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#調査

塾に習い事、海外留学。教育費の援助で広がる、孫の可能性

2023年02月22日

幼いころからピアノや水泳といった習い事に通ったり、学習塾に通ったり……。そんなお孫さんの姿を見守っている方も多いだろう。また、幼稚園から大学まで、私立校に通うお孫さんもいらっしゃるのではないだろうか。さらには、海外に留学する、資格取得のために予備校に通うなど、子どもの学びの広がりは多岐にわたる。

その一方で、長期にわたる経済の低迷状態が続き、預貯金だけでは資産を増やすことが難しい時代でもある。こうした状況のなか、幼稚園から大学卒業までにかかる学費や、塾や習い事の費用は、60~70代の方々が子育てをしていたころに比べて大きく増えている。

さまざまな調査結果から、令和時代の教育費の実態と、教育に対する親の想いを見ていこう。

「教育費=学校教育費」だけじゃない! 塾や習い事の費用も必要

文部科学省が行った調査によると、2021年度の中学校の学校教育費は公立の場合が13万2,349円、私立の場合が106万1,350円と、私立のほうが圧倒的に高額だ。

しかし、塾や習い事といった学校外活動費を見てみると、公立の場合も私立の場合も36万円強と、ほぼ同額。つまり、現在の親は「公立を選べば学費が安くて安心」というわけではなく、公立であっても私立と同じくらい塾や習い事など学校外活動の費用を準備しておく必要があることがわかる(図1)。

図1:幼稚園から高等学校までの学習費総額と公私比率

図1:幼稚園から高等学校までの学習費総額と公私比率

出典:文部科学省「令和3年度 子供の学習費調査」をもとに編集部作成

令和3年度の年額。学習費総額は、学校教育費、学校給食費、学校外活動費の合計。「公私比率」は各学校種の公立学校を1とした場合の比率。

公立・私立の幼稚園、小学校、中学校、高等学校(全日制)の幼児・児童・生徒を対象とし、その保護者に回答を求めたもの。調査実施学校は1,600校、幼児・児童・生徒の総数は52,903人。

幼稚園から大学まで、令和時代の教育費はいくらかかる?

では、幼稚園から大学卒業までの19年間、塾や習い事など学校外の活動を含めた教育費はどれくらいかかるのだろうか。幼稚園から大学まですべて公立の場合は1,055万円、すべて私立の場合は2,528万円と、私立は公立の約2.4倍の教育費が必要であることがわかる。公立か私立か、どちらを選ぶかによって、教育費は大きく異なる(図2)。

図2:幼稚園から大学卒業までの教育費の目安

図2:幼稚園から大学卒業までの教育費の目安

出典:文部科学省「令和3年度 子供の学習費調査」、日本政策金融公庫「令和3年度『教育費負担の実態調査結果』」をもとに編集部作成

昭和~平成~令和、大学の授業料を比べてみると……
さらに希望する進路によって増える教育費も

現在の大学の学費は、60~70代が子育てを経験していた時代から比べると大きく増加している。

文部科学省発表の資料によると、2021年度の国立大学の授業料は53万5,800円に対し、30年前の1991年度は37万5,600円、40年前の1981年度は18万円と、40年で授業料は約3倍になっており、金額も35万円超の増加となっている。

また、私立大学の授業料は、2021年度が93万943円。これに対し、30年前の1991年度は64万1,608円、40年前の1981年度は38万253円と、40年で約2.4倍に。金額も55万円超と大幅に増えている(図3)。

図3:国公私立大学の授業料等の推移

図3:国公私立大学の授業料等の推移

出典:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」をもとに編集部作成

年度は入学年度。国立大学の平成16年度以降の額は国が示す標準額。公立大学・私立大学の額は平均である。

大学卒業後に大学院(私立)へと進んだ場合は、学部によって異なるが平均で費用を試算すると、修士課程に2年通うと190万7,090円、さらに博士課程に3年、合計5年通った場合は413万8,426円となる(注1)

また、一般的に授業料が高いと言われている医学部(私立)に6年間通った場合の費用の試算は3,558万7,197円となっている(注2)

(注1)出典:文部科学省「令和3年度 私立大学大学院入学者に係る初年度学生納付金 平均額(定員1人当たり)の調査結果について」をもとに編集部試算

(注2)出典:文部科学省「令和3年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金 平均額(定員1人当たり)の調査結果について」をもとに編集部試算

そのほか弁護士や公認会計士といった、高難度の試験に合格することが必須となる資格を有する職業を目指す場合には、大学と並行して資格取得のための予備校に通うこともあるだろう。例えば、司法試験の受験資格を得るための「司法試験予備試験」向け講座の場合、通学講座や通信講座などさまざまな形式があるが、8~396万円程度(注3)となっているようだ。予備試験に合格しても、その後には司法試験が待ち構えており、最終合格を勝ち取るためにはさらに費用がかかることになる。

また、公認会計士試験の講座では60~80万円程度かかるという調査結果がある(注4)
なお、これらの費用は高難度の試験を一発合格した場合の金額であり、合格までに年数を重ねるほど、費用もかさんでいく計算になる。

(注3)出典:株式会社Context Japan 料金相場.jp 「司法試験予備試験講座の料金相場と選び方」
https://context-japan.co.jp/ryokin/sihousiken-kouza-470.html

