Research

野村リサーチ

 

2026.04.30 NEW

FOMC通過、利下げ再開には慎重姿勢も 米ドル円は160円突破、実弾介入の可能性 野村證券・後藤祐二朗

FOMC通過、利下げ再開には慎重姿勢も 米ドル円は160円突破、実弾介入の可能性 野村證券・後藤祐二朗のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

FRB(米連邦準備理事会)は、2026年4月28〜29日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催し、政策金利の据え置きを決定しました。一方で、3人の地区連銀総裁は、緩和バイアスを織り込んだ文言に反対しました。パウエル議長は、次回会合でガイダンスを変更する可能性に言及しました。野村證券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、これについて、FRB内で利下げ再開に慎重な姿勢が強まっている可能性を示唆するものだと指摘しています。以下、詳しく見ていきます。

FOMC通過、利下げ再開には慎重姿勢も 米ドル円は160円突破、実弾介入の可能性 野村證券・後藤祐二朗のイメージ

FRBは予想通り据え置きも反対票は増加

FRBは市場予想通り、政策金利を据え置きました。ミラン理事は引き続き25bp(ベーシスポイント)の利下げを主張して反対票を投じました。これに加え、3人の地区連銀総裁(クリーブランド連銀のハマック総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁、ダラス連銀のローガン総裁)も、声明文に盛り込まれた将来的な利下げ再開を示唆する文言に反対票を投じました。「現時点で緩和バイアスを盛り込むことには賛成しなかった」とされています。

声明文の文言修正は限定的でしたが、中東情勢を受けた不確実性の高さと、世界的なエネルギー価格高騰によるインフレの高止まりが示されました。

パウエル議長は金利ガイダンスの次回会合での変更の可能性に言及

パウエル議長は「米経済は堅調なペースで拡大している」とし、「短期的には高いエネルギー価格がインフレを押し上げる」と述べました。また、「労働市場がインフレの要因になっているとは見ていない」「関税によるインフレは、今後2四半期にわたって鈍化する」「現行の政策スタンスは、様子見を続ける上で非常に適切な水準だ」とも発言しました。これらの発言からは、利上げを急ぐ姿勢はうかがえません。

ただ、ホルムズ海峡の開放が見通せない中で、「金利見通しに関するガイダンスは、次回会合で変更される可能性もあり得る」と発言しました。これを受け、市場はFRBの段階的なタカ派化(金融引き締めに前向き)への警戒を強める可能性があります。

ウォーシュ議長体制は難しい船出に

FOMCに先立ち、米上院銀行委員会はウォーシュ元理事のFRB議長指名を賛成多数で承認しました。5月15日のパウエル議長の任期切れ前に、本会議で採決が行われる見通しとなりました。パウエル議長は「これが議長として最後の記者会見」と発言しており、6月FOMCはウォーシュ体制での初会合となる見込みです。

トランプ米大統領は、記者団からウォーシュ次期議長が就任後に利下げできるかを問われ、「そうすべきだ」と発言し、利下げ圧力を維持しています。一方、パウエル議長は記者会見で、当面は理事として残る意向を示しました。今回の会合で3人が金利ガイダンスに反対票を投じたことは、ウォーシュ体制下でハト派シフトを進めるハードルの高さも示しています。政治的な圧力とFRBの独立性への警戒は続きやすく、債券市場の不安定化要因となりそうです。

原油価格上昇が米債利回りと米ドルの上昇圧力に

利下げバイアスへの反対票や、パウエル議長による次回会合でのガイダンス変更の可能性への言及を受け、米債利回りは上昇し、為替市場では米ドル買いが進みました。ホルムズ海峡封鎖の長期化への警戒から原油価格の上昇圧力が再び強まっており、FOMC前の時点でFRBへの利下げ期待は後退していましたが、市場は足元で2027年に向けた利上げの可能性を再び織り込み始めました。

