2026.05.18 NEW
長期金利は一時2.8%に上昇 年末に向けた低下シナリオの鍵を握る3条件 野村證券・宍戸知暁
撮影/タナカヨシトモ(人物)
2026年5月18日、日本の国内債券市場で、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが一時2.8%まで上昇しました。野村證券のシニア金利ストラテジスト、宍戸知暁は、今後の円債市場について、ホルムズ海峡封鎖の解消、責任ある財政運営、6月の日銀利上げの3点がそろえば、長期・超長期金利は年末にかけて低下に向かうとの見方を示しています。以下で詳しく説明します。

金利急騰の主因は、財政赤字とビハインド・ザ・カーブへの懸念
円金利が急騰しています。市場では、ホルムズ海峡の実質封鎖が長期化し、原油価格が高止まりするとの見方が強まりました。これが、金利上昇の直接的なきっかけとなりました。加えて、米国景気の堅調さや英国の政局不安など、原油以外の要因による海外金利の上昇も、国際的な裁定取引などを通じて、円金利の上昇圧力になったとみられます。
もっとも、最大の金利上昇要因は、国内の財政政策が一段と拡張的になることや、日銀がビハインド・ザ・カーブ(政策対応が後手に回ること)に陥ることへの警戒とみられます。
来日したベッセント米財務長官が、高市早苗政権の財政運営や日銀に対して何らかの注文を付けると期待した市場参加者も多かったものの、実際にはそのような発言はありませんでした。これも、市場の財政赤字拡大への懸念や、日銀のビハインド・ザ・カーブ懸念を強めた可能性があります。
10年物BEI、日銀の目標である2%を上回る
債券市場のインフレ期待指標である10年BEI(10年国債利回り-10年物価連動国債利回り)は、大型連休明けに日銀の物価目標である2%を上回り、5月12日以降は上昇ペースが加速しました。5月15日には2.25%に達しました。日銀が基調インフレを目標の2%にアンカーできないとの見方が、債券市場参加者の間で急速に広がっている可能性があります。
(出所)Bloombergより野村證券市場戦略リサーチ部作成
5月15日時点の各年限の金利上昇幅(5月1日比)は、2年金利が約2.5bp(ベーシスポイント)、5年金利が約4bp、10年金利が約20bp、30年金利が約25bpでした。5年超の年限で大きくスティープ化(急勾配化)しています。2~5年の金利上昇幅が小さいことから、市場は、日銀が利上げペースを加速させる可能性や、より高いターミナルレート(日銀の政策金利の到達点)が実現する可能性を低くみているといえます。
今後の円金利は、3つの条件がそろえば低下へ
今後の円金利動向は、ホルムズ海峡の実質封鎖がいつ解消するかや、6月に集中する財政政策の内容に大きく左右されます。6月の重要イベントには、(1)社会保障国民会議の中間とりまとめ(食品に対する消費税減税や給付付き税額控除の制度設計の方向性が示される可能性)、(2)2027年度予算編成方針(いわゆる「骨太の方針」)、(3)2027年度補正予算が含まれます。
野村證券は、ホルムズ海峡の開放時期や6月時点の財政政策の具体的内容について明確な前提を置いていません。ただ、(1)ホルムズ海峡の閉鎖は四半期単位ではなく月単位で解消し、(2)6月に示される財政運営方針や補正予算は、債券市場を完全に安心させるほど責任ある内容にはならない一方、市場を驚かせるほど積極的にもならない、との前提で金利の先行きを想定しています。
この前提のもと、長期・超長期金利は6月をピークに、年末にかけて小幅に低下すると見込まれます。背景には、野村證券が原油高に伴うインフレ上振れの二次的な波及、つまり、インフレ期待や賃上げへの影響を限定的とみていること、日銀が6月から半年ごとに利上げできると予想していることがあります。BEIの2%超えは懸念材料ですが、6月に野村予想通り日銀が利上げできれば、ビハインド・ザ・カーブ懸念は一定程度後退し、インフレ期待も抑制されるとみています。また、今秋に発表される連合の2027年度春闘(春季労使交渉)方針では、物価高を直接反映した賃上げ目標の引き上げはないと予想しています。
野村予想通り、2026年6月から日銀が半年ごとに25bpずつ、1.5%まで利上げした場合、市場のターミナルレート期待は現状の2%程度を大きく上回らず、5年金利も2%を大きく上回らないとみています。一方で、2%を大きく下回ることもないと見込まれます。これは、野村證券が、政策金利1.5%で利上げが終了した後の利下げを想定していないためです。
超長期JGB(日本国債)については、発行減額や海外投資家の買いによる需給改善傾向が続き、市場機能も徐々に改善するなかで、利回りを押し上げている各種プレミアムは徐々に剥落すると予想されます。
長期・超長期金利が上昇し続けるリスクシナリオ
野村證券の見通しに反して長期・超長期金利が上昇し続けるリスクシナリオは、上述した金利低下の3条件のいずれか、またはすべてが満たされない場合です。ホルムズ海峡の閉鎖が冬まで続いたり、財源の手当てがないまま消費税減税や国防支出の大幅な積み増しを行ったり、6月に政治的な圧力で日銀が利上げできなかったりした場合は、野村予想以上に長期金利が上昇する可能性が高まります。
- 野村證券 市場戦略リサーチ部 シニア金利ストラテジスト
宍戸 知暁 - 2000年野村総合研究所入社。2003年からニューヨークの野村総研アメリカおよび米国野村證券で米国マクロ経済の分析に従事。2006年からマクロ経済分析を基礎とした米国債券市場の分析・予測を担当し、その後は米株式市場の分析およびマルチアセット・ストラテジーを担当。2022年から2年間、財務省理財局国債業務課で市場分析官として勤務し、海外市場および円金利市場の分析に従事した。2023年6月から円金利ストラテジー担当。 ファンダメンタルズ分析および中銀ウォッチを基本に、投資家の売買動向を含む市場需給見込みも加味した予測作成およびストラテジー構築を心掛けている。
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