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不動産相続トラブルで3割以上が「関係修復できない」!? 家族が笑顔になるためには?

2022年03月09日

相続や遺品整理の際には、親族間で話し合いがこじれてしまうケースがある。不動産相続では、相続トラブルの相手が親族であっても、3割以上の人が関係を修復できないという調査結果も出ている。自身の相続で、家族や親族がもめてしまうようなことは避けたいものだ。

自分に万が一のことがあった場合を想定して、今からできることは何か、調査結果をもとに考えてみよう。

相続や遺品整理で、親族と話し合いがまとまらないのはどんなとき?

祖父母や親など、身近な人が亡くなってしまい、相続や遺品整理をするとき、親族間の話し合いがまとまらないことがある。相続などの親族間トラブル経験者を対象にした調査によると、「遺産分割」(35%)、「土地不動産」(25%)、「遺品整理」(18%)でもめた人が多かった(図1)。

図1:具体的にどんなことで揉めましたか?

図1:具体的にどんなことで揉めましたか?

出典:株式会社林商会「【終活/遺品整理経験者101名に聞いた!】揉めた原因No.1は…?本当に困った体験談とは」をもとに編集部作成

終活・相続・遺品整理等の親族間トラブル経験者101名を対象にしたインターネット調査。2021年9月24日~10月10日に実施。

各構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならないことがあります。

回答とともに寄せられた体験談を見ると、遺産分割では「親が遺言を残していなかったため、互いの取り分が分からず兄弟ともめた」など、遺言がなかったためにトラブルになったケースが見られた。

土地不動産に関しては、「祖父の死去にあたって祖父の自宅を母が相続することになったが、祖父と故人である曾祖父の名義のままになっており、母が相続するためには曾祖父の子ども全てに財産の放棄をしてもらわなければならなかった」といったケースがあった。これは、祖父が曾祖父から自宅を相続した際、登記名義人を正しく変更していなかったことがトラブルの原因になっている。

不動産の所有者が亡くなったときに、不動産の名義を相続人に変更する「相続登記」を行わないと、法定相続人の範囲が広くなってしまい、それぞれの合意を得なければならない。そのため、相続人も増え、多くの書類が必要となり、手間がかかってしまう。時間が経てば経つほど話がこじれてしまうことがあるため、早めに専門家に相談することも検討したい。

また、遺品整理では、「高額なアクセサリーを誰がもらうか、売ってお金にするかでもめた」「大量の小銭を誰にも相談せず処分した」「父が勝手に故人と親交のない親戚に遺品整理をさせ、気に入った物を持ち帰らせたりしていた」など、アクセサリーやコレクションに関するトラブルも多いようだ。

不動産相続トラブル経験者の3割以上が相手との関係を「修復できない」と回答

図1の調査では、4人に1人が土地不動産でもめているという結果だったが、具体的にどのようなことでもめるのだろうか。不動産相続トラブル経験者を対象とした調査で、最も多かったのは「不動産の取り分で揉めた」(60.9%)だった(図2)。

不動産は簡単に分割できず、価格水準もよく分からないことが多い。さらに、売却しようとしても希望する価格で売れないことや、売却までに時間がかかることもある。そのため、取り分をめぐり、相続人同士でトラブルに発展してしまうことが多いのだろう。

図2:不動産トラブルになった原因を教えてください

図2:不動産トラブルになった原因を教えてください

出典:株式会社クランピーリアルエステート「不動産の相続でトラブルになった原因は?」をもとに編集部作成

不動産相続トラブルの経験者87名を対象にしたWEBアンケート。2021年3月24日~3月30日に実施。

不動産相続では、身近な兄弟・姉妹間でトラブルを経験する人が多いようだ。調査結果によると、もめた相手は「兄弟・姉妹」(41.4%)が最も多く、次に「いとこ」(32.2%)、「叔父・叔母(伯父・伯母)」(17.2%)、「甥・姪」(4.6%)となった。

気になるのは、もめた相手とのその後の関係だ。回答を見ると、「関係を修復した」「修復する可能性はある」という結果が半数以上を占めたものの、反面、「修復する可能性はない」(26.7%)、「今後も修復するつもりはない」(11.6%)という回答も多く、3割以上が相手との関係がこじれたままになっている(図3)。不動産相続でもめる相手は身近な関係者が多いため、親族間の相続トラブルはできるだけ避けたいものだ。

図3:トラブルになってしまった親族との関係修復はできそうですか?

図3:トラブルになってしまった親族との関係修復はできそうですか?

出典:株式会社クランピーリアルエステート「不動産の相続でトラブルになった原因は?」をもとに編集部作成

不動産相続トラブルの経験者87名を対象にしたWEBアンケート。2021年3月24日~3月30日に実施。

各構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならないことがあります。

相続トラブル回避には遺言書が有効だが、作成済みは3.4%と少数

相続トラブルを防ぐためには、さまざまな対策が必要になることがある。「遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査」で、相続トラブルを回避するために必要だと考える対策を聞いたところ、「相続対象となる財産の内容を普段から整理しておくこと」(64.7%)、「遺言書を書くこと」(58.1%)、「相続内容について、普段から家族と話し合うこと」(51.3%)などの回答が多かった(図4)。

図4:相続・遺贈に関するトラブルを防ぐために、あなたはどのようなことが必要だと感じましたか。大事だと思う順に3位までお選びください。(1位~3位合算)

図4:相続・遺贈に関するトラブルを防ぐために、あなたはどのようなことが必要だと感じましたか。大事だと思う順に3位までお選びください。(1位~3位合算)

