2026.04.30 NEW
日銀、「タカ派」的な据え置き リスクは「より速くて多い利上げ」 野村證券・森田京平
撮影/タナカヨシトモ(人物)
日本銀行は2026年4月28日、金融政策決定会合を終えました。政策金利(無担保コールレート・オーバーナイト物)の誘導水準は「0.75%程度」で据え置かれました。野村證券金融経済研究所チーフ・エコノミストの森田京平は、今回の据え置きは「タカ派」的であり、6月を含め、その後の追加利上げの余地は十分あると評価できるとしています。以下、詳しく解説します。

利上げ提案者が3名に増加
日銀は政策金利を据え置きました。市場予想に沿った決定で、サプライズはありません。一方、想定外だったのは、政策金利の据え置きに反対した審議委員が3名(高田創、田村直樹、中川順子委員)に増えたことです。3名の委員は、表現には多少の違いがあるものの、それぞれ物価の上振れリスクを念頭に利上げを提案し、いずれも反対多数で否決されました。3名の委員が利上げを提案したことを踏まえると、今回の据え置きは「タカ派」的と評価できます。
展望レポートは6月を含め、その後の追加利上げの可能性を示唆
決定会合後、日銀は「展望レポート」を公表しました。同レポートの焦点は、(1)中東情勢がもたらす経済・物価への影響に対する日銀の評価、(2)CPI(消費者物価指数)見通しとリスクバランス、(3)追加利上げを進めるに当たっての条件付けの表現の3点にありました。
1点目の中東情勢について、展望レポートは、交易条件の悪化や企業収益・家計の実質所得の下押しなどに言及しつつ、「成長ペースは減速する」との見方を示しました。もっとも、高水準の企業収益、政府による施策、緩和的な金融環境を背景に、経済は「緩やかな成長を続ける」としました。一方で日銀は、中東情勢がもたらしうる物価の上振れリスクを明確に警戒しています。とりわけ同レポートの表紙最下部では、「とくに、物価上昇率が大きく上振れていくリスクが顕在化し、それがその後の経済に悪影響を及ぼすことがないよう、十分に留意する必要がある」と明記しました。この表記からは、6月を含む追加利上げの余地が読み取れます。
2点目のCPI見通しについては、今回の展望レポートで2028年度が見通し期間に加わりました。無論、2028年度の経済・物価の姿は誰にも分かりません。だからこそ、日銀の物価観がより色濃く表れます。
政策委員見通しの中央値に基づくと、コアCPI(生鮮食品を除く)の前年度比変化率は、2026年度が+2.8%、2027年度が+2.3%、2028年度が+2.0%となりました。また、中東情勢の影響を受けやすいエネルギーも除くコアコアCPI(生鮮食品・エネルギーを除く)は、2026年度が+2.6%、2027年度が+2.6%、2028年度が+2.2%となりました。これを踏まえ、日銀は基調的な物価について、「2026年度後半から2027年度にかけて」2%程度の水準となり、その後も2%程度で推移すると評価しました。
2026年度のコアCPIは前回1月時点の見通しから大幅に上方修正されましたが、中東情勢の緊迫化と原油価格の高騰を背景としたもので、日銀の物価シナリオ自体が変化したとは評価しにくいです。ただ、2027、2028年度もコアCPI、コアコアCPIともに2%、あるいはそれを上回るとの見通しを示したことからは、日銀が追加利上げの必要性を強く意識している様子がうかがえます。
また、こうしたCPI見通しのリスクバランスについて、日銀は「上振れリスクの方が大きい」と評価しました。前回1月時点の評価が「概ね上下にバランスしている」だったことを踏まえると、日銀が物価の上振れリスクへの警戒を強めたことが読み取れます。
3点目の追加利上げの条件付けも、今回の展望レポートで変更されました。これまで日銀は、「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」としていました。今回、日銀はこれを「経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」に改めました。「金融情勢」への言及を加えた一方、「改善」という表現と、「…の見通しが実現していくとすれば」という条件付けを削除しました。ここからは、中東情勢が混迷する中、経済の明確な改善が確認できない場合でも利上げを続けるという日銀の姿勢が読み取れます。
現時点でのリスクは「より速くて多い利上げ」
今回の据え置きが「タカ派」的だったことに加え、展望レポートが物価の上振れリスクへの警戒を示したことを踏まえ、野村證券は「2026年6月、12月、2027年6月の利上げ」という従来のシナリオを、今回もメインシナリオとして維持します。
ただ、リスクと不確実性は多くあります。緊迫した中東情勢が長引くほど、それが日本経済にもたらす影響は、(1)価格面の供給制約(原油価格上昇、実質賃金の低下など、交易条件の悪化)、(2)量的な供給制約(エネルギー、石油製品などの調達難による稼働率の低下)、(3)需要の萎縮(設備投資の抑制・先送り、消費性向の低下などによる支出抑制) という順に、深刻度を増しそうです。すなわち、中東情勢の混迷が長引くと、初期段階では(1)を中心とした影響にとどまっていても、ある段階で急速に(1)と(2)、ひいては(1)と(2)と(3)という形で影響が重層化するおそれがあります。
今後は、(1)〜(3)の重層化の度合いに応じて、経済・物価への影響に加え、政府の財政運営姿勢も変わりえます。特に野村證券が利上げを見込む6月には、(a)骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)、(b)国民会議での議論を踏まえた消費減税に関わる中間とりまとめ、の2つの発表が控えています。ここに中東情勢への対応も加わるとすれば、6月は政府の財政運営姿勢が緊張度を増す時期になりえます。このように、中東情勢や経済・物価への影響、政府の財政運営などの状況次第で、金融政策運営を巡るリスクも変わりえます。
不確実な環境ではありますが、現時点では、野村證券のメインシナリオに対するリスクは「より速くて多い利上げ」に偏っているとみています。
- 野村證券 金融経済研究所 チーフ・エコノミスト
森田 京平 - 1994年九州大学卒業、野村総合研究所入社。英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所を経て、バークレイズ証券(2008~2017年)およびクレディ・アグリコル証券(2017~2022年)にてチーフ・エコノミストを務めた。2022年7月より現職。2000年米ブラウン大学より修士号(経済学)、2018年九州大学より博士号(経済学)を取得。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)、『現代金融論 新版』(有斐閣)など。
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