2026.05.08 NEW
中東情勢の影響で明暗が分かれる新興国 エネルギー価格高騰に強い国と弱い国は? 野村證券・春井真也
撮影/タナカヨシトモ(人物)
米国とイランの軍事衝突の終結を巡り、一喜一憂する展開が続く中東情勢。足元のエネルギー価格の高騰などの中東情勢の影響は、新興国経済・マーケットにどのような形で表れているのでしょうか。地域別の影響の違いも含め、野村證券市場戦略リサーチ部外国為替アナリスト/シニアエコノミストの春井真也が解説します。

停戦期待で新興国市場は持ち直す
足元の新興国金融市場は停戦期待もあり、持ち直しています。図表1では灰色の線が新興国の株価指数、赤の線が新興国通貨指数、そして青の線が新興国国債の対米国債スプレッドを示しています。これらの指標は2026年3月に調整しましたが、その後は回復していることが分かります(スプレッドは縮小)。新興国アセットはハイリスク・ハイリターンで、投資家心理に左右されやすいと言われますが、持ちこたえている印象があります。
(注)新興国通貨はブルームバーグ新興国通貨指数、新興国株価指数はMSCIエマージングマーケット指数、新興国国債の対米国債スプレッドはJP Morgan EMBI Global インデックスの対米国債スプレッド(米ドルベース)。直近値は2026年5月7日時点。
(出所)Bloombergより野村證券市場戦略リサーチ部作成
ただし、地域別に新興国通貨の動向を見ると、その影響はまちまちです。図表2は中東情勢悪化後の主要新興国地域の対米ドルの騰落率をまとめたものになります。2026年4月12日のハンガリーの総選挙による政権交代などの固有要因はありますが、東欧がアウトパフォームしている一方で、東南アジアがアンダーパフォームしています。主な背景としては、エネルギーの価格高騰や不足への懸念が、新興国通貨における明暗を分けていると解釈しています。
(注)騰落率は2026年2月27日から5月7日時点まで
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成
中東情勢悪化によるエネルギー価格上昇の影響を受けやすい国・地域は
より具体的に中東情勢悪化の影響を受けやすい国・地域をエネルギーの観点から見ていきましょう。ここでは燃料の全輸入において湾岸諸国からの輸入が占める比率と燃料貿易収支を合算して作成した「中東情勢悪化に対しての脆弱性指標」を用います。
(注)データは2024年。燃料はSITC(標準国際貿易分類)の第3類。湾岸諸国はサウジアラビア、クウェート、バーレーン、カタール、UAE、オマーン。脆弱性指標は中東情勢悪化にともなうエネルギー価格上昇や不足に対しての経済の脆弱性を示す。
(出所)UNCTADより野村證券市場戦略リサーチ部作成
主要新興国・地域の中では、全体的にアジアは欧州新興国、ラテンアメリカなどに比べて、中東情勢悪化の影響を受けやすいです。アジアの中でも韓国や台湾に関しては、その脆弱性が目立ちますが、最近のAI関連事業に伴う半導体輸出の増加が一定の株価の支えになっているようです。一方、タイやベトナム、マレーシア、シンガポールといった東南アジア、そしてインドについては、AI関連に絡む半導体の輸出などの規模も相対的に小さいので、中東情勢悪化の影響が色濃く出ている状況です。
新興国市場で高まるショックへの耐性
ポイントをまとめると、新興国市場においては、東南アジアがアンダーパフォームしている一方、ラテンアメリカや東欧がアウトパフォームしていることが分かりました。地域間では明暗が分かれている部分があるものの、新興国市場全体では、今回の中東情勢の不安定化に対して底堅く推移しました。その一因として、ショックへの耐性の高まりが考えられます。 IMF(国際通貨基金)が公表した2025年10月の世界経済見通しによると、金融危機後(2010~2024年)の新興国市場は金融危機前(1997~2009年)に比べてリスクオフへの耐性を高めているとしています。インフレ目標、為替マクロプルーデンシャル(信用秩序維持)規制、財政ルールなどの導入が金融危機後に進み、金融政策の独立性向上や財政政策の透明性強化が新興国市場の頑健性を支えてきたとみられます。新興国市場を見る際には、このような政府や金融当局の政策にも、注目してみると良いかもしれません。
- 野村證券市場戦略リサーチ部 外国為替アナリスト/シニアエコノミスト
春井 真也 - 新興国(インド、ブラジル、ロシア、ラテンアメリカ、ASEAN、トルコ、南アフリカ、東欧)のマクロ経済、為替分析を担当。景気、金融政策といったファンダメンタルズの分析に加え、地域横断的なアプローチを重視。2024年10月から政策研究大学院大学の政策研究院リサーチ・フェロー。2023年3月まではユーロ圏や英国のマクロ経済、為替分析を担当。2015年8月から2019年4月までロンドン駐在(欧州担当エコノミスト)。2004年3月一橋大学商学部卒(国際金融専攻)、2005年3月一橋大学大学院商学研究科経営学修士取得(国際金融専攻)。
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