健康に大切なのは栄養バランスのとれた食事! その上でのサプリメント活用法とは?

2022年06月08日

体に不調や不安を感じたことはないだろうか? 年齢を重ねると、必要な栄養素が不足したり栄養のバランスが崩れ、体調に変化が生じたり、さまざまな症状が体に表れやすい。こうした不安を解消するために、体の健康や生命維持に欠かせない栄養を補う選択肢のひとつとして、「サプリメント」への関心が高まっている。

しかし、サプリメントは本当に効くのだろうかと漠然とした不安を感じる人や、種類が多すぎて何を選んだらよいかわからないという人も多いのではないだろうか。

20年以上サプリメントと向き合ってきた後藤さんにお話を伺いました

「健康を維持するうえで、最も大切なのは栄養バランスのとれた食事。それを補うものとしてサプリメントを上手に活用してほしい」と語るのは、一般社団法人 日本サプリメント協会理事長の後藤典子(ごとう のりこ)さん。毎日の暮らしの中で、自分に合ったサプリメントを選ぶコツや、サプリメントに頼りすぎない上手な活用法を、後藤さんに聞いた。

サプリメントへの関心が高まっている理由は?

多くの人が健康に関心を持つ中で、さまざまなサプリメントが市販されています。まずサプリメントとはどんなものを言うのでしょうか。

サプリメントは直訳すると、「補助するもの」「補完するもの」という意味を持ちます。しかし、サプリメントがアメリカから入ってきた当初は、健康や美容を目的として「痩身」「バストアップ」といったピンポイントな効果を謳ったものが多く、その形状は錠剤やカプセル状のものがほとんどでした。そのため日本人にはサプリメントを薬のようなイメージでとらえられやすいのですが、分類としては「食品」にあたります。

一般的に健康に良い栄養素が含まれた食品を健康食品と言いますが、その中には黒酢や青汁、きな粉なども含まれます。こうした食品は健康のために食事などで積極的に取り入れている方も多いと思いますが、サプリメントも黒酢や青汁などのように、体に良い身近な食品の仲間のひとつとして捉えることが大切です。

また、サプリメントは食品というくくりで法規制にのっとっているため、商品の有効性や機能性に関する表示が禁止されていました。

しかし2015年に、国が「機能性表示食品」の新制度を導入するなど、科学的根拠に基づいて健康食品の機能性をわかりやすく表示する取り組みがすすめられています。まだ十分とは言えないものの、そうした背景も理解しておくと良いのではないでしょうか。

サプリメントが広く私たちの暮らしに取り入れられるようになった理由は何でしょう。

サプリメント市場が拡大している理由として「食環境」「社会環境」「自然環境」の変化があげられます。ファストフードなどの食の欧米化や加工食品の多用、心理的・環境的なストレスの増加などから、現代人には食品に含まれる必須栄養素や抗酸化成分の力がより求められてきています。栄養価の高い食材を積極的に摂ることが理想ですが、それが難しい現代人が、手軽に不足を補う方法としてサプリメントを上手に活用する考えが広まってきているのでしょう。

基本的に、健康を維持するためにはしっかりとバランスよく栄養を摂ることが必要です。ところが、年齢を重ねると消化吸収能力は低下しがちで、個人差はありますが、若い頃のようにたくさんの量の食事が摂れなかったり、食べるものに偏りがあるなどして、栄養のバランスが崩れたり、低栄養状態になりやすいのです。こうして不足してしまう栄養素を補うためにも、特にシニアの方にサプリメントの役割が期待されていると考えられています。

どう選ぶ? シニア世代のサプリメント

健康を維持するためには、栄養素の大切さを知らなければいけないのですね。

人は食べ物の中に含まれる栄養素からエネルギーを得たり体の新しい細胞をつくったりして生命活動を維持しています。その中でも特に重要な五大栄養素が「タンパク質」「脂質」「糖質」「ミネラル」「ビタミン」です(図1)。またそれ以外にも、体の健康を維持する働きを持つ成分がたくさんあります。これらをバランスよく摂ることこそ、健康のためにとても大切なことなのです。

