NEW

#調査

初詣の起源は? 寺社にまつわる雑学と正しい参拝作法

2022年12月21日

新年は初詣から始まる、という人も多いのではないだろうか。しかし、お寺と神社のどちらに行くの?それぞれの参拝方法は違うの?などと問われると、はっきり説明できる人は意外と少ないかもしれない。

ここ数年、コロナ禍の影響で実現が難しかった初詣だが、今回は、正式な参拝の作法や初詣の起源、おみくじの由来など、初詣がより楽しくなる寺社の雑学を紹介する。

寺社に行く主な目的は「仏事、初詣、観光」

20代以上の男女を対象に行ったお寺・神社に関するアンケートで、寺社に足を運ぶ目的を聞いたところ、お寺の場合は「お葬式、法事などの仏事」という回答が70.3%と最も多く、次に「供養・お墓参り」(50.1%)、「観光・名所めぐり」(48.2%)、「初詣」(37.5%)と続く。神社の場合は「初詣」という回答が86.0%と最も多く、次に「観光・名所めぐり」(48.9%)、「厄落とし・ご祈祷」(32.8%)と続いている(図1)。つまり、お寺も神社も日常的に足を運ぶというより、仏事や初詣といった行事のほか、観光を目的に行く人が多いことがわかる。

図1:お寺・神社に行く目的(複数回答、それぞれ上位5つ抜粋)

図1:お寺・神社に行く目的(複数回答、それぞれ上位5つ抜粋)

出典:インターワイヤード株式会社 DIMSDRIVE事務局「『お寺・神社』に関するアンケート」をもとに編集部作成

20~70代以上の男女3,792名から回答を得たインターネット調査。2018年6月6日~22日に実施。

n=1,609は、「どちらかといえばお寺に行く」または「お寺と神社両方とも行く」と回答した人の数。n=2,170は、「どちらかといえば神社に行く」または「お寺と神社両方とも行く」と回答した人の数。

また、「『お寺』と『神社』どちらによく行く?」と聞いた質問では、「どちらかといえばお寺に行く」と答えた人が9.1%、「どちらかといえば神社に行く」と答えた人が23.9%で、「両方とも行く」(33.4%)と合わせると、お寺に行く人は42.5%、神社に行く人は57.3%となり、神社に行く人のほうが多かった(注)。また、図1にあるように、行く目的が「初詣」と答えたのは、お寺が37.5%、神社は86.0%となり、神社に初詣に行く人の割合はお寺の2倍以上であることがわかった。

(注)出典:インターワイヤード株式会社 DIMSDRIVE事務局「『お寺・神社』に関するアンケート」

20~70代以上の男女3,792名から回答を得たインターネット調査。2018年6月6日~22日に実施。

お寺と神社、どう違う?

さらに、お寺と神社の「宗教/参拝方法/建物/起源」の違いを知っている?という質問では、「(人に説明できるくらい)知っている」と答えたのは、いずれの項目でも15~25%にとどまり、「なんとなく知っている」「わからない」という回答が多くを占めた(図2)。

図2:「お寺」と「神社」の以下の違いを知っていますか?(単一回答)

図2:「お寺」と「神社」の以下の違いを知っていますか?(単一回答)

出典:インターワイヤード株式会社 DIMSDRIVE事務局「『お寺・神社』に関するアンケート」をもとに編集部作成

20~70代以上の男女3,792名から回答を得たインターネット調査。2018年6月6日~22日に実施。

このように、お寺と神社の違いをはっきり説明できない人が多い理由には、歴史的な背景が大きいと考えられる。実は、明治時代に「神仏分離」が行われるまで、お寺と神社はほとんど区別されていなかったのだ。例えば、全国にある「八幡宮」の祭神である八幡神は、「八幡大菩薩」という仏教の称号をつけて呼ばれていた。このような信仰の融合を「神仏習合」といい、こうした時代が長かったため、お寺と神社の区別がつきにくくなったのだ。

