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「生きがい」に、お金の有無が影響する!? セカンドライフのお財布事情

2023年02月08日

子育てがひと段落すると気になりはじめるのが我が身、老後資金に関する問題だ。金融庁の報告書を基にした報道をきっかけに「老後資金には2,000万円が必要になる」という具体的な数字が意識されるようになったが、実際に、リタイアメント世代のお財布事情はどうなっているのだろうか? どれくらいの貯蓄があり、実際に何のためにお金を使っているのか。気になる同世代のお財布事情を政府統計資料から読み解く。

リタイアメント層が「使いたい支出先」は?

まずは、リタイアメント世代が何にお金を使いたいと思っているのかを見てみよう。
60歳以上を対象とした内閣府『令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査結果』では、今後優先的に使いたい支出先は、全体では「趣味やレジャーの費用」が最も多く40.4%、「食費」が31.3%となり、次いで、「保健・医療関係の費用」20.5%となっている。
年齢別に見てみると、60代前半では男女ともに「趣味やレジャーの費用」がもっとも多く、55.4%と5割を超えているが、年齢が上がるにつれて「趣味やレジャーの費用」への出費の欲求は低くなっていき、80歳以上では20.8%と2割ほどとなり、「食費」の29.7%や「保健・医療関係の費用」の26.7%のほうが上回るようになる。
また、「保健・医療関係の費用」についても、男女とも年齢が上がるにつれて高くなる傾向にある。
年を重ねるにつれて、お金の使用目的は、趣味やレジャーなど「楽しむためのもの」から、食費など生活に直結するものや、保健・医療関係費などの健康にかかわるものと、より「必要不可欠なもの」へと変わっていくようだ。

図1:今後、優先的に使いたい支出項目(抜粋・複数回答)

図1:今後、優先的に使いたい支出項目(抜粋・複数回答)

出典:内閣府「令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」をもとに編集部作成

全国の60歳以上(平成31年1月1日現在)の男女3,000名を対象にした調査員による面接聴取法調査。令和2年1月9日~1月26日に実施。有効回収数は1,755名(男性854名、女性901名)。

実際の支出で多くを占めるのは?

次に、実際に何にお金を使っているのか、支出について見てみよう。過去1年間の大きな支出先を聞いたところ、いちばん多いのが「食費」で59.4%、次いで「光熱水道費」と「保健・医療関係の費用」が同率の33.1%で、「趣味やレジャーの費用」・「友人等との交際費」といった余暇の費用よりも、より生活に結びついた支出が多くを占めていることがわかる。
さらに、これを先の図1と比較してみると、全体の使いたい項目ではいちばん多かった「趣味やレジャーの費用」をはじめ、「友人等との交際費」や「子や孫のための支出」などは順位を下げており、「本当は余暇や人のために使いたいけれど、実際は自身の生活に直結するものや健康にかかわるものに使っている」というのが実情のようだ。

図2:過去1年間の大きな支出項目(複数回答)

図2:過去1年間の大きな支出項目(複数回答)

出典:内閣府「令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」をもとに編集部作成

全国の60歳以上(平成31年1月1日現在)の男女3,000名を対象にした調査員による面接聴取法調査。令和2年1月9日~1月26日に実施。有効回収数は1,755名(男性854名、女性901名)。

健康面での不安が経済面の不安にも影響している?

今後支出したい項目でも実際の支出でも、生活に直結するものに次いで上位を占めていた「保健・医療関係の費用」などの健康にかかわる出費について、同世代はどのように感じているのだろうか。
経済的な面で、もっとも多くの人が不安視しているのが「自分や家族の医療・介護の費用がかかりすぎること」。次いで「自力で生活できなくなり、転居や有料老人ホームへの入居費用がかかること」、「収入や貯蓄が少ないため、生活費がまかなえなくなること」、「認知症などにより、財産の適正な管理ができなくなること」と続く。
生活費がまかなえなくなる、という直接的にお金が足りなくなるという不安以外では、健康にかかわる項目が上位を占めている。実際の支出で大きな割合を占めていた健康にかかわる出費は、そのまま経済面の不安という心理面にも大きくかかわっているようだ。

図3:経済的な面で不安なこと(複数回答)

図3:経済的な面で不安なこと(複数回答)

出典:内閣府「令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」をもとに編集部作成

全国の60歳以上(平成31年1月1日現在)の男女3,000名を対象にした調査員による面接聴取法調査。令和2年1月9日~1月26日に実施。有効回収数は1,755名(男性854名、女性901名)。

一方で、このグラフからは「不安と思っていることはない」と回答した人が34.2%と、3割以上いることもわかる。
では、どのような人が経済的な不安がないと回答しているのだろうか。

「心配なく暮らせる」ことと、貯蓄額の関係は?

