2026.06.17 NEW
日銀、予想通り利上げを決定 次の利上げは12月メイン、10月リスクシナリオに 野村證券・森田京平
写真/タナカヨシトモ(人物)
日本銀行は2026年6月15~16日に開催した金融政策決定会合で、0.25%の利上げを決定しました。政策金利は1.0%と、1995年以来31年ぶりの高水準となります。決定内容や日銀の政策運営姿勢について、野村證券金融経済研究所チーフ・エコノミストの森田京平が、詳しく解説します。
金融政策決定会合:「賛成7:反対1」で利上げを決定、浅田委員が反対
6月16日、日銀は決定会合を終えました。政策金利(無担保コールレート・オーバーナイト物)の誘導水準は「1.0%程度」と、これまでの「0.75%程度」から引き上げられました。この決定は市場の事前予想通りであり、サプライズはありません。
浅田統一郎委員が利上げに反対した結果、「7:1」での利上げ決定となりました(入院中の植田和男総裁は欠席)。同委員は、物価の上振れリスクよりも、生産・雇用の下振れリスクの方が大きいとの理由で、政策金利を据え置くことが望ましいとしました(ただし政策案は提出しませんでした)。
日銀の政策運営姿勢:利上げ継続姿勢を維持も、実質金利「きわめて低い」との評価は削除
今回の声明文には、リスク評価と金融政策運営姿勢にいくつかの変更がみられました。まず経済のリスクについて、日銀は「経済が大きく下振れるリスクは一頃よりも低下している」としました。こうしたリスク評価の変化を踏まえて、日銀は日本経済が「中心的な見通しに概ね沿って推移している」と評価しました。
物価のリスクについては、CPI(消費者物価指数)の「基調的な上昇率が2%の『物価安定の目標』を超えて上振れていくリスクがある」としました。経済が中心的な見通しに概ね沿って推移しているのに対して、物価については上振れリスクを警戒した形です。こうしたリスク評価が今回の利上げの背景をなしたといえるでしょう。
加えて、金融政策運営の姿勢を表す文言にも変化がみられました。日銀は従来、「現実の実質金利がきわめて低い水準にあること」を踏まえて、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくとしていました。今回の声明文で、実質金利の低さへの言及が外され、代わりに「金融環境が緩和的であること」が言及されました。
この点を、決定会合後の会見で内田眞一副総裁は、「判断の変化」ではなく「説明の仕方の変化」と位置付けました。しかし、現に「きわめて(低い)」という表現が外されたことは、金融緩和の「程度の変化」、すなわち緩和度合いへの評価を1段階下げたと読むことは自然でしょう。
なお、利上げを通じて金融緩和度合いを調整するに当たって、「経済・物価の中心的な見通しが実現する確度やリスクを点検」しながら、タイミングやペースを検討する姿勢に今回も変化はありません。
野村證券の日銀シナリオ:メインシナリオ据え置き、新たなリスクシナリオを設定
今回の決定会合を受けて、野村證券は引き続き「2026年12月、2027年6月」の利上げをメインシナリオとします。一方、(1)物価の基調が2%を超えて上振れていくリスクに日銀が言及したこと、(2)日銀が後手に回るビハインド・ザ・カーブになることへの警戒が市場に根強くあること、(3)ビハインド・ザ・カーブとの見方に端を発する円安リスクが今後も残ること、などを踏まえると、メインシナリオより速く、かつ多い利上げも一定程度、想定しえます。そこで、新たなリスクシナリオでは、「2026年10月、2027年3~4月、2027年9~10月」の利上げを見込みます。
中東情勢が安定した際の原油価格の落ち着きどころ、経済主体(企業、家計)の中長期的なインフレ予想の形成、賃上げの持続性と企業間での同調性、円安リスクと物価への影響、などを確認しつつ、これらシナリオの蓋然性を引き続きチェックしたいです。
| メインシナリオ (確率70%) |
リスクシナリオ (確率30%) |
|
|---|---|---|
| ● 追加利上げ回数 | ・2026年1回 ・2027年1回 |
・2026年1回 ・2027年2回 |
| ● 利上げのタイミング | ・2026年12月 ・2027年6月 |
・2026年10月 ・2027年3~4月 ・2027年9~10月 |
|
● 政策金利水準 ・現在 ・2026年末 ・2027年末 |
1.00% 1.25% 1.50% |
1.00% 1.25% 1.75% |
(注)各シナリオの確率分布は一定の有力性のあるシナリオについての相対的なものであり、これら以外のシナリオの実現性を排除するものではない。
(出所)野村證券経済調査部作成
- 野村證券 金融経済研究所 チーフ・エコノミスト
森田 京平 - 1994年九州大学卒業、野村総合研究所入社。英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所を経て、バークレイズ証券(2008~2017年)およびクレディ・アグリコル証券(2017~2022年)にてチーフ・エコノミストを務めた。2022年7月より現職。2000年米ブラウン大学より修士号(経済学)、2018年九州大学より博士号(経済学)を取得。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)、『現代金融論 新版』(有斐閣)など。
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