しかし、お寺と神社には以下のような違いがある。

・建てられた目的の違い
お寺は人が仏教の教えを学び、修行をして悟りを開くための場所。これに対し、神社は神様を祀る場所だ。つまり、お寺は人がいて初めて成り立つオープンな場所だが、神社は神様のための場所であるため、人が入りづらい山奥などに建てられることもある。また、お寺の「ご本尊(祀られている仏像など)」は秘仏でない限り拝観できるのが一般的だが、神社の「ご神体(神様が宿っているもの)」は基本的に人が見てはいけないものとされている。

・建物の名称と装飾の違い
お寺のご本尊がある場所は「本堂」、神社のご神体がある場所は「本殿」という。例外はあるものの、お寺の建物は人に見せるための装飾が多く施されているのに対し、神社の建物は装飾が少ない。ただ、神社は神様のための場所であるため、人目には触れない本殿内部に精緻な美しい装飾が施されていることがある。

・納めるお金の呼び名の違い
お寺に納めるお金を「お布施」、神社に納めるお金は「初穂料」などという。「お布施」は自分の持っているものを相手に渡して功徳(くどく)を積むという仏教の修行法の一つ。僧侶が参拝者や檀家に仏教の教えを説き、参拝者や檀家は僧侶にお金を渡して自分の代わりに修行していただくと同時にお寺の運営を維持するという、ギブ・アンド・テイクの関係が結ばれている。

一方、「初穂料」とは「その年に初めて収穫された稲穂」に由来する言葉。初物は霊力が強いため、これを神様に受け入れてもらうことで霊力を強めていただき、その神様の霊力を人々が分けてもらうという構図がある。「初穂料」は必ずしもお米ではなく、山であれば狩猟で得た動物、海であれば魚などでも納められていた。ちなみに、「お賽銭」という言葉はお寺と神社の両方で使われる。

意外と知らない!? お寺と神社の正しい参拝方法

では、お寺と神社の参拝方法はどう違うのだろう。前述の調査で「お寺と神社の参拝方法の違い」を「わからない」と答えた人は、28.9%。「なんとなく知っている」と答えた人は48.1%だった(図2)。

初詣に行った際は正しい作法で参拝ができるよう、お寺と神社の参拝の作法をおさらいしておこう。

図3:神社・お寺での参拝の作法の違い

図3:神社・お寺での参拝の作法の違い

出典:監修・渋谷申博氏の話をもとに編集部作成

まずは、初詣に訪れることの多い神社の参拝作法から見ていきたい。本来、その方法は土地によって異なるものだが、戦後、神社本庁ができた過程で全国統一の作法として「二拝二拍手一拝」の拝礼がつくられた。これは、どの神社で行っても神様に失礼にならない方法といえる。

なお、拍手のあとに手を合わせたまま願い事をする人が多いが、拍手のあとは両手をおろし、お辞儀をした状態で願い事をするのが本来の作法だ。

一方、お寺の参拝作法は神社に比べるとシンプルだ。ただ注意したいのは、「お寺では拍手をせず、合掌して敬意を表す」こと。手を合わせたままお辞儀をすることがポイントだ。これを「合掌低頭」という。

神社の雑学を知って、さらに運気アップ!?

初詣で神社を訪れるなら、さらに神社にまつわる知識を深めたい。初詣や年末年始の集まりで誰かに話したくなるような神社の雑学を紹介しよう。

・初詣の習慣は鉄道会社のプロモーションで生まれた?
「初詣」という言葉は、明治時代に鉄道会社がつくったものといわれている。閑散期の正月に利用客を増やすため、鉄道会社が「●●に初詣に行こう」という宣伝を行ったのが始まりだ。本来、正月は家に年神様や祖霊を迎えてお祀りする期間。元日に限らず、毎月1日に氏神様などの神社にお参りをする「朔日(ついたち)参り」という習慣は江戸時代からあったが、現在の初詣のように一度にたくさんの人が神社を訪れるものではなかった。

・「本殿」と「拝殿」の違いは?
「本殿」はご神体を祀っている場所で、「拝殿」は人が参拝をする場所。ご神体は人が見てはいけないものとされているため、原則として本殿には神主も入ることはできない。また、ご神体が山や岩などの自然物で本殿がない場合や、神楽殿が拝殿を兼ねている神社もある。

