2026.04.20 NEW
中東リスク後退なら、為替市場は再び米ドル安トレンドに回帰か 野村證券・後藤祐二朗
撮影/タナカヨシトモ(人物)
中東情勢は依然として不確実性が高いものの、NY原油先物は調整し、金融市場でも世界的に株価が反発するなど、市場心理は安定しつつあります。為替市場でも、2026年3月に見られた米ドル全面高の流れに変化が生じ、米ドル円は一時158円割れまで調整しました。野村證券チーフ為替ストラテジストの後藤祐二朗は、中東情勢がさらに落ち着けば、為替市場は再び米ドル安基調に向かう公算が大きいとみています。以下、詳細を説明します。

米・イランの和平協議への期待で米ドル安に
当面の為替相場も中東情勢次第の展開が続くと考えられますが、米国によるイランのインフラへの大規模攻撃が回避され、最悪期を脱したとすれば、為替市場では米ドル安トレンドに回帰しやすいとみられます。特に、原油価格の調整が明確になれば、円の買い戻し圧力が強まる公算が大きいです。米ドル円の上値余地も限られやすくなるでしょう。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成
FRBの利下げバイアスが米ドル安圧力に
原油価格が上昇しているものの、3月時点の米指標を見る限り、インフレ圧力は抑制されており、FRB(米連邦準備理事会)が利上げに踏み切る必要性は乏しい状況です。インフレ連動債から算出される期待インフレ率を見ると、1年先のインフレ期待は中東情勢の悪化を受けて一時急上昇しましたが、5~10年先の上昇は限定的です。原油先物市場が明確なバックワーデーション(期近物が期先物より高い状態)となっていることもあり、中長期的なインフレ期待の上昇は限られるでしょう。
また、2022年のウクライナ紛争時には、米家計が大幅な超過貯蓄を抱えていたため、原油高でも消費は維持されやすい状況でしたが、今局面では原油高を受けて消費は減速しやすいとみられます。エネルギー以外へのインフレ圧力の波及も限られやすいでしょう。インフレ警戒からFRBの利下げ時期は後ずれが予想されますが、利上げ姿勢に転じるハードルは高いと考えられます。
市場の米政策金利の織り込みを見ると、2026年中の利下げ期待は大きく巻き戻された一方、2027年に向けた利下げ期待は維持されており、米ドルの上値を抑えています。米国は日本や欧州に比べて中東発の原油高への耐性が強いといえますが、中東情勢の改善でFRBの利下げ再開機運が強まれば、米ドルへの下押し圧力は一段と強まりそうです。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成
「米ドル離れ」傾向は定着か
2月のTIC(主要外国保有者統計)データでは、海外投資家の対米証券投資は1,011億米ドルと前月(504億米ドル)から回復しましたが、米国債投資は20億米ドルと小幅な買い越しにとどまっています。本邦投資家による米中長期債の売り越しも、2月には3.6兆円に達していました。中長期的なテーマとして、「米ドル離れ」への注目は続きそうです。特に、米国によるイラン攻撃の前後で欧州との関係が悪化し、欧州が安全保障および経済面で「米国離れ」に向かう機運は一段と強まった印象もあるため、投資における「米ドル離れ」の機運も維持されやすいでしょう。中東諸国などの新興国による「米ドル離れ」にも注意が必要です。
新規の米ドルショートポジション構築余地
2月末時点では、為替市場のポジションは米ドルショートに傾いており、中東情勢の悪化を受けたポジション調整が米ドル全面高につながりました。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成
特に対ユーロの米ドルショート(売り)ポジションが大きく巻き戻されましたが、足元ではすでに対ユーロでも小幅な米ドルロング(買い)に転じており、ポジション調整に伴う米ドル高圧力はいったん一巡したといえます。市場の焦点が中東情勢から移る場合、新規の米ドルショートポジションが構築されやすい状況にもあります。
- 野村證券 市場戦略リサーチ部 チーフ為替ストラテジスト
後藤 祐二朗 - 為替相場のリサーチ・ストラテジーを担当。8年半にわたるニューヨーク・ロンドン駐在時には海外ヘッジファンド向けを中心としたドル円ストラテジー、日米欧の資本フロー分析、日本及び欧州の金融政策及びマクロ分析を担う。2002年に野村総合研究所に入社、2004年に野村證券への転籍を経て、2011年以降は海外拠点にて外国人投資家向けの情報提供を中心に活動。2019年8月より現職。
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