2026.04.02 NEW
日経平均株価1,276円下落 トランプ大統領演説受けて楽観論後退、日本経済への影響は? 野村證券・岡崎康平
撮影/タナカヨシトモ(人物)
トランプ米大統領は日本時間4月2日、米国民向けに演説しました。イランが保有する核兵器やミサイルが米国への脅威になっていると主張し、米国・イスラエルによるイラン攻撃の正当性を主張しました。2日の東京株式市場は日経平均株価が上昇して始まったものの、演説を受けて下落に転じ、下げ幅は1,400円超にまで広がる場面がありました。トランプ大統領の発言を日本株市場はどう受け止めたのでしょうか。野村證券チーフ・マーケット・エコノミストの岡崎康平が解説します。

イラン攻撃の正当性を主張したトランプ大統領
- トランプ大統領の演説のポイントは何でしょうか。
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株式市場の参加者の間では「トランプ大統領が停戦につながる新たな情報を公表する」との思惑が広がっていました。しかし実際には、イラン問題を巡る過去の米政権への不満を表した上でイラン攻撃の正当性を主張し、「米国民への脅威を排除している」というアピールにとどまりました。また、エネルギーを巡り米国がすでに中東依存から脱却している点にも言及し、戦闘継続への強い意欲を示しました。まさに「力による平和」の追求という、トランプ大統領の方針に沿った演説でした。
- 停戦を巡る報道もありましたが、実際には難しいのでしょうか。
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停戦か継戦か、どちらに転ぶのかを予測するのは、非常に難しいです。トランプ大統領が「停戦に向けた合意が成立しない場合はイランの発電所などを攻撃する」などと述べる一方、イラン外務省は「米国とは直接交渉していない」としており、両国の間で交渉が進んでいるようには見えません。仲介役としてイラン周辺国が名乗りを上げ、米国ではバンス米副大統領が合意に向けた交渉役として取りざたされていますが、確実とは言えません。
加えて、11月には米国で中間選挙、イスラエルでも秋に総選挙が控えています。勝ち負けの線引きは難しいものの、両国とも、少なくとも「イランに負けた」という事実を抱えて選挙戦に突入するのは避けたいはずです。40年以上にわたりイランとの対立が続くイスラエルが強硬姿勢を貫き続ける可能性もあります。イラン攻撃がどう終結を迎えるのか、見通しにくいというのが本音です。
楽観ムードしぼむ株式市場
- 株式市場は今回の演説をどう受け止めたのでしょうか。
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トランプ大統領は、停戦への市場の期待を高めるような印象を持たせないばかりか、さらに強力な攻撃をする可能性すら示唆しました。そのため市場を覆っていた楽観ムードが一気にしぼみ、ここ数日の間に株価が上昇していた銘柄ほど、大きく値下がりしている印象です。ディフェンシブとされるセクターで値下がりが小さい点などを踏まえると、リスク回避的な動きも強まっているのでしょう。
株式市場は当面、イラン情勢や原油価格の動向をにらみ、上下に大きく振れやすい相場が続くのではないでしょうか。中東情勢の緊迫化が続く状況ではエネルギー関連株が恩恵を受けやすいかもしれません。しかし、エネルギー関連株以外に目を向けると、リスク回避が強まる局面で選好されやすい内需株は、原油高に伴う円安・米ドル高による輸入物価の上昇が向かい風となります。総じて、資金の逃避先に悩む展開が続くと考えています。
財政拡大で高まる金利上昇リスク
- イラン情勢の深刻化は、日本の政策に影響がありそうでしょうか。
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日本政府は国内景気の下支えに向けて、物価高騰と供給面での制約の両方をにらみ、対策を打ち出していく必要があるでしょう。原油供給が途絶するならば、その影響は、対面サービスがストップしたパンデミック(新型コロナウイルスの感染拡大)時よりも大きくなるかもしれません。インフレがさらに加速する可能性もあります。そのため、ボトルネックとなるエネルギー対策や影響が大きい企業への資金繰り対策にしぼった予算が4~5月にかけて編成されるのではないでしょうか。
また、4~5月には、与党が「戦略3文書」(次期防衛予算を規定する文書)の改定に関する提言を公表する見通しで、防衛予算も注目されやすい時期です。また、5~6月にかけては高市早苗首相が重点投資対象と位置付ける「戦略17分野」に対する予算措置も具体化されます。夏前には、消費減税や給付付き税額控除に係る国民会議が中間とりまとめを行う予定です。財政支出に関する話題がさまざまな角度から断続的に発表されるため、インフレ高進への警戒感も相まって、債券市場では国債のイールドカーブ(利回り曲線)が上振れる、つまり長期金利が上昇するリスクが高まりやすいでしょう。
難局を乗り切るリスク分散
- 個人投資家はこの難局をどう乗り越えれば良いでしょうか。
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中東情勢と原油価格を巡る先行き不透明感は、しばらくの間続くかもしれません。そのため、トランプ大統領の発言を含め、海外のニュースなどにしっかりと目配りすることが大切です。日本株市場については当面、値動きの大きな展開が見込まれます。しかし、原油高はエネルギー関連株への支援材料となり、金利上昇は銀行株の収益改善期待を高めるなど、難局を乗り切れる可能性がある業種や銘柄はあります。リスク分散をしっかりと進めながら相場に向き合うのが良いでしょう。
- チーフ・マーケット・エコノミスト
岡崎康平 - 2009年に野村證券入社。シカゴ大学ハリス公共政策大学院に留学し、Master of Public Policyの学位を取得(2016年)。日本経済担当エコノミスト、内閣府出向、日本経済調査グループ・グループリーダーなどを経て、2024年8月から、市場戦略リサーチ部マクロ・ストラテジーグループにて、チーフ・マーケット・エコノミスト(現職)を務める。日本株投資への含意を念頭に置きながら、日本経済・世界経済の分析を幅広く担当。共著書に『EBPM エビデンスに基づく政策形成の導入と実践』(日本経済新聞社)がある。
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