・鳥居の起源は謎に包まれている!
日本には、平安時代から鳥居が存在していたことはわかっているが、いつから、何のためにあるのかは、いまだに不明だ。インドの寺院にある「トーラナ」という門や、中国の宮殿などにある「華表(かひょう)」という石柱が起源という説のほか、死者の魂が鳥の形になって飛んでいくという考えに由来するという説などがあるものの、いずれも定かではない。ちなみに、鳥居がたくさん並んでトンネルのようになっている神社は稲荷社が多い。

・手水舎の起源は禊だった
読み方は「てみずや」「ちょうずや」のどちらでもOK。本来は参拝前に川や海などで心身の穢(けが)れを取り去る「禊(みそぎ)」という儀礼を行うが、「手水舎」はそれを簡略化したもの。手や口を清める場所を指す。

・狛犬は犬ではない?
狛犬は想像上の生き物で、いわゆる「犬」ではない。正しくは口を閉じて角があるものが「狛犬」、口を開けているものが「獅子」。2つ合わせて「獅子狛犬」といい、邪悪なものが入ってこないよう神社を守るガードマンのような存在だ。また、神社には狐やねずみ、牛などの像があることも。これらは「神使(しんし)」という神様のお使いで、動物の種類を見れば祀っている神様がわかることもある。例えば、狐ならば稲荷神、牛ならば天神(菅原道真)といった具合だ。神社にどんな動物の像があるか、探してみるのもおもしろいだろう。

・おみくじは持ち帰るもの?
おみくじは神様の意思を知るための手段で、『日本書紀』に登場するほど歴史は古い。かつては将軍を選ぶ際に用いられたこともあった。文言が書かれた紙をいくつか用意し、その上で御幣(図4)を振るといった方法で行われていた。御幣にくっついたものが神意を表すと考えられていたのだ。おみくじはお寺にも神社にもあるが、もともとは漢詩や和歌が書かれていて一般の人には読めないため、僧侶や神主が内容を解説した。現代でもおみくじは神様からの授かりものなので、持って帰るのが基本。ただ、悪い結果が出て持ち帰りたくない場合や願掛けをしたい場合は、境内の決められた場所に結んでもよい。

図4:御幣

【図4:御幣】
御幣は、「ごへい」や「みてぐら」と読み、細長い木に紙や布を挟んだ神祭用具だ。もとは神様への捧げ物だった。

・お賽銭がキャッシュレス?
日本人には言霊(ことだま)という信仰があり、お賽銭では「ご縁があるように5円玉を入れる」という人もいる。しかし、金額は気にする必要はない。また、賽銭箱は基本的に銭を入れるものであり、小銭を入れる際の「チャリン、チャリン」という音には厄除けの意味合いもある。

近年、硬貨の両替には料金がかかるようになったことから、寺社では頭を悩ませているとか。お賽銭を電子マネーで受け付けている寺社も登場している。お賽銭にもキャッシュレスの時代がくるのかもしれない。

ちなみに、前述のアンケート調査でわかったお賽銭事情は以下のとおり(図5)。5円(18.9%)、10円(12.5%)をおさえて、100円(33.7%)が1位だった。

図5:お賽銭はいくら奉納することが多いですか?(数値記入)

図5:お賽銭はいくら奉納することが多いですか?(数値記入)

出典:インターワイヤード株式会社 DIMSDRIVE事務局「『お寺・神社』に関するアンケート」をもとに編集部作成

20~70代以上の男女3,792名から回答を得たインターネット調査。2018年6月6日~22日に実施。

n=2,514は、お寺と神社どちらかに行くと答えた人の数。

構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならないことがあります。

スペースの関係上、答えが0%の場合の項目は表示していません。

こうした雑学のほか、訪れる神社の歴史や祀られている神様、初詣の時期にしか受け取れない縁起物などを事前に調べておくことで、初詣がより楽しく、意義深いものとなるに違いない。

新年は、1年の目標や計画を立てるのにも良いタイミング。初詣でご利益を願うとともに、これからのライフプランを計画してはいかがだろう。

宗教監修

渋谷申博(しぶや のぶひろ)

宗教史研究家。神道・仏教など、宗教に関わる執筆活動をするかたわら、全国の社寺・聖地などのフィールドワークを続けている。