2026.05.19 NEW
ナスダック最高値更新 それでもPERで見ると割高とは言えない? 野村證券・村山誠
撮影/タナカヨシトモ(人物)
米国株式市場は中東情勢を巡る混乱でリスク回避姿勢が強まりましたが、その後、AI需要の拡大期待を背景に半導体やIT大手がけん引する展開が続いています。ハイテク株比率が高いナスダック総合指数は2026年5月13日に史上最高値を更新するなど、米国の主要株価指数は最高値圏で推移していますが、AIブームによる過熱感が再び高まっているのでしょうか。野村證券投資情報部シニア・ストラテジストの村山誠が解説します。

株高でもPERが大きく上昇していない理由は
- 中東情勢の悪化で世界的に株式市場は調整しましたが、その後、AI需要拡大期待などから米国株は急回復し、米国の主要株価指数は最高値圏で推移しています。足元の米国株式市場では、過熱感が高まっているのでしょうか。
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足元の「AIブーム」を背景とした株価上昇局面と過去の1990年代後半から2000年代初頭にかけて、株価が急上昇した「ITバブル期」と比べてみましょう。下の図表の通り、ITバブル期は1995年初、AIブームは2023年初を100とした指数ベースで比較してみると、同じような軌道を歩んでいることが分かります。
(注)データは日次で、「ITバブル期」は1995年初を100とする2002年末にかけての指数。「AIブーム」は2023年初を100とする指数で、直近値は2026年5月7日。
(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成
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次に数値が大きいほど利益に対して株価が相対的に割高であることを示すPER(株価収益率:株価が年間1株利益の何倍で評価されているかを示す指標)の観点から、今回のAIブームを見ていきましょう。今回の局面では、ナスダック総合指数のPERは概ね25倍程度を中心に推移しており、PERの水準が一段と上昇したITバブル期4年目(1998年)とは、異なる動きをしていることが分かります。
(注)データは月次で、ITバブル期は1995~2002年末にかけて、AIブームは2023年初からで、直近値は2026年5月1日。PERの基となる1株当たり利益は、ITバブル期は各月末時点におけるLSEG集計による12ヶ月実績EPS、AIブーム期は各月末時点におけるLSEG集計による12ヶ月先予想EPS。ナスダック総合指数の12ヶ月先予想EPSは2010年2月から公表。利益拡大局面では、予想EPS基準のPERの方が、実績EPS基準のPERよりも低くなる傾向があり単純比較には注意が必要。
(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成
- 今回のAIブームでは、株価は上昇しているが、PERの水準が大きく上昇していないのはなぜでしょうか。
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ITバブル期に比べて、EPS(1株当たり利益)の拡大ペースが加速していることがPERが大きく上昇していない一因と考えられます。アップル、マイクロソフトなどの大手IT企業は、AI領域への先行投資も積極的に行っていますが、主力事業が堅調であることから、ナスダック総合指数のEPSを伸ばしています。市場では2026年~2028年にかけても、EPSが拡大していくと予想されています。S&P500指数構成銘柄のセクター別の業績動向でも、情報技術セクターの増益率の市場予想平均は上位にあり、AI関連企業の堅調な業績が期待できるでしょう。
(注)データは年次で、「ITバブル期」は1995年を、「AIブーム」は2023年を100として指数表示。予想は2026年5月8日時点のファクトセット集計による市場予想平均。
(出所)LSEG、ファクトセットより野村證券投資情報部作成
大型IPOでAIブームは新局面に入るか
- ITバブル期のように、ナスダック総合指数のPERが大きく上昇する可能性はあるのでしょうか。今後の注目点を教えてください。
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ChatGPTを開発したOpenAIをはじめ、AI開発の先行投資で中心的な役割を担っている企業の大型IPO(新規公開株式)が注目されています。2026年にはOpenAI、Anthropicなどの企業が、株式を上場する計画だと報じられています。また5月15日には、実業家イーロン・マスク氏が率いるSpaceXが6月12日にも株式上場を目指しており、取引所としてナスダックを選定したと報じられました。報道によると、SpaceXの評価額は1兆7,500億米ドルになる見通しで、実現すれば、史上最大規模のIPOとなる見込みです。
現在、先行投資の段階で期間損益は赤字と報じられているこれらの企業がナスダック市場に上場すると、ナスダック総合指数のEPSを押し下げる方向に働くと考えられます。一方で、AI関連の新興企業の上場が相次ぐと、投資家の関心は高まり、株価形成に影響を与える可能性があります。その結果、株式市場のPERが全般的に上昇して、AIブームが新しい局面に入っていくかもしれません。
ITバブル期には期間損益が赤字、または利益水準が低い状態のIT企業が多く上場したことが、ナスダック総合指数のEPSを押し下げました。EPSの下落はPERの上昇要因になるため、ナスダック総合指数全体の過熱感が高まる可能性には注意する必要があるでしょう。
- 引き続きPERの水準に注目していれば良いでしょうか。それ以外で注目すべき指標があれば教えてください。
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PERに加え、債券利回りから株式益利回りを引き算して算出する「イールドスプレッド」も重要な指標です。この値がマイナスの場合、株式は債券と比較して「割安」と判断されます。2026年5月1日時点ではイールドスプレッドは-0.326%で、株式の割安感は薄れていますが、まだ割高領域には入っていません。ITバブルと言われた1999年後半から2000年にかけては、イールドスプレッドはプラスとなり、割高領域に入っていました。
(注)米国長期金利は米国10年国債利回り。S&P 500 株式益利回りの基となる1株当たり利益はLSEG集計による12ヶ月先予想ベース。データは週次で、直近値は2026年5月1日。図中、破線四角で囲んでいる箇所は、ITバブルと言われた1999年後半から2000年にかけての期間。
(出所)野村證券投資情報部作成
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AIブームの過熱感を見極める上では、複数の株価関連指標を参照しながら、株式市場の状況を確認していくことがポイントになると考えています。
- 野村證券 投資情報部 シニア・ストラテジスト
村山 誠 - 1990年野村総合研究所入社、1998年に野村證券転籍。エクイティアナリスト、クレジットアナリストとして勤務。2011年6月より米国株ストラテジー担当。投資環境の分析、個別株の投資アイデアを提供。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」出演中。
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