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加齢とともに睡眠の質が悪くなる!? 「良い睡眠」で健康寿命を延ばす

2022年10月12日

睡眠不足になると、さまざまな心身の不調や病気を引き起こす可能性が高まる。健康寿命を延ばし、充実した毎日を過ごすためには「良い睡眠」が不可欠だ。

しかし、実際には日々の睡眠時間が短い人や、夜中に何度も目が覚めてしまう人も多い。また、一般的に年齢を重ねるにつれて睡眠の質が下がる傾向にあり、ライフスタイルの変化などにより、不眠症などの睡眠障害にかかるリスクが高まると言われている。

そこで、睡眠不足が体に及ぼす影響を確認しつつ、質の良い睡眠を得るにはどうしたらいいか、そのポイントを見ていこう。

60歳以上の人は夜中に目が覚めやすい

総務省が行っている生活時間の配分などに関する調査を見ると、1週間における45~59歳の平均睡眠時間は7時間14分(434分)ともっとも短く、60歳以降は加齢とともに徐々に睡眠時間が長くなっていく傾向にある(図1)。

図1:年齢別週平均睡眠時間

図1:年齢別週平均睡眠時間

出典:総務省統計局「平成28年社会生活基本調査 生活時間−全国(調査票B)」をもとに編集部作成

一方、「睡眠に関する不満」についてのアンケート調査では、40代以降、「眠りが浅い」と回答した人は、年齢が上がるほど減る傾向にあるものの、「何度か目が覚める」(40代12.4%・50代15.6%・60代18.6%・70代以上18.2%)と回答した人は逆に増加している。さらに、60代以降になると「トイレが近い」(60代17.4%・70代以上32.6%)という回答が多くなる(図2、図3)。つまり、60代以上では「眠りが浅くなった」という自覚はないが、夜中に何度も起きてしまう人が多いようだ。

図2:睡眠に関して最も不満に感じることは何ですか? (n=4,244)

図2:睡眠に関して最も不満に感じることは何ですか? (n=4,244)

出典:株式会社フジ医療器「第9回 睡眠に関する調査」(https://www.fujiiryoki.co.jp/company/news/news2/n166.html)をもとに編集部作成

全国のフジ医療器メルマガ会員の20歳以上の男女4,519名を対象にしたWeb上でのアンケート調査。2021年12月1日~12月7日に実施。

n数=4,244は、「睡眠に不満のある」と答えた人。

構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならないことがあります。

図3:睡眠に関して最も不満に感じることは何ですか?(抜粋)

図3:睡眠に関して最も不満に感じることは何ですか?(抜粋)

図2より4項目を抜粋してグラフ化。編集部作成。

では、どうして年齢を重ねると夜中に何度も起きてしまうのだろうか。

睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」がある。「レム睡眠」は眠りの浅い段階で、脳波は起きているときに近い状態を示す。これに対して「ノンレム睡眠」は眠りが深く、脳の活動も低下している状態を示す。さらに、「ノンレム睡眠」は第1~4段階に分けられ、第4段階に近づくほど眠りが深くなり、第3・4段階が熟睡している状態だ。

一般的な成人の場合、眠りにつくとすぐに「ノンレム睡眠」に入り、第1段階から徐々に第4段階へと移行。約1時間半後に「レム睡眠」に入り、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」をおよそ1時間半ごとにくり返す。そして、目覚めが近づくと「レム睡眠」が増えていく。しかし高齢者になると、熟睡状態である第3・4段階がほとんどなく、眠りの浅い1・2段階が増え、しかも頻繁に覚醒段階になると言われている。(図4)。

図4:一般的な成人と高齢者の睡眠イメージ

図4:一般的な成人と高齢者の睡眠イメージ

一般的な睡眠のモデルを参考に編集部作成(イメージ図)。

つまり、年齢を重ねるほど眠りが浅く覚醒段階になる頻度が高まるため、尿意を感じたり、小さな物音がしたりしただけでも、すぐに目が覚めてしまうと考えられるのだ。

睡眠不足で生活習慣病のリスクが上がる

慢性的な睡眠不足に陥ると、日中に眠くなるほか、意欲が低下したり、記憶力が衰えたりするといった精神機能の低下を招きやすい。また、睡眠不足はホルモンの分泌や自律神経機能にも影響を及ぼし、4時間の睡眠が2日間続くだけで、食欲を抑えるホルモンの分泌が減り、食欲を高めるホルモンの分泌が増えて食欲が増すことがわかっている。こうした生活が続くと、肥満につながるだろう。さらに、慢性的な睡眠不足や、不眠症などの睡眠障害は、糖尿病や心臓病、高血圧といった生活習慣病のリスクを高めることも判明している。

また、60代以降になると、定年退職や家族構成の変化などによって生活リズムが変わる人も多い。こうした生活の変化から心理的ストレスが生じ、睡眠に悪影響を及ぼすとも言われている。健康的なセカンドライフを送るためには、これまでよりも「睡眠不足」に対する意識を持つことが大切だ。

睡眠は「時間」より「質」が重要?

理想的な睡眠時間とは、いったいどれくらいの長さなのだろう。世の中には、比較的短い時間の睡眠でも生活ができる「ショートスリーパー」と呼ばれる人もいるが、世界各国で行われた多様な研究から、7~8時間が理想とされることが多い。ただ、眠りのメカニズムはまだまだ解明されていない部分があり、最適な睡眠時間には個人差もある。そのため「何時間眠ればよい」とは一概に言えない。また、十分な睡眠を確保するためには「時間より質が大切」とも言われており、日中に眠くならずに過ごせているなら、時間にこだわる必要はないという意見もある。

では、「良質な睡眠」とはどんな睡眠かというと、これもまた個人差があるが、厚生労働省が提唱する「健康づくりのための睡眠指針~快適な睡眠のための7箇条~」の中に「睡眠は人それぞれ、日中元気はつらつが快適な睡眠のバロメーター」という1条がある(注)。また、すでに見てきたように、年齢を重ねれば眠りが浅くなることは避けられない生理現象。時間や中途覚醒の回数にこだわらず、日中に健全な行動ができていることが「良質な睡眠」のバロメーターのひとつと言えそうだ。

(注)出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針検討会報告書」(平成15年3月)(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/03/s0331-3.html)

質の良い睡眠をとる方法は?