図1:五大栄養素

図1:五大栄養素

ただ、忙しいときには、外食やできあいのお惣菜などを利用することもありますよね。そういった生活が続いてしまうと、栄養価が低くなってしまい、体に必要な「ミネラル」や「ビタミン」が不足してくる可能性があります。栄養バランスを考えた食事を毎日手作りすることや、足りない栄養素をしっかり摂る食事が難しい場合には、サプリメントで補うことで体の調子を整えることが期待できます。

ただし、日常の食事の中で、必要な栄養素を多く含む食品を積極的に摂るに越したことはなく、サプリメントだけに頼ることのないように心がけることも大切です。

サプリメントにはさまざまな種類があって、何が良いのか迷ってしまいます。シニアが選ぶための目安はありますか。

シニア層は、食が細くなったなど、若いころと同じように栄養を多く食品から摂ることが難しくなる傾向にありますので、栄養をバランスよく摂ることや、体の基本的な機能を整えることを主眼に考えた場合には、マルチビタミン、マルチミネラルなど、複数の栄養素が組み合わされたサプリメントから始めてみると良いでしょう。

また、年齢による体調の変化を改善したい場合、たとえば、腸内環境の悪化が気になる方は、改善のため乳酸菌を摂る。最近、腸は免疫力だけでなく脳とも密接に関わっていることもわかってきました。脳の健康を維持するためにも、腸内環境を整えていくことは大切です。あるいは筋力の低下が気になる方であれば、筋力低下を防ぐためにコラーゲンやアミノ酸などのサプリメントを活用する方法が考えられます。筋力の低下は、怪我の原因などにもつながるので気をつけたいですね。

その他にも、症状別にサプリメントを選ぶ、という方法もあります。市販されているサプリメントは、あまりにも種類が多く迷ってしまうかもしれませんが、もの忘れが気になる場合にはDHAやクルクミン、イチョウ葉エキス、目が疲れるならアスタキサンチン、ルテイン、ビタミンA、B1、B2などがあげられます。

図2:サプリメントを選ぶ目安(一例)

図2:サプリメントを選ぶ目安(一例)

出典:後藤さんへのインタビューをもとに編集部作成

サプリメントの効果的な組み合わせなどはあるのでしょうか。

サプリメントの成分はそれ一つで効果をもたらすのではなく、互いに助け合い、連携して効果を発揮するものが多くあります。たとえば骨粗しょう症予防にはカルシウムがすぐに思い浮かぶかもしれませんが、カルシウムは体に吸収されにくく、ビタミンDと一緒に摂取することで、より吸収されやすくなるという特徴があります。サプリメントの商品は、組み合わせや配合によって、より効果が高められるように商品開発されているものもあるので、信頼できる企業の、気になる症状の対策に特化した商品を活用するのも良いでしょう。

サプリメントを利用するときの注意点

サプリメントを購入する際の注意点はありますか。

サプリメントは食品に分類されるため、販売に許可や資格は必要ありません。多くの企業が販売を手掛けており、商品もさまざまです。このため、サプリメントを購入するときは、信頼できる企業と商品を、自分で見分ける目が必要です。

商品を選ぶとき、つい自分が探している成分名だけに目がいきがちですが、まずは、パッケージの裏側にある食品表示を確認してください。原材料名の欄には、原材料と食品添加物の表示があります。原材料名は配合量の多い順から並んでいるので、自分が必要とする栄養成分がどれくらい入っているかを知る目安となります。「摂りたい成分よりも糖質の方が多かった」といった場合もあるので、商品を選ぶ際はぜひチェックしてみてください。

飲むタイミングや注意点はありますか。

サプリメントは基本的には食品なので、これは絶対にダメ、というものはありません。薬と違って用法用量という書き方ができないのですが、表示されている「目安」の量は守り、飲み過ぎには注意してください。飲むタイミングに関しても薬のような決まりはありません。ただ、より効果的に摂取したい場合の目安として、脂溶性(ビタミンA、Dなど)のものは胃にものが入っているときのほうが溶けやすいので食後に、水溶性(ビタミンB群、Cなど)のものは体内に長時間とどまりにくいため回数を分けて飲むと良い、と言われています。

