっかけにもできるでしょう。大きく体を動かすゲームなら一定の運動にもなります。

専用のゲーム機を購入する必要がありますか?

そうですね。入り口としては、家庭用ゲーム機で始めるのが早道だと思います。ゲーム機本体とゲームソフトを購入するだけで、初心者であってもすぐに始めることができます。eスポーツの定義からすると、誰か他の人とともにプレイするのがおすすめですが、入門として、まず一人でプレイする楽しさを知っていただくのもよいですね。

スマホやパソコンでもプレイはできますか?

もちろん大丈夫です。スマホやタブレットで楽しめる無料ゲームもあります。ただ、スマホだと画面が小さく、細部が見えにくかったり、細かい操作が難しかったり、という場合があります。スマホでできるゲームは多くの場合、タブレットにも対応しているので、大きめな画面のタブレットでプレイするのもおすすめです。
また、プロレベルのeスポーツだと、パソコン専用のゲームが多い印象ですが、初めてやる方には少しハードルが高いかもしれません。マウスとキーボードを素早く操作するのが難しい場合があるためです。

ゲームならじっくり付き合える生涯の趣味になりそうですね?

はい、視野も広げてくれる貴重な趣味になるのではないでしょうか。たとえば現実のサッカーの試合を見ると言葉は通じなくても世界中の人々が感動を分かち合えます。同じように、eスポーツもコミュニケーションを広げるツールのひとつになります。お孫さんやお友達とのコミュニケーションのきっかけにもなり、認知症予防など心身の健康増進への効果も期待できるeスポーツ。セカンドライフの新たな趣味のひとつとして、取り入れてみるのもいいですね。
人生100年時代。無理をせず、長くゆったりと付き合える趣味や娯楽を発見することで人生をより楽しく過ごすことができます。eスポーツをきっかけに、いろいろな人とコミュニケーションを楽しみ、元気に、よりハッピーになるよう応援しています。

株式のネット取引はゲーム機から始まった!?

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プロフィール

戸部 浩史(とべ ひろふみ)

「一般社団法人 日本eスポーツ連合」(JeSU)広報担当。
JeSUはeスポーツの振興を通して日本人の競技力の向上・スポーツ精神の普及を目指し、国民の健康と社会・経済の発展に寄与することを目的に、研究・啓発、競技大会の普及や選手育成、プロライセンス発行と大会認定などを行っている団体です。