加齢とともに眠りが浅くなったり、夜中に目が覚める回数が増えたりするなかで、睡眠の質を上げるためには、生活習慣の見直しがポイントとなる。具体的にどのような習慣を心がけたらいいのかを見ていこう。

・規則正しい生活を心がける
人には体内時計があり、ホルモンの分泌や体の機能、生理的な活動などを調節している。ただ、体内時計は自分の意志ではコントロールできず、規則正しい生活を送ることで整うもの。就寝や起床、食事などの時間をなるべく一定にすることで体内時計の乱れが改善され、スムーズに眠りにつくことができるのだ。ただし、睡眠時間を長くしようと、眠くもないのに普段より早く布団に入っても、寝付きが悪くなるほか、夜中に目が覚める回数が増えることもあるので、無理に早く就寝するのは避けよう。

・光を上手に活用する
起床直後に日光を浴びることも、体内時計の調整につながる。そのため朝は目が覚めたらカーテンを開け、部屋に自然光を取り入れよう。さらに、昼間に明るい光を浴びると睡眠と目覚めのリズムが整い、夜に分泌される催眠作用のあるホルモン「メラトニン」が増える。逆に、夜に明るい光を長時間浴びると体内時計が乱れるため、明るすぎない落ち着いた暖色系の照明を使うのが理想的だ。また、スマートフォンやパソコン、テレビを寝る直前まで見続けるのも控えたい。

・昼夜の活動にメリハリをつける
退職などに伴い、年齢を重ねると家の中で過ごす時間が増えがちだ。しかし、昼はできるだけ活動的に、夜はゆったりと静かに過ごして昼夜の活動にメリハリをつけることが、安定した眠りにつながる。

・運動を習慣にする
国内外の研究で、運動習慣のある人は不眠が少ないことが解明されている。そのため運動習慣をつけることで寝付きが良くなったり、眠りが深くなったりする効果が期待できる。ただ、激しい運動は眠りを妨げる原因になることもあるので、早足でのウォーキングや軽いランニングなどがおすすめだ。

・短時間の昼寝を取り入れる
15分程度の昼寝をすると、午後に眠気を感じにくくなって活力が得られる。65歳以上の人は、30分程度の昼寝をすることで夜は眠りにつきやすくなるケースもある。

・入浴は就寝の2~3時間前に
入浴で体を温めると、眠りにつきやすくなる。ただ、就寝直前の入浴は寝付きを悪くすることもあるため、床に就く2~3時間前までに入浴を済ませたい。半身浴も寝付きを良くするので、体調や好みに応じて入浴方法を選ぼう。

・就寝直前の食事やお酒、たばこは禁物
就寝直前に食事をすると、消化活動によって睡眠が妨げられることに。食事をしてから胃腸の働きが一段落するまでには3時間ほどかかるので、夕食は就寝の3時間前までには済ませておきたい。また、コーヒー、緑茶、チョコレートといったカフェインを含む飲食物やたばこのニコチンには覚醒作用があるため、就寝前は控えるのが無難だ。アルコールも寝付きを良くする一方で、明け方の眠りを妨げるので、ほどほどに。

加えて、寝具や寝室の環境を整えることも快眠を手に入れるコツだ。

就寝中は、背骨が緩やかなS字カーブを描く自然な立ち姿に近い寝姿勢をキープできると体への負担が少ない。柔らかすぎるベッドマットや敷布団は胸と腰が沈み込みすぎてS字にならず、硬すぎると胸部や腰に重みが集中して血行が悪くなってしまう。一度試してみて、自分が快適だと感じるものを購入するのが理想だ。また、枕はベッドマットや敷布団と、後頭部から首にかけてできる隙間の深さに合うものを選びたい。

そして、掛布団は保温性に優れ、寝ている間にかいた汗を吸収し、放湿性の高いものがよい。また、寝返りを打ちやすいよう、軽くて体にフィットするものがベターだ。ちなみに、布団の中の温度は一般的に33℃前後、湿度は50%前後が適していると言われている。寒い冬は保温性を高めるために肌掛けと厚布団を重ね、暑い夏には麻などの吸放湿性の高い素材のシーツやベッドパッドを使うなど、季節に合った寝具を選ぶことも大切。さらに、寝室は光や音をできるだけ遮断するといった、自分にとって心地よい環境を整えることも重要だ(図5)。

また、スマートフォンやスマートウォッチなどと連携して、無料で睡眠の質を確認できるアプリなども用意されている。寝室環境を変えた際には、自身の睡眠を客観的に診断してみるのも快適な睡眠への近道かもしれない。

図5:睡眠と寝室環境

図5:睡眠と寝室環境

出典:厚生労働省「e-ヘルスネット 快眠のためのテクニック−よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係(有竹清夏)」をもとに編集部作成

人生100年と言われる時代。健康で豊かな毎日を過ごすためにも、これまでの生活習慣や寝室の環境を見直し、質の良い睡眠を手に入れよう。

良い睡眠は、健康寿命を延ばしてくれるんですね!秋の夜長、心地よい眠りを手に入れましょう。
一方で、残念ながら…『お金』は、寝かせておくだけでは寿命は延びません。
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