2026.05.13 NEW
日経平均株価は高すぎるのか? 半導体株が牽引も、バブルではないと考える理由 野村證券・岡崎康平
撮影/タナカヨシトモ(人物)
日本の株式市場が急ピッチで上昇しています。2026年3月末に51,000円台だった日経平均株価が5月7日には一時63,000円を突破するなど、4月から5月にかけて大きく値上がりしており、5月12日時点での3月末比の上昇率は22.9%と、米国株(S&P500種指数・13.4%)を大きく上回っています。反落して始まった13日も上昇に転じ、終値では史上初の63,000円台(63,272.11円・前日比529.54円高)で取引を終えました。「バブル」を懸念する声も出始めるなど、警戒感が高まりつつある日本の株式市場に死角はないのでしょうか。野村證券チーフ・マーケット・エコノミストの岡崎康平が株価上昇の背景や見通しについて、詳しく解説します。

グローバルな半導体株高が日本株をけん引
- 日本の株式市場の上昇が続いています。背景には何があるのでしょうか。
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同じ株価指数であるTOPIX(東証株価指数)と比べて半導体関連株の指数寄与度が大きい日経平均株価の上昇が特に目立つことから、半導体関連株への資金流入が株式市場全体の上昇につながっているのでしょう。ただし、半導体関連株の上昇は日本だけではありません。韓国、台湾でも同様の動きが見られるため、グローバルなトレンドが日本株市場への追い風になっていると言えます。
- なぜ半導体関連株が大きく上昇しているのでしょうか。
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AIが進化する中、データセンター向け半導体需要が大きく増えているのが理由です。米国の大手IT企業の決算資料を見ても、データセンターへの投資意欲が非常に旺盛です。そのため、半導体価格の上昇が続いており、関連企業の業績拡大への期待が高まっているのでしょう。加えて、不確実性は高いものの中東情勢が緊張緩和の方向に向かい始めており、投資家のリスク回避姿勢が和らいでいることも株価上昇を後押ししているのだと考えています。
投資テーマとしてAIが再評価されていることも、プラスの要素になっているかもしれません。これまで、米アンソロピック社の新型AIの登場によって、「SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)企業」などIT関連セクターの先行き不透明感が強まっていました。しかし、投資家が冷静さを取り戻し「すべての企業が駆逐されるわけではない」という認識も広がってきており、極端な悲観論からの揺り戻しも起きているのかもしれません。例えば、AIを導入したい企業へのコンサルティングなど、AIの進化によって新たなサービスも生まれやすく、共存できる企業も少なくないはずです。そうした見方も支援材料になっているのではないでしょうか。
原油を中心とした資源価格高騰の影響で、今後は日米ともにインフレへの注目が集まると考えています。AI・半導体企業にも、インフレはコスト増圧力として襲い掛かるでしょう。しかし、インフレが重しになるのは他産業も同様です。産業としての成長性が際立つAI・半導体分野は、相対的に優位であり続けるとみられます。この点は、現在の相場が、AI・半導体産業の実態を伴う成長にけん引されていることとも関係しますね。
ITバブル時とは何が違うのか
- 2000年前後のITバブル時のような懸念は不要ということでしょうか。
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もちろん、特定のAI・半導体企業が極端に投資家の注目を集める事態は、現在でも起こり得ます。それをもって「バブル」と評価する声も少なくないでしょう。
しかし、ITバブル時とはやはり状況が違います。ITバブルでは、必ずしも実態を伴わないビジネスプランがもてはやされました。一方、現在注目されているAI・半導体企業は世界的にみても巨大な企業であり、実態を伴う研究開発・設備投資が進む見通しです。一時的な調整局面があろうことは否定できませんが、AI・半導体産業に対する中長期的な成長期待が唐突に雲散霧消する可能性は低いとみています。様々な国でAI・半導体が戦略分野とみなされている点も、この分野の強みと言えるでしょう。
米インフレ高進が冷や水となるリスクも
- 今後の注目点を教えてください。
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5月12日に発表された米国の4月のCPI(消費者物価指数)は前年同月比+3.8%と、約3年ぶりの高い水準となりました。中東情勢の緊迫化は緩和方向にあるものの、今後は高止まりする原油価格がインフレ圧力を高め、企業や家計にどういった影響を及ぼすのか、見極める必要があります。個人消費などに悪影響を及ぼすようであれば、他産業との相対感から半導体関連セクターなどが引き続き物色される可能性があります。
FRB(米連邦準備理事会)の金融政策にも注意が必要です。インフレ高進は労働者の賃上げ要求を高め、FRBに利上げを意識させる可能性があります。米利上げは米国株のみならず日本株への冷や水になる可能性もあり、FRBの金利見通しに変化があるのかどうかは株式市場の先行きを占ううえでとても重要です。11月の米中間選挙が近づくにつれ、トランプ米大統領の動向にも注目が集まるでしょう。
日本経済については、あまり大きな懸念が見当たらないのが現状です。原油の輸入が途絶えることでサプライチェーンの目詰まりが起こる可能性はあるものの、景気を大きく悪化させる事態に発展するリスクは低いでしょう。また、2027年に向けた賃上げ機運の高まりや政府の財政政策は長期金利の上昇圧力につながるものの、政府の経済財政諮問会議の議論などを踏まえると、市場への配慮も垣間見えます。総じて金利上昇は緩やかなペースにとどまり、株価への影響は限定的になると考えています。
- 個人投資家へのアドバイスをお願いします。
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株式投資の経験が長い方のなかには、日本の半導体産業の退潮と中国・韓国企業の勃興を強く意識している方もおられるでしょう。厳しい環境に晒され続けた日本の半導体産業が、本当に復活できるのか不安になるのは自然なことです。しかし、1990年代~2010年代と現在とでは、地政学環境も日本政府の政策スタンスも様変わりしています。自身で冷静に投資判断を下すことを大前提としつつ、改めて日本のAI・半導体産業の将来性を考える良い機会かもしれません。
- 野村證券 市場戦略リサーチ部 チーフ・マーケット・エコノミスト
岡崎 康平 - 2009年に野村證券入社。シカゴ大学ハリス公共政策大学院に留学し、Master of Public Policyの学位を取得(2016年)。日本経済担当エコノミスト、内閣府出向、日本経済調査グループ・グループリーダーなどを経て、2024年8月から、市場戦略リサーチ部マクロ・ストラテジーグループにて、チーフ・マーケット・エコノミスト(現職)を務める。日本株投資への含意を念頭に置きながら、日本経済・世界経済の分析を幅広く担当。共著書に『EBPM エビデンスに基づく政策形成の導入と実践』(日本経済新聞社)がある。
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