2026.04.16 NEW
中東情勢悪化で「有事の金(ゴールド)」の価格が下落した理由 今後、金価格を押し上げる2つの材料とは? 野村證券・髙島雄貴
撮影/タナカヨシトモ(人物)
中東情勢の悪化で原油価格は上昇した一方、金(ゴールド)価格は下落しました。地政学リスクが高まった局面で、なぜ「有事の金」とも呼ばれる金価格は下がったのでしょうか。野村證券経済調査部・市場戦略リサーチ部エコノミストの髙島雄貴が金価格の下落要因や今後の見通しについて解説します。

3月の金価格下落要因は米ドル高と米金利上昇
- 2026年2月28日の米・イスラエルによるイランへの攻撃以降、金価格は急落する場面がありました。一般的に地政学リスクが高まると、「有事の金買い」需要が高まると言われていますが、今回はなぜ金の価格が下落したのでしょうか。
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背景には、イラン情勢悪化によるエネルギー高を受けた米ドル高があります。米ドル高が進行すると、米ドル建て金価格の押し下げ材料になります。加えて、エネルギー価格の急騰は物価を押し上げる圧力となる懸念があることから、米金利が上昇しました。金利のつかない金の投資妙味が相対的に弱まり、3月の金価格は下落したと考えています。
(注)データは日次で、直近値は2026年4月15日。
(出所)ブルームバーグより野村證券経済調査部・市場戦略リサーチ部作成
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また2026年1月30日~2月2日の金価格の急落後(金、銀などコモディティーが全面安となった背景は? 金価格は上昇トレンド継続か)、金への押し目買いが旺盛になっていたことも、3月の値動きの荒い展開につながった可能性があります。2月にはイラン情勢の悪化や、トランプ米大統領の関税引き上げ発言などを受けて、「有事の金買い」需要は再び堅調となり、3月に入るとニューヨーク金中心限月先物価格は一時5,400米ドル/トロイオンスを突破しました。その後、原油高に伴う米ドル高や米金利上昇によって金価格は急落し、一時4,100米ドル近くまで下落しました。
(注)データは日次で、直近値は2026年4月15日。金価格はLBMA金価格(午後)。
(出所)ブルームバーグより野村證券経済調査部・市場戦略リサーチ部作成
中国人民銀行の3月の金準備増加量は拡大
- 今後の金価格の見通しについて教えてください。
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2026年3月には、金価格はエネルギー価格上昇と逆行する形で下落しましたが、近年の金価格押し上げ材料となってきた①新興国中銀による金買い増加、②第2次トランプ政権の関税政策等によって景気・金融市場が混乱する懸念へのヘッジ、という2つの材料は残っていると考えています。
①については、近年、地政学リスクへの対応や外貨準備の多様化などを目的に、新興国を中心に中銀による金準備の大幅な積み増しが続いています。新興国の中では、ポーランド、アゼルバイジャンなどの中央銀行による金買いの動きが目立ちました。今回のイラン情勢を鑑みて、新興国は米ドル離れや国際通貨である金を買う意欲をより高めた可能性があります。
金の準備を積み増している中央銀行の中で、存在感の大きい中国人民銀行の動きも注目されています。2025年後半から2026年2月にかけて、中国人民銀行の金準備増加量は小幅な増加にとどまっていましたが、中国人民銀行の3月の金準備増加量は16万トロイオンスと、2月の3万トロイオンスから大幅に増加しました。金価格が下落した際は、新興国中銀の金買いが加速しやすく、価格が下支えされやすいことが改めて示されたと言えます。
(注) LBMAはロンドン貴金属市場協会。LBMA金価格(午後)は月間平均値。中国人民銀行金準備残高の前月差は2015年7月から掲載。
(出所)中国人民銀行、LSEG Datastreamより野村證券経済調査部・市場戦略リサーチ部作成
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②については、2025年の第2次トランプ政権誕生以降、貿易上の混乱などで国際的な枠組みから米国が離脱する機運が高まり、米ドル離れが加速し、金も受け皿の一つとなってきた可能性があります。今回の中東情勢の悪化を受けて、改めて、トランプ政権下において地政学リスクが高まりやすい点も、金融市場参加者は意識することになったでしょう。足元では原油高による米ドル高進行が目立ちましたが、再び米ドル離れが加速した場合には、金価格の押し上げ材料になると見込まれます。
エネルギー価格の高騰が落ち着いた後には、これら2つの材料を背景に、金価格は今後も上昇しやすいと予想しています。
- 野村證券 経済調査部・市場戦略リサーチ部 エコノミスト
髙島 雄貴 - 2018年野村證券入社。2023年6月まで日本経済担当エコノミスト。コモディティー調査を担当。原油をはじめとして、天然ガス、金、非鉄金属、穀物など、幅広い商品の市況を分析し、先行きの見方を提供。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。現在、日経ヴェリタスの「コモディティー・インサイト」に定期寄稿中。
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