まず、リタイアメント層は、どの程度の貯蓄を保有しているのだろうか。60歳以上の人の貯蓄総額をみると、貯蓄なしから1,000万円未満が半数を占めている。次いで1,000万~2,000万円未満が約1割、そして金融庁の報告書で30年間の老後資金の取り崩し額として算出されていた2,000万円、それ以上を保有しているという層は15%程度となっている。

図4:貯蓄総額(択一回答)

図4:貯蓄総額(択一回答)

出典:内閣府「令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」をもとに編集部作成

全国の60歳以上(平成31年1月1日現在)の男女3,000名を対象にした調査員による面接聴取法調査。令和2年1月9日~1月26日に実施。有効回収数は1,755名(男性854名、女性901名)。

各構成比は小数点以下を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100(%)とはならない。

次に、自身の暮らしについての評価を見てみると、「家計にゆとりがあり、まったく心配ない」と「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配ない」を合わせた回答の割合は、貯蓄が「100万円未満」では42.3%、「100万円~500万円未満」では70.0%、「500万円~1,000万円未満」では83.1%、「1,000万円~2,000万円未満」では90.4%、「2,000万円以上」では97.4%となり、貯蓄額が多いほど『心配ない』の割合が増加する傾向が顕著に表れている。

図5:貯蓄階層別 暮らし向きへの評価(2020年)

図5:貯蓄階層別 暮らし向きへの評価(2020年)

出典:内閣府「令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」をもとに編集部作成

全国の60歳以上(平成31年1月1日現在)の男女3,000名を対象にした調査員による面接聴取法調査。令和2年1月9日~1月26日に実施。有効回収数は1,755名(男性854名、女性901名)。

さらに興味深いのが、自己評価の変化だ。2020年と2011年の貯蓄保有額に対する自己評価を比較してみると、「十分だと思う」と「最低限はあると思う」の合計の割合は、すべての貯蓄層において、2020年のほうが増えているが、500万円以上貯蓄を保有する層でより顕著に増えている。
そして、貯蓄保有額が「十分だと思う」との最上位回答については、1,000万円以上の貯蓄層でより大きく伸びていることがわかる。

同資料の分析によると、2019年の金融庁の報告書を基にした報道に端を発する「老後資金2,000万円」というフレーズが繰り返しメディアに登場したため、「以前は必要な貯蓄額がよくわからない状況であったが、2,000万円という金額が目安となり、それを基に評価をすることになった人たちが一定層いると推測される」からだという。

図6:貯蓄階層別 貯蓄保有額への評価(2011年と2020年)

図6:貯蓄階層別 貯蓄保有額への評価(2011年と2020年)

出典:内閣府「令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」をもとに編集部作成

全国の60歳以上(平成31年1月1日現在)の男女3,000名を対象にした調査員による面接聴取法調査。令和2年1月9日~1月26日に実施。有効回収数は1,755名(男性854名、女性901名)。

2011年調査は55歳以上が対象であるが、そのうち60歳以上の集計結果。

家計的に心配なく暮らせることが、生きがいにつながっている?

この「家計的に心配なく暮らせる」ことが、実は「生きがい」を大きく高めることにも影響しているようだ。
60歳以上の人に生きがいの程度を聞いた質問では、79.7%と8割近くが生きがいを「十分感じている」または「多少感じている」と回答していて、リタイアメント世代も充実した日々を送っていることがわかる。

図7:生きがいの程度(択一回答)

図7:生きがいの程度(択一回答)

出典:内閣府「令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」をもとに編集部作成

全国の60歳以上(平成31年1月1日現在)の男女3,000名を対象にした調査員による面接聴取法調査。令和2年1月9日~1月26日に実施。有効回収数は1,755名(男性854名、女性901名)。

各構成比は小数点以下を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100(%)とはならない。

さらに同資料の分析では、生きがいを高める要因について、60歳以上の男性の場合、「(家計的に)心配なく暮らせる」と5.3倍*に、「健康状態」の選択肢が1段階よくなると3.1倍*に、「配偶者がいる」と2.4倍*に、「社会活動をしている」と1.9倍*になり、同じく60歳以上の女性の場合には、「(家計的に)心配なく暮らせる」と4.9倍*に、「社会活動をしている」と2.8倍*に、「健康状態」の選択肢が1段階よくなると2.2倍*になるとされている。
男女問わず「生きがい」を高めるには、やはり経済的に心配なく暮らせることの影響が一番大きい。先立つものの重要性は生活の質にも直結する要素が大きいようだ。

*小数点第2位を四捨五入

経済的不安を払拭して生きがいを感じるセカンドライフを送るために

「生きがい」を感じて充実したセカンドライフを送るためには、経済的な不安はないほうがいい。リタイアメント層では収入が減るケースが多いため、資産を取り崩す生活の中でも貯蓄を増やしていくことが重要となる。60歳までに目標金額を貯めるに越したことはないが、人生100年時代、豊かな老後を過ごすためにはセカンドライフに入ってからの資産運用も必要不可欠といえるのではないだろうか?

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