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#調査

相続について家族と話し合っている人は少数派? 50代~70代の「相続対策」事情

2021年07月28日

相続税は富裕層に関する税金というイメージがあるかもしれないが、数年前から相続税の課税対象者が約2倍に増えており、より身近な存在になってきた。これは、2015年1月1日以後に発生する相続の「基礎控除額」が大きく引き下げられたためで、令和でも高止まりの状況が続いている(図1)。

図1:課税対象被相続人数と被相続人数全体の推移

図1:課税対象被相続人数と被相続人数全体の推移

出典:国税庁「令和元年分 相続税の申告事績の概要」(発行:2020年12月)
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2020/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf)より編集部作成。

そこで気になるのが相続対策。しかし、相続対策にはたくさんの方法があり、専門的な知識も必要になることから、「何をしたらいいのかわからない」という人も多いはず。

50代~70代は相続をどのように考えて、どういった対策をしているのか、調査データから見ていきたい。

相続対策について「心配ごとがある人」は47%

全国の50代~70代の男女1,030名を対象に実施した調査によると、ここ1年ほどの間に、相続について考えたことがある人は全体で50.2%だった。男女ともに年代が上がるごとに割合が高まり、50代では約4割にとどまっていたが、70代では男性が約7割、女性が約6割の人が「相続について考えたことがある」と回答した(図2)。

図2:あなたは、ここ1年ほどの間に、ご自身の相続についてお考えになったことはありましたか。

図2:あなたは、ここ1年ほどの間に、ご自身の相続についてお考えになったことはありましたか。

全国の50歳~79歳のマクロミルモニタのうち、(1)既婚者、(2)孫がいる者、(3)世帯年収1,000万円以上(退職者は現役時の年収)の条件で抽出した男女1,030名を対象に、2020年10月30日~11月9日に実施した当社インターネット調査。(調査委託先:マクロミル)

また、相続について家族で話し合ったことがあると回答した人は、全体で3割台にとどまった(図3)。

図3:あなたは、ここ1年ほどの間に、ご自身の相続について家族で話し合ったことはありますか。

図3:あなたは、ここ1年ほどの間に、ご自身の相続について家族で話し合ったことはありますか。

全国の50歳~79歳のマクロミルモニタのうち、(1)既婚者、(2)孫がいる者、(3)世帯年収1,000万円以上(退職者は現役時の年収)の条件で抽出した男女1,030名を対象に、2020年10月30日~11月9日に実施した当社インターネット調査。(調査委託先:マクロミル)

家族と相続について話し合ったことがある人は3割台だが、相続について何らかの心配ごとがあると回答した人の割合は約半数の46.8%(100%から「特に心配はない」と回答した53.2%を差し引いた数値)となった。相続について、家族に相談できずに悩んでいる人が一定数いる可能性がある。

全体の心配ごととして多かった回答は、「相続税が多額であること」(19.0%)、「遺産分割で争いが起きるのではないか」(16.9%)、「相続税がかかるかどうかわからないこと」(16.2%)などだった。心配ごとの内容はそれぞれだが、やはり相続税に関する心配が多いようだ(図4)。

図4:ご自身の相続について、あなたがいま心配していることはありますか。(複数回答)

図4:ご自身の相続について、あなたがいま心配していることはありますか。(複数回答)

全国の50歳~79歳のマクロミルモニタのうち、(1)既婚者、(2)孫がいる者、(3)世帯年収1,000万円以上(退職者は現役時の年収)の条件で抽出した男女1,030名を対象に、2020年10月30日~11月9日に実施した当社インターネット調査。(調査委託先:マクロミル)

相続対策をしている人は約4割。きっかけは「相続を受けた経験」など

では、どれくらいの人が相続対策を行っているのだろうか。現在、何らかの相続対策を行っている人は全体で約4割(100%から「取り組んでいない」と回答した59.6%を差し引いた数値)で、具体的な対策では、「保険」(23.8%)、「贈与」(19.7%)、「不動産」(15.0%)などが多かった(図5)。