先物市場における米政策金利織り込みと米ドル指数

FOMC通過、利下げ再開には慎重姿勢も 米ドル円は160円突破、実弾介入の可能性 野村證券・後藤祐二朗のイメージ

(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

もっとも、米債利回りや米ドル相場は原油価格との連動性を強めています。中東情勢に改善が見られれば、FRBへの利上げ期待も再び消失し、米債利回りの低下と米ドル安圧力が再燃する公算が大きいとみられます。目先は中東情勢次第の展開が続きそうです。

原油価格と米ドル円相場

FOMC通過、利下げ再開には慎重姿勢も 米ドル円は160円突破、実弾介入の可能性 野村證券・後藤祐二朗のイメージ

(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

トランプ大統領は、イラン側の「相互にホルムズ海峡を開放する」との提案を拒否し、核開発で合意が得られるまではホルムズ海峡封鎖を継続する意向と報じられています。仲介役のパキスタンのシェリフ首相は、イランのアラグチ外相が「近いうちに前向きな回答を出す」と発言したとしていますが、イラン側が核開発で妥協するかは不確実です。目先は、封鎖継続と原油高止まりのリスクを意識せざるを得ません。原油価格の再上昇により、短期的には米ドル高止まりが想定されますが、中東情勢に改善の兆しが見られれば、米ドル安圧力が急速に強まる可能性も残る難しい局面です。

中東情勢と本邦当局の対応が米ドル円相場の焦点に

原油価格と米債利回りの上昇を受け、米ドル円相場は160円を上抜け、一時160円47銭と2024年7月以来の高値を付けました。日本銀行の4月会合前後に見られた円安加速は回避されましたが、中東情勢の改善が見られるまでは、米ドル円も上昇圧力の強い展開が続きそうです。

米ドル円が160円台まで上昇したことで、本邦当局の介入姿勢が焦点となります。片山さつき財務相は4月28日午前の閣議後会見で、為替について「かねてから断固たる措置に言及」「24時間対応」と発言し、ゴールデンウイーク中でも介入が可能との姿勢を示しています。介入発動に向けた距離感を測る上では、「無秩序」といった表現やレートチェックが見られるかが注目されます。これまでの口先介入の水準を踏まえると、2024年に記録した高値近辺の161〜163円程度で、実際の介入の可能性を意識する必要があります。

FOMC通過、利下げ再開には慎重姿勢も 米ドル円は160円突破、実弾介入の可能性 野村證券・後藤祐二朗のイメージ
野村證券 市場戦略リサーチ部 チーフ為替ストラテジスト
後藤 祐二朗
為替相場のリサーチ・ストラテジーを担当。8年半にわたるニューヨーク・ロンドン駐在時には海外ヘッジファンド向けを中心としたドル円ストラテジー、日米欧の資本フロー分析、日本及び欧州の金融政策及びマクロ分析を担う。2002年に野村総合研究所に入社、2004年に野村證券への転籍を経て、2011年以降は海外拠点にて外国人投資家向けの情報提供を中心に活動。2019年8月より現職。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

 
   
手数料等およびリスクについて

当社で取扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、年金保険・終身保険・養老保険の場合は商品ごとに設定された契約時・運用期間中にご負担いただく費用および一定期間内の解約時の解約控除、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引をご利用いただく場合は、所定の委託保証金または委託証拠金をいただきます。信用取引、先物・オプション取引には元本を超える損失が生じるおそれがあります。証券保管振替機構を通じて他の証券会社等へ株式等を移管する場合には、数量に応じて、移管する銘柄ごとに11,000円(税込み)を上限額として移管手数料をいただきます。有価証券や金銭のお預かりについては、料金をいただきません。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。

 
 
   
株式の手数料等およびリスクについて

国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。国内REITは運用する不動産の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。国内ETFおよび国内ETNは連動する指数等の変動により損失が生じるおそれがあります。国内インフラファンドは運用するインフラ資産等の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。
外国株式(外国ETF、外国預託証券を含む)の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。
詳しくは、契約締結前交付書面や上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。

 
  • EL_BORDEをフォローする
  • Pick up

    ページの先頭へ