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2026.04.24 NEW

波乱の中東情勢で迎える決算 今の株価が高すぎるとは言えない理由 野村證券・小髙貴久

波乱の中東情勢で迎える決算 今の株価が高すぎるとは言えない理由 野村證券・小髙貴久のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

中東情勢がまだ混乱しているなか、日本企業の決算発表が本格化します。一方、米・イランの停戦協議が報道された後、日経平均株価は2026年4月23日に一時6万円を超えるなど、株高基調となっています。企業業績から見て今の株価はどのような水準なのでしょうか。野村證券投資情報部シニア・ストラテジストの小髙貴久が解説します。

波乱の中東情勢で迎える決算 今の株価が高すぎるとは言えない理由 野村證券・小髙貴久のイメージ

新年度の会社見通しに注目

日本企業の決算発表が本格化します。東京証券取引所は、決算発表における重要資料の決算短信等の開示について、決算期末(今回は3月末)から30日以内(翌月末まで)の開示が望ましく、遅くとも45日以内に開示することを要請しています。これに当てはめると、5月15日が45日目に当たり、その時点まで「決算発表シーズン」として、主要企業の決算発表が株式市場で注目されることになります。

2月28日に、米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始して以降、原油価格の上昇による世界経済への影響が懸念されています。最も社数の多い3月決算企業では、今回発表される2025年度の実績も重要ですが、株式市場は新年度、ですから2026年度の企業業績をどのようにみるかに、より関心が高いと言えます。つまり、企業が決算発表時に開示する新年度の会社見通しを注目することになるでしょう。

アナリストも、経済や市場環境を分析し、業績予想を開示しています。こちらは、野村證券が網羅している主要企業群のラッセル野村ラージキャップについて、2026年度の経常利益の見通しを業種別に示したものになります。

ラッセル野村ラージキャップ経常増減益率(2026年度)

波乱の中東情勢で迎える決算 今の株価が高すぎるとは言えない理由 野村證券・小髙貴久のイメージ

(注)業種は2026年4月21日時点の経常増減益率の順で並んでいる。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成

関心が高いのは、どのような業種の経常利益見通しが優勢かだけでなく、イラン情勢緊迫化後に業績予想はどのように修正されたか、という地政学リスク、原油価格上昇の織り込み方にもあるとみます。

2026年度のラッセル野村ラージキャップの経常増減益率は、イラン攻撃前(2月27日時点)の前年度比+10.0%から実は同+13.2%(4月21日時点)に上振れています。

イラン攻撃前と後で業績予想が変わった業種は

業種別にみると、イラン攻撃前と後で、経常増減益率見通しがあまり動いていない業種がほとんどです。

特徴的な業種としては、右から2番目の化学が大きく上振れています。こちらに石油元売り企業が含まれています。原油価格が業績予想を大きく左右する業態であり、今回の原油価格の変動を受けて、先行して原油価格の前提を見直したことで、企業の決算発表を待たずに業績予想に反映させたことが背景にあります。

大きく変化しているのは一番左の通信で、同セクターに含まれる投資を積極的に行っている一部企業について、投資先の企業価値上昇が反映されてマイナス幅が縮小しているとみられます。

そのほかでは、左から3番目の運輸の経常利益の伸びが低下していますが、空運業で中東地域の混乱や燃料費上昇に伴う、減便や航空コストの増加などが反映されたとみられます。

この他は特に目立った業績の変更はなく、イラン情勢の緊迫化や原油価格上昇の影響の現時点での織り込みは限定的と判断されます。決算発表と同時に各企業が2026年度の業績見通しを開示する中で、同問題を理由に目線の低い、保守的な会社見通しが発表される可能性があります。その結果、アナリストは業績予想を下方修正するかもしれません。

しかし、先行して発表されている、海外の半導体関連企業の決算は良好でした。日本における企業業績についても、鉄鋼・非鉄に含まれる電線や光ファイバー、コネクターなどのAIインフラ投資に必要とされる非鉄業種や、同じく、AIインフラの構築に必要な半導体や電子部品などの製品を製造する企業が含まれる電気・精密などは高い利益成長が見込まれており、原油価格上昇によっても製品需要への影響は起きにくいとみられます。

日経平均株価が史上最高値を更新したときの予想PERは16.6倍

イラン攻撃直前の2月27日時点の予想PER(株価収益率)は19.3倍ありました。その後の株価急落で予想PERは低下し、株価が復調した4月13日時点で予想PERは16.3倍です。2023年に東京証券取引所が資本コストや株価を意識した経営を企業に求めた、いわゆる「東証要請」以降、予想PERはおよそ16~18倍のレンジ内で推移しています。

日経平均株価とEPS(1株当たり利益)、予想PER(株価収益率)

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(注)株価、EPS、PERの直近値は2026年4月13日時点。なお、予想12ヶ月先EPSは、今期の残存期間に応じて、今期/来期の予想EPSを期間按分したもの。予想は東洋経済新報社。棒グラフのEPSは2024年度以前が実績で、このうち2002年度と2008年度は赤字。2025年度以降は予想。
(出所)日本経済新聞社、東洋経済新報社、野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成

4月22日に日経平均株価が史上最高値を更新したときの予想PERは16.6倍です。予想PER低下の背景にはEPS(1株当たり利益)の上昇があります。予想PERにみるバリュエーションは、利益に対して株価が高すぎるとは言えず、むしろ、今後の利益の下方修正といったリスクをすでに一定程度織り込んだ株価になっているとみることもできます。

日本企業の2026年度の業績見通しについて、予測の解像度が上がるのは決算発表後であることは間違いないでしょうが、AIビジネスの拡大をどれだけとらえて業績の加速につなげられるかもポイントであり、イラン情勢の不透明さや原油価格上昇に悲観一色になる必要はないかもしれません。

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野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト
小髙 貴久
1999年野村総合研究所入社、2004年に野村證券転籍。日本の経済・財政・金融動向、内外資本フローなどの経済・為替に関する調査を経て、2009年より投資情報部で各国経済や為替、金利などをオール・ラウンドに調査。現在は日本株に軸足を置いた分析を行う。2013年よりNomura21Global編集長を務める。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

 
   
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