2026.02.02 NEW
衆院選 自民大勝・辛勝・敗北の3つのシナリオで「金利」を予想 野村證券・宍戸知暁
衆院選の投開票日(2月8日)が近づいています。今回は、(1)自民党大勝(自民党が単独で過半数を確保)、(2)自民党辛勝(自民党は単独過半数に届かないものの、日本維新の会との連立で与党過半数を確保)、(3)自民党敗北(自民党が議席を減らし、日本維新の会との連立を含めても与党過半数を割り込む)の3つのシナリオに分け、金利の反応に関する見方を整理しました。野村證券の宍戸知暁シニア金利ストラテジストが解説します。
円金利市場では消費税減税は実現しないと考える参加者も多い
円金利市場は、①高市早苗首相が衆院解散・総選挙を検討しているとの報道、②自民党が食料品に対する消費税減税を公約に盛り込むことを検討しているとの報道、のいずれにも金利上昇で大きく反応しました。10年国債利回りは、これらの報道が出る直前の2.09%から、消費税減税の報道が出た2営業日後の1月20日には2.35%まで約25ベーシスポイント上昇しました。この段階の円金利は、自民党の大幅議席増と消費税減税の実現可能性を、おおむね織り込んだ水準とイールドカーブ(利回り曲線)の形状だったと判断しています。
もっとも、その後は金利が低下し、10年国債利回りは1月29日時点で2.25%となっています。これは、自民党大勝や消費税減税を織り込む動きが、20日時点から後退した可能性を示唆します。投資家との会話などから受ける印象でも、消費税減税は実現しないとみる円金利市場参加者は多いと考えられます。
(出所)Bloombergより野村證券市場戦略リサーチ部作成
与党過半数割れのサプライズなら大幅金利低下へ
衆院選の結果に対する円金利市場の初動は、与党が過半数割れとなった場合、大幅な金利低下が想定されます。イールドカーブはブル・フラット(超長期利回り低下を主因とする平たん)化する公算が大きいです。過半数からの下振れ幅が大きいほど、金利低下とフラット化の幅も大きくなると予想されます。
選挙後数ヶ月という時間軸では、高市首相が辞任した場合の後継総裁が誰になるか、連立与党の枠組みが変わるのか変わらないのか、といった点で金利の方向性は大きく変わり得ます。不確実性の高まりを背景に、ボラティリティー(変動率)は高止まりしそうです。
与党辛勝では金利は一段と上昇か
与党が小幅に議席を増やし、自民党単独では過半数に届かないケースでは、金利は上昇すると予想します。高市首相は続投するものの政治基盤は弱まるため、支持固めを狙って消費税減税を含む拡張的な財政政策を採用する可能性が高まる、との見方が円金利市場では優勢とみられます。
政治・政策の不透明感が高い状態が続くことで、中期的にも金利上昇圧力が強い局面が続きそうです。イールドカーブはスティープ(急勾配)化しやすいと予想します。ただし、円安圧力が顕著に強まれば、日銀の利上げ加速やターミナルレート(利上げの最終到達点)期待の一段の上昇を通じて短期年限の金利にも上昇圧力がかかり、イールドカーブが平行に上方シフトする可能性もあります。
与党大勝の場合はいったん様子見となり消費税減税の実現可否次第か
自民党が単独過半数を回復するケースでは、金利はいったん横ばい圏の動きになると見込みます。高市首相の党内基盤が強まり、消費税減税など拡張的な財政政策を推進しやすくなる可能性は、引き続き円債市場で意識されます。一方で、首相が有権者に向けた「人気取り」を急ぐ必要性は低下します。与党が過半数割れしている参院では、国民民主党など野党の要求を全面的に受け入れずとも、野党側が予算審議などで協力する余地が広がる可能性もあります。円金利市場では、与党大勝の方が与党辛勝よりも財政規律が守られやすいとの見方が優勢、もしくは少なくとも有力とみられます。
中期的には、実際に財政規律が確保されるのか、あるいは一段と拡張的な政策が実行されるのかで金利の反応が決まります。特に、消費税減税が実現に向かうのか、棚上げとなるのかが円金利に大きく影響するとみられます。実現に向かう場合は金利が上昇し、円安が進むとの見方も相まって、イールドカーブは平行に上方シフトしそうです。棚上げの場合は金利低下とブル・フラット化が想定されます。
- 野村證券 市場戦略リサーチ部 シニア金利ストラテジスト
宍戸 知暁 - 2000年野村総合研究所入社。2003年からニューヨークの野村総研アメリカおよび米国野村證券で米国マクロ経済の分析に従事。2006年からマクロ経済分析を基礎とした米国債券市場の分析・予測を担当し、その後は米株式市場の分析およびマルチアセット・ストラテジーを担当。2022年から2年間、財務省理財局国債業務課で市場分析官として勤務し、海外市場および円金利市場の分析に従事した。2023年6月から円金利ストラテジー担当。 ファンダメンタルズ分析および中銀ウォッチを基本に、投資家の売買動向を含む市場需給見込みも加味した予測作成およびストラテジー構築を心掛けている。
※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。
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