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省エネで快適。断熱性能の高い家は、健康寿命を延ばす!?

2022年12月07日

世界情勢の不安定化もあり、エネルギー不足が取り沙汰される中、常に節電を意識しているという人も多いのではないだろうか。
地球温暖化の影響か、日本では毎年のように猛暑による電力不足の問題が起こっている。そのたびにエアコンの設定温度を調整したり、使用時間を短くしたりなど、節電を心がけている人も多いだろう。しかし、暖房や冷房を効率的に使える家に住むことができれば、電気の消費量を格段に減らすことができるのではないか。

家の中にいるときに、冬の寒さや夏の暑さが厳しい、廊下や脱衣所が寒い、暖房や冷房の効きが悪い、あるいは光熱費が高い、といった不満を感じたことはないだろうか。思い当たることが1つでもあるとすれば、その原因は家の断熱性能の低さに起因する可能性もありそうだ。一方、断熱性能の高い家は、住む人の健康面にも良い影響をおよぼすことが明らかになっている。

今回は、断熱性能の高い家とはどのような家なのか、また、そうした家に住むことによる健康面のメリットについて見てみよう。

高齢者の家の悩み、上位に温度管理

高齢者の家の悩みに関するアンケート調査によると、2位に「温度管理が難しい(暑い、寒い)」とあり、1位の「防犯面が心配」とほとんど差がない。

図1:今の住まいに関する悩み(複数回答、65歳以上)

図1:今の住まいに関する悩み(複数回答、65歳以上)

出典:特定非営利活動法人「老いの工学研究所」の「高齢者の住まいの悩みに関する調査」をもとに編集部作成

65歳以上の男女430名が回答したインターネット調査。2021年4月15日~5月31日に実施。

高齢になると、夏の暑さや冬の寒さが身体にこたえるようになるものだ。さらに、高齢者の家庭内事故の原因として多いヒートショック(注1)に対する警戒心からも、温度管理の難しさが上位になっていると想像できる。

(注1)ヒートショックとは、温度の急激な変化で血圧が上下に大きく変動することなどによって起こる健康被害。失神、心筋梗塞や不整脈、脳梗塞を起こすことがあり、特に冬場に多くみられ、高齢者に多いのが特徴。

断熱性能を高くして、人も家も健康に

日本の住宅は、部屋ごとに暖房機器を置く局所暖房の家が多い。そのため、暖房している部屋は暖かいが、していない部屋や廊下は寒く、場所によって温度差が出る。その温度差が大きくなればなるほど、部屋ごとの快適さが異なるばかりか、特に冬場には、寒い脱衣所から熱い湯船に浸かることで起きるヒートショックの危険性も高まってしまう。実際、入浴中の事故は冬場に多いことから、そこにはヒートショックが原因となる事故がかなり含まれていると想像できる。

図2:高齢者の「不慮の溺死及び溺水」による発生月別死亡者数(令和元年)

図2:高齢者の「不慮の溺死及び溺水」による発生月別死亡者数(令和元年)

出典:消費者庁 News Release(令和2年11月19日)をもとに編集部作成

家を断熱化するには、壁、床、天井などに断熱材を充てんし、窓は熱伝導率の低い樹脂製などのフレームと断熱性の高い複層ガラスなどを採用するのが基本だ。こうした断熱施工をされた家は外気温の影響を受けにくく、暖房や冷房に多くを頼らなくても、年間を通して快適な室温に保たれやすい。局所暖房でも部屋間の温度差を小さく抑えることが可能だ。図3のように、断熱性能の低い家の場合、暖房している居間と暖房していないトイレや洗面所との温度差は約5℃だが、断熱性能の高い家の温度差はほとんどないといっていい。そのためにヒートショックのリスクも小さくなる。

図3:断熱性能の低い家と高い家の冬のリビング(LD)とトイレの温度差

図3:断熱性能の低い家と高い家の冬のリビング(LD)とトイレの温度差

出典:一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会「HEAT20の家」をもとに編集部作成

また、家の中の温度差が大きいと結露が発生しやすく、カビやダニの発生を助長する可能性も高くなる。ぜんそくやアトピーなどの原因にもなるほか、壁の内部の木材を腐食させ、建材の劣化につながり、資産価値を下げる要因になってしまう場合もある。家の断熱性能を高めることは、住む人と家自体の健康、そして資産価値を守ることにもつながるのだ。

断熱改修後は、血圧・頻尿などが改善

室温が健康におよぼす影響については、海外での調査が進んでいる。英国の「イングランド防寒計画 2015年」によれば、室温が18℃未満になると血圧が上昇し、循環器系疾患を引き起こすおそれがあること、16℃未満では呼吸器系疾患に対する抵抗力の低下が指摘され、家の断熱改修の必要性が示されている。また、WHOも住宅と健康に関するガイドラインの中で、冬季の最低室温を18℃以上に保ち、小児と高齢者にはさらに暖かくするべきと勧告している。

国土交通省では、断熱性能の低い家を高い家に改修した人の健康への影響について、2014年から長期にわたる調査を行っている。調査はまだ中間報告の段階だが、以下のような有意な知見が得られている。

【家を断熱改修した人からわかった知見】

▽血圧の症状が改善した

  • 起床時の最高血圧、最低血圧がともに低下した。
  • 夏と冬の血圧差が、著しく小さくなった。

高血圧は動脈硬化を引き起こし、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などの原因となる。また、血圧の上下の差が大きいのは、動脈硬化が進んでいるサインといわれる。
血圧は常に一定ではなく、一般的に夏は下がり、冬は上がるという季節変動がある。冬の血圧上昇は、寒さによる血管の収縮や、血圧を上げることによって体温を維持しようとする身体の働きなどが原因だ。冬の血圧上昇を抑えるためにも、暖かい家に住むことが重要だといえる。

▽過活動膀胱(注2)の症状が改善した

  • 頻尿などの過活動膀胱の症状のある人が1~2年後に半減。

「トイレが近い」「トイレまで我慢するのが大変だ」という過活動膀胱の症状をもつ人は、国内に800万人以上いるといわれている。泌尿器の病気や薬の副作用など、原因はさまざまだが、家の暖かさを保つことにより改善するケースも見られるようだ。

(注2)過活動膀胱とは、「急に尿意をもよおし、漏れそうで我慢できない(尿意切迫感)」「トイレが近い(頻尿)、夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)」「急に尿をしたくなり、トイレまで我慢できずに漏れてしまうことがある(切迫性尿失禁)」などの症状を示す病気。

家の暖かさと健康に関する研究は、国内外の国や機関で取り組まれているほど重要な課題になっている。その中で、断熱性能の高い家に住むことが健康問題の解決につながった例も出てきているようだ。

最後に、断熱性能の高い家は電気やガスの使用量が減るため、当然ながら光熱費もそれだけ抑えられる。さらには、家庭から排出される二酸化炭素の量を削減できるため、住むだけで脱炭素社会の実現にも貢献できる。

1年でも長い健康寿命を確保したいと思うのであれば、住み心地の良い断熱性能の高い家へのリフォームや住み替えを検討してみてもいいのかもしれない。

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リタイア後は、自宅で過ごす時間が長くなります。セカンドライフを元気に楽しむために、断熱性能の高いエコな家へのリフォームや住み替えを考えてはいかがでしょうか。
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