出典:公益財団法人 日本財団「遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査 要約版」をもとに編集部作成

全国の60~79歳男女2,000名を対象にしたインターネット調査。2020年11月27日~11月28日に実施。

前述の不動産相続トラブル経験者を対象にした調査でも、約6割が「遺言があればトラブルにならなかったと思う」と回答しており、遺言書がトラブル回避につながると感じた人は多いようだ。

しかし、遺言書の準備状況に関する設問の結果では、遺言書未作成の人が96.7%を占め、作成済みの人は全体の3.4%にとどまっている。未作成の内訳としては「今後も作成しない」(42.7%)、「しばらく作成するつもりはない」(35.4%)「近いうちに作成しようと思っている」(13.9%)、「エンディングノートは作成した」(4.7%)という結果となり、まだ遺言書を作成していない人が多いようだ(図5)。

図5:あなたは現在、ご自身に万が一のことがあった時の為に、財産の相続に関して遺言書を作成していますか。

図5:あなたは現在、ご自身に万が一のことがあった時の為に、財産の相続に関して遺言書を作成していますか。

出典:公益財団法人 日本財団「遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査 要約版」をもとに編集部作成

全国の60~79歳男女2,000名を対象にしたインターネット調査。2020年11月27日~11月28日に実施。

各構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならないことがあります。

遺言書はどうやって作れば良いのか?

こうした背景には、遺言書を作成しようと思っても、どうしたらいいのかわからないという人も多いからではないだろうか。遺言書にはいくつか種類があるが、中でも一般的に使われているのが自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類で、それぞれの特徴は以下だ(図6)。

図6:遺言書の種類と特徴

図6:遺言書の種類と特徴

出典:日本公証人連合会のホームページをもとに編集部作成

(注1)遺言者が高齢で体力が弱り、あるいは病気等のために、公証役場に出向くことが困難な場合には、公証人が、遺言者の御自宅、老人ホーム、介護施設、病院等に出張して、遺言公正証書を作成することもできる。

自筆証書遺言は、自筆で作成する遺言書のことで、手軽に作成ができ、費用もかからないことから、遺言書として多く利用されている。しかし、書き間違えが正しく修正されていなかったり、遺言の内容があいまいだったりすると、遺言書として無効になってしまうことがあるので注意したい。

また、紛失や隠匿、改ざんのリスクを回避するため、自筆証書遺言を適正に管理・保管する法務局の制度「自筆証書遺言書保管制度」を利用する方法もある。遺言書の保管申請1件(遺言書1通)につき3,900円(※2022年2月時点)など所定の費用がかかるものの、この制度を利用すれば、遺言書は原本に加えて、画像データとしても長期間適正に管理されるため安心だ。また、相続人に遺言の存在や内容を知らせると同時に、偽造・変造を防止するための手続き「裁判所の検認」が不要になるといったメリットもある。ただ、自筆証書遺言書保管制度も、保管された遺言書の有効性を保証するものではないので注意しよう。

遺言書を公文書として効力を持たせたいと考えている人は、遺言書を公正証書にした公正証書遺言がいいだろう。公証人という法律の専門家が作成するため、その内容が正しいことを証明しており、不備で遺言が無効になるおそれはない。相続財産の金額が大きい場合には、多少の費用はかかるが、安心で確実な公正証書遺言を利用したい。

遺言書の作成方法が決まったら、どのような内容を遺すのかも重要だ。すでに遺言書を作成した人に内容を聞いたところ、「誰に何を相続させるか」(61.2%)、「保険金の受取について」(注2)(25.4%)など、財産やお金に関することが上位にランクインした。一方で、家族へのメッセージや先祖のお墓のこと、ペットのことなどを書く人もいる(図7)。遺言書には、財産分与の話だけでなく、それぞれの思いも込めているようだ。

(注2)(死亡)保険金は受取人固有の財産として民法で整理されているので遺言に記載なくても、受取人に指定された方が保険金を受け取ることになります。保険の受取について書く場合は、遺言で受取人を変更するような(特殊な)場合となります。

図7:遺言書に書いた内容をすべてお選びください。(複数回答)

図7:遺言書に書いた内容をすべてお選びください。(複数回答)

出典:公益財団法人 日本財団「遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査 要約版」をもとに編集部作成

全国の60~79歳男女2,000名を対象にしたインターネット調査。2020年11月27日~11月28日に実施。

n数=67は、遺言書作成者。

ただ、遺言書があるからといって、トラブルを完全に回避できるわけではない。先に紹介した、不動産相続トラブル経験者を対象にしたアンケートでも、15.1%の人が「遺言書があったのにトラブルになった」と回答している。遺言書は書き方を間違えると法律的に無効になったり、遺言の内容が不公平だと相続人同士でトラブルに発展したりする可能性も考えられる。作成時には内容を精査し、十分な配慮をしておきたい。

相続・遺産整理でトラブルを経験する人は多いことを理解していただけただろうか。自分の死後、遺された家族が相続でもめないよう、あらかじめ自身の資産を整理し、相続対策として遺言書を作成しておくといいだろう。元気で気力溢れる早い段階から、みんなが笑顔になれる相続準備を進めておきたいものだ。野村證券では相続や遺言に関する無料相談も受け付けている。まずは気軽に相談してみてはいかがだろうか。

相続対策のご相談は野村證券へ
お客様の相続にあたって、提携税理士や各方面の専門家と連携し、課題解決にあたる他、家族間では、直接話しづらい問題の解決にあたっても親身にサポートを行っています。