薬との飲み合わせに関しては、特に薬草系やハーブ系のサプリメントは注意が必要です。医薬品成分が強まったり、逆に弱まったりする相互作用が考えられますので、自己判断ではなく医師に相談することが必要です。

サプリメントが効いているか、判断する目安はありますか。

サプリメントは薬ではないので、ピンポイントで効果を上げるものではありません。サプリメントの効果を判断するためには、しばらく飲み続けて実感を得られたか、得られないかの自己判断が重要です。そのためにはまず日常生活の中で、何が不調なのかをご自身で把握したうえで、その症状に効果が期待できそうなサプリメントを選びます。そして1カ月程度継続したうえで、自分が気になっていたことが改善されたかを改めてしっかりチェックするようにしましょう。

たとえば腸内環境を整えるサプリメントであれば、毎朝の便をチェックすればわかります。便の色、硬さなどの良い便が出れば、腸内環境が良くなっているということ。漫然とサプリメントを利用するのではなく、自分の体と会話しながら、自分にあったサプリメントを探していくことが大切です。

サプリメントと上手に付き合うために

消費者がサプリメントを利用するうえで、伝えたいことはありますか?

健康な体を維持するために大切なことは、まず栄養バランスのとれた食事と生活改善です。日々の食事や暮らし方を振り返り、改善できることに取り組んで、それでも難しい場合のステップとして、サプリメントがあります。私はずっと爪が割れることに悩まされていましたが、コラーゲンの原末に、大好きなきな粉と黒ごま、アーモンドを混ぜて毎日摂ることで、改善されました。いわゆるタブレット型のサプリだけでなく、自分に必要な栄養素を摂れる食品の中からサプリメントの役割として摂取できるものを探すということも重要です。

最後に、サプリメントと上手に付き合うためのアドバイスをお願いします。

サプリメントに関心を持つ皆さんに最後にお伝えしたいことは、サプリメントは病気を治すための食品ではないということ。99%改善した、病気が治ったなどという商品広告は違法です。こうした宣伝文句を謳う企業や、極端に高額なサプリメントには注意が必要です。もし体調に不安がある場合は、自分だけで判断するのではなく、きちんと病院に行って検査をしてもらい、不調の原因となる病気はない、治療の必要がないと確認した上で、日常生活を整えるためにサプリメントを活用することを考えてください。その際には自分の生活習慣にも目を向けて、自分の健康に本当に必要なものは何かを考え、食事や運動など改善できることは改善し、それでも難しいときにようやくサプリメントにたどり着いてほしいと、私は考えています。

私自身も、体に合わないサプリメントを摂ってアレルギー反応を起こした経験があり、消費者が正しくサプリメントの知識を得られる環境を整えたいと考え、医師の方々にも協力いただいて、日本サプリメント協会を立ち上げたという経緯もあります。ですので皆様も、消費者として正しい知識を持って、信頼できる商品を探して、サプリメントと上手にお付き合いをしてほしいと願っています。


【野村證券からのコメント】
まずは、食事や生活習慣を見直した上で、サプリメントの上手な活用も考え、健康寿命を延ばしましょう。充実したセカンドライフを実現するためにも、健康寿命と資産寿命を共にのばすことが大切です。

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プロフィール

後藤 典子(ごとう のりこ)

ジャーナリスト。一般社団法人 日本サプリメント協会理事長。
同志社大学文学部を卒業後、編集プロダクションを経て、ジャーナリストに。2001年、NPO日本サプリメント協会を設立し、情報プラットフォームを運営する。栄養・サプリメントに関する書籍を発刊。また雑誌・新聞において記事・コラム連載多数。現在、日本サプリメント協会を通し健康リテラシーの向上のための情報活動を行っている。