2026.04.23 NEW
日銀4月利上げ、見送りを予想 焦点は6月以降の利上げ期待 野村證券・森田京平
撮影/タナカヨシトモ(人物)
日本銀行は4月27〜28日に金融政策決定会合を開きます。野村證券金融経済研究所チーフ・エコノミストの森田京平は、政策金利は据え置きになると予想しています。そのうえで、植田和男総裁の記者会見の主な焦点は、6月以降の利上げ期待をどこまで維持できるかだとしています。以下で詳しく解説します。

政策金利据え置きを予想
4月会合で、野村證券は政策金利の据え置きを予想します。4月6日の支店長会議と13日の信託大会での植田和男総裁の挨拶(氷見野良三副総裁が代読)では、中東情勢を巡る不確実性や景気への影響が相応に強調されました。停戦協議の進展や為替市場の動向次第で流動的な面は残るものの、日銀は経済・物価への影響を見極める姿勢のまま、4月の決定会合を迎えると現時点でみています。
4月会合では、四半期の展望レポート(経済・物価情勢の展望)が公表され、見通し期間は2028年度まで延長されます(従来は2027年度まで)。中東情勢の緊迫化に伴う原油価格急騰の影響などが、経済・物価見通しに定量的に反映される見通しです。
インフレ見通しについては、2026年度のコアCPI(消費者物価指数・生鮮食品を除く総合)上昇率が大幅に上方修正されると見込まれます。日銀は2026年1月時点で、2026年度のコアCPIを前年度比+1.9%としていましたが、野村證券はこれが同+2.6%に引き上げられるとみています。日銀は物価見通しの作成に当たり、原油価格の想定で先物価格を参照します。先物カーブで今後の原油価格低下が織り込まれていることを踏まえると、2027年度のインフレ率は原油価格低下の下押しを受けた後、2028年度にかけて再上昇すると予想されます。
2026年度の上方修正自体は、市場実勢の原油価格を反映した色合いが濃く、日銀が自らの基調物価シナリオを変更したとの解釈にはなじみません。(1)原油価格が日銀の重視する物価の基調にどう影響するか、(2)そのうえで、日銀が現行の利上げ継続姿勢を維持するか、維持できるか――を評価するうえでは、原油価格の転嫁(一次的影響)が一巡する2027〜2028年度のCPI、とりわけ生鮮食品・エネルギーを除く総合CPIの見通しに注目したいところです。
GDP(国内総生産)成長率の見通しについては、インフレ見通しの上方修正を踏まえ、2026年度は前回見通し(前年比+1.0%)から同+0.7%へ下方修正されると野村證券はみています。ただし、潜在成長率並み(日銀推計値は0%台半ば)は維持され、中東情勢の緊迫化が国内景気を大きく押し下げる姿までは描かれないでしょう。
GDP・CPIの見通しをみるうえでは、それぞれのリスクバランスも重要です。2026年1月時点では、経済・物価ともに「概ね上下にバランス」と評価されていました。今回4月の展望レポートでは、経済は「下振れリスクの方が大きい」、物価は「上振れリスクの方が大きい」との評価に変わる可能性があります。
展望レポート、GDP・CPI見通し以外の二つの注目点
4月の展望レポートでは、GDP・CPI見通し以外にも、大きく二つの注目点があります。
第一に、見通し期間の延長(2027年度→2028年度)に伴い、これまで「見通し期間後半」としていた基調物価の2%到達時期は、「見通し期間半ば」といった表現に変更されるでしょう。
2025年4月の展望レポートでは、トランプ関税に伴う景気・物価への下振れリスクが意識されるなか、「後半」という文言が維持され、目標達成時期は事実上後ろ倒しされました。今回は、中東情勢の緊迫化が景気の下振れ要因ではあるものの、物価には上振れ要因となるため、2025年4月のように目標達成時期の後ろ倒しにはつながりにくいでしょう。利上げ期待の過度な後退や円安進行を防ぐ観点からも、文言に何らかの修正を加えるのが自然です。
第二に、「経済・物価情勢の改善に応じて」(政策金利を引き上げる)という文言が、削除または修正される可能性があります。原油高が日本経済にスタグフレーション(不景気と物価上昇の同時進行)的な影響(経済には下押し、物価には押し上げ)を及ぼすなか、経済と物価が同時に改善するとの見通しは、目先は示しにくい状況です。そうしたなかで日銀が利上げ継続を志向する場合、この文言が障壁となるおそれがあります。
この点について、3月会合後の記者会見で植田総裁は「成長率が下がるということがあったとしましても、(中略)基調物価の経路にはそんなに影響しないということであれば、当然利上げは可能」、「4月のステートメントでは、見通しをもう一度やるという作業の結果のご説明も含めまして、もう一度検討」と述べています。そのうえで、仮に4月の展望レポートでも「経済・物価情勢の改善に応じて」という文言が維持されれば、むしろハト派的(利上げに消極的)に解釈される余地を与えることになります。
総裁記者会見は6月会合以降の利上げ期待をどれだけ残せるかが焦点
野村證券の予想通り、政策金利が据え置かれた場合、植田総裁の記者会見での主な注目点は、6月以降の利上げ期待をどこまで維持できるかに絞られます。中東情勢を巡る不確実性を理由に金利を据え置いた場合、同じ理由で6月も利上げできないとの見方を市場に根付かせれば、植田総裁自ら円安を演出することになりかねません。
中東情勢の不確実性を踏まえると、4月決定会合後の会見で6月利上げを確約するハードルは高いです。それでも、6月会合が十分に利上げの可能性を残す会合であるとの布石を打つことは求められるでしょう。
なお、6月も利上げが見送られるリスクシナリオとしては、(1)中東情勢の不確実性が続き、その影響の見極めが終わっていない、(2)6月に重なる財政イベント(骨太の方針、消費減税の中間取りまとめ)を踏まえ、ポリシーミックス(政策協調)の観点から政府に配慮する――といったケースが想定されます。一方、円安リスクを踏まえると、日銀がいつまでも様子見を続けるのは難しいでしょう。野村證券は引き続き、6月会合での次回利上げをメインシナリオと位置付けています。
- 野村證券 金融経済研究所 チーフ・エコノミスト
森田 京平 - 1994年九州大学卒業、野村総合研究所入社。英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所を経て、バークレイズ証券(2008~2017年)およびクレディ・アグリコル証券(2017~2022年)にてチーフ・エコノミストを務めた。2022年7月より現職。2000年米ブラウン大学より修士号(経済学)、2018年九州大学より博士号(経済学)を取得。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)、『現代金融論 新版』(有斐閣)など。
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