(注4)出典:株式会社レックスアドバイザーズ「公認会計士になるまでにかかる費用は?安くなる方法もあり」
https://www.career-adv.jp/recruit_info/career/764/

加えて、グローバル化がスタンダードになる昨今、海外留学を希望するケースも増えている。
留学する国や地域によって物価が異なるため、授業料や生活費にも幅があり、滞在期間などによっても費用が変わるが、語学留学の場合は50~500万円程度の費用、海外の大学や大学院で学ぶ場合は、1学年で210~530万円程度が必要といわれている(図4)。

図4:海外留学の費用の目安

図4:海外留学の費用の目安

出典:留学ジャーナル「留学の費用」(https://www.ryugaku.co.jp/cost/)をもとに編集部作成

2021年留学ジャーナル調べによる統計。

つまり、社会人になってからのアドバンテージを学生時代により多く身につけておきたいと思えば、教育費もどんどん増えていくのだ。

もう預けるだけでは増えない! 40年で大きく変わった金利・賃上げ状況

この40年間で大学の授業料が大きく増えたばかりでなく、海外留学など、学びの選択肢が広がっているにもかかわらず、親世代の賃金はあまり伸びず、日本の金利は下降の一途をたどり、ゼロ金利近傍が長く続いている。

ゆうちょ銀行の3年以上の定額貯金で金利の変化を見てみると、1975(昭和50)年は8.000%、1985(昭和60)年は5.750%、2022(令和4)年は0.002%となっており、長期にわたり超低金利の時代が続いている。

実際の運用結果とは異なるが、税金などを考慮せず、単純な複利で試算すると、100万円を定期で10年間運用した場合、1975(昭和50)年の年率8.000%では221万9,640円となり121万9,640円増え、1985(昭和60)年の年率5.750%では、177万4,692円になり77万4,692円増える計算となるが、2022(令和4)年の年率0.002%では100万200円と、200円しか増えない計算となる(図5)。

図5:定額貯金の金利推移と100万円を10年定期に入れた場合の試算

図5:定額貯金の金利推移と100万円を10年定期に入れた場合の試算

出典:ゆうちょ銀行「金利一覧」より、いずれも7月の3年以上の定額貯金金利を参照、1973年7月~2022年7月まで 野村證券投資情報部作成資料より抜粋

100万円を1カ月複利で単純計算した場合、税金などは考慮していない。

昭和時代には、子どもの将来を見越して定期預金や学資保険などで教育資金を準備しておくこともできたが、令和の親世代は預貯金だけでは資産を増やすことが困難といえる。

さらに、現在は親の賃金もなかなか増えない状況にある。1975(昭和50)年の民間主要企業の賃上げ率は13.1%だったが、2022(令和4)年の賃上げ率は2.20%と約6分の1に下がっている(図6)。

図6:民間主要企業における春季賃上げ状況の推移

図6:民間主要企業における春季賃上げ状況の推移

出典:厚生労働省「民間主要企業における春季賃上げ状況の推移」をもとに編集部作成

平成15年までの主要企業の集計対象は、原則として、東証または大証1部上場企業のうち資本金20億円以上かつ従業員数1,000人以上の労働組合がある企業(昭和54年以前は単純平均、昭和55年以降は加重平均)。平成16年以降の集計対象は、資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上の労働組合がある企業(加重平均)。

そのため60~70代が子育てをしていた30~40年前に比べると、十分な教育費を準備することが決して容易ではない、厳しい時代を迎えているといえる。

教育費は大きな負担。でも、わが子には多様な学びの機会を!……親世代のホンネ

実際、子どもの教育資金に関する調査結果を見ると、「子どもの教育費の負担を重いと感じる」と答えた人は全体で6割を超え、子どもの就学年齢が上がるにつれ、「教育費の負担を重い」と感じる親が増え、大学生の子を持つ親では8割近くが負担を感じているという結果になった(図7)。

図7:子どもの教育費の負担感について

図7:子どもの教育費の負担感について

出典:ソニー生命「子どもの教育資金に関する調査2022」をもとに編集部作成

2022年1月28~31日、大学生以下の子どもがいる20歳以上の男女1,000人を対象にインターネットリサーチで実施。小数点第2位で四捨五入の丸め計算を行っているため合計が100%とならない場合がある。

しかし、「教育費の負担を重い」と感じている親が多い一方で、「学生時代にはアルバイトをせず学業に専念してほしい」と4割強の親が希望している。さらに、約6割の親が「子どもの海外留学や海外研修は多少費用がかさんでも経験させたい」と回答。「海外で得られる経験は貴重である」と考え、海外留学や研修にかける費用は惜しむまいと思っている親が多いようだ(注5)

(注5)出典:ソニー生命「子どもの教育資金に関する調査2022」

こうした調査結果から、現代の親たちは30~40年前の親たちに比べて資産を増やすことが困難な状況であるにもかかわらず、より多くの教育費を準備する必要があり、それが大きな負担となっていることがわかる。同時に、子どもにはさまざまな経験の機会を与え、しっかりと学んでほしいと願う親心が垣間見える。

このような時代だからこそ、祖父母世代が孫の教育費を支援することで、親となった子どもたちの負担を減らし、孫の学びの機会や将来の可能性を広げることにつながるのではないだろうか。

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野村證券では、お孫さんの年齢や、贈与したい金額などを考慮して、受贈タイミングや資産継承方法など、そのご家族に合わせた資産継承をお手伝いさせていただきます。
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