図5:あなたが現在取り組んでいる相続対策がありましたら、以下からお答えください。(複数回答)

図5:あなたが現在取り組んでいる相続対策がありましたら、以下からお答えください。(複数回答)

全国の50歳~79歳のマクロミルモニタのうち、(1)既婚者、(2)孫がいる者、(3)世帯年収1,000万円以上(退職者は現役時の年収)の条件で抽出した男女1,030名を対象に、2020年10月30日~11月9日に実施した当社インターネット調査。(調査委託先:マクロミル)

上記の設問で相続対策に取り組んでいると回答した人に、相続対策に取り組むきっかけを聞いた自由回答(※)を見ると、自身が相続を受けた経験や日常生活の変化で意識が変わったことが、相続対策に取り組むきっかけになった人が多いようだ。

※相続対策に取り組んでいる方にお聞きします。取り組まれるキッカケになったことを、具体的に記入してください(自由回答からの抜粋)

  • 自分自身の親が亡くなったときに知識として身につけたため(71歳 女性)
  • 過去莫大な相続税を払ったので現在は負債を増やして対策(70歳 男性)
  • 主人の親が亡くなったとき兄弟で裁判になり7年もかかりました。今はお付き合いも致しておりません。2人の子供たちにはこの様なことにはなってほしくないです(73歳 女性)
  • 母も高齢になり、数年前から相続の話もちょくちょく出てくるようになりました。昨年、軽度認知障害の診断が出てからは、対策が加速しました(55歳 女性)
  • セミナーに参加して(75歳 男性)
  • 定年退職を機に相続税がどのくらいかかるか不安になり始めた(66歳 女性)
  • 病気をして自身の寿命を考えたこと(75歳 女性)
  • お金は持って死ねないのと、生存中に喜んでもらえる方が良い(70歳 男性)

回答の中から一部を抜粋した参考例です。回答のすべてを表すものではありません。

相続対策の相談相手が「わからない・いない」人は56%

最後に、相続について相談できる相手がいるか聞くと、全体で56%の人が「誰に相談すべきかわからない・相談相手はいない」と回答。

「相談できる相手がいる」と答えた人に相談可能な相手を聞くと、全体で「弁護士・税理士」(30.2%)、「銀行・信託銀行」(18.2%)、「証券会社」(5.1%)などが多かった(図6)。

図6:あなたには現在、相続について相談できる(と思っている)相手はいますか。(複数回答)

図6:あなたには現在、相続について相談できる(と思っている)相手はいますか。(複数回答)

全国の50歳~79歳のマクロミルモニタのうち、(1)既婚者、(2)孫がいる者、(3)世帯年収1,000万円以上(退職者は現役時の年収)の条件で抽出した男女1,030名を対象に、2020年10月30日~11月9日に実施した当社インターネット調査。(調査委託先:マクロミル)

会社経営者や個人事業主であれば、「弁護士・税理士」や「銀行・信託銀行」などと面識があるかもしれない。一方、会社員や公務員、主婦などの場合、専門家と知り合う機会がないという方も少なくないだろう。もし自力で専門家を探そうとしても、費用の心配や信頼できる事務所がわからないなど、解決すべきハードルは決して低くない。

相続対策には専門的な知識が必要になる。たとえば「保険」を使った相続対策では、保険金の受取人を指定して希望する人に遺産を渡すことや、死亡保険金の非課税枠を活用して相続財産の非課税分を増やすこと、相続税の支払いに必要な現金を確保することなどができる。そのため、数多くの「保険」のなかから、目的に合ったものを正しく選択する必要がある。保有する資産の内容や状況によっても、ふさわしい対策が異なるため、専門家のアドバイスを受けることが大切だ。

相続はいつか必ずやってくる。その時、相続について家族間で準備と話し合いができていないと、予期せぬトラブルに発展してしまうこともある。野村證券では相続や贈与に関する無料相談を受け付けている。相続について考え始めたら、まずは気軽に相談してみてはいかがだろうか。