2026.07.03 NEW
夏の風物詩、「ETF分配金売り」で日本株は下がるのか? 野村證券ストラテジストが解説
7月上旬はETF分配金売りへの警戒が風物詩だが…
2026年6月後半は株主総会前後の配当支払いに伴う個人投資家の再投資資金流入への期待、7月上旬はETF(上場投資信託)の分配金支払いに備えた売りへの警戒が、ニュースなどで話題になるのが近年の風物詩です。特に7月8日と10日のETF分配金支払い義務発生(ETF決算)に伴う換金売りは、株安材料として取り上げられることが多くあります。
しかし、実際のデータをみると、7月上旬を境に日本株が下落するというデータ上の裏付けはありません。そもそも市場が効率的なら、7月上旬より前に調整するはずですし、ETFの分配金捻出売りは時間を分散して執行されているとみられます。6月の配当支払いに伴う再投資資金流入への期待についても、同様にデータ上、株高要因となっている形跡はありません。各種ジンクスや季節性もモニターしていますが、基本的に再現性はほとんどないとみています。
円安をめぐる株式市場の立ち位置
「39年ぶりの円安」というヘッドライン記事が出ても、TOPIX(東証株価指数)・日経平均株価はほとんど反応していません。米ドル円相場とTOPIXの相関はプラスで、「円安・株高」がここまで共存しています。TOPIXの米ドル円感応度(対米ドルで1円円安になった際のTOPIX押し上げ効果)は+0.1%前後と、業績感応度(+0.2%前後)を下回り、為替の影響は軽微といえます。ポジション面では円ショートが積み上がる一方、日本株先物ではロングポジションの蓄積がみられないことも、米ドル円相場と日本株の連動性低下につながっていると考えられます。
(注)TOPIXの米ドル円感応度(ベータ)は過去1年間の日次データで米ドル円の変化とTOPIX騰落率をもとに算出。日本企業の業績の米ドル円感応度は、対米ドルで1円円安が進行した場合の経常利益への影響度
(出所)JPX総研、東洋経済新報社より野村證券市場戦略リサーチ部作成
2022年以降の円買い介入後には、TOPIXが3~4ヶ月程度もみ合う傾向があり、短期的にはディフェンシブセクターが相対的に堅調となりやすい傾向もみられました。6月初以降に最も有効なファクターの一つが低米ドル円前提であり、次いで米ドル円ベータ(米ドル円相場への感応度)や海外売上高比率も有効性を示しています。
上場企業の2026年度の米ドル円前提は1米ドル=152円前後で、電機・精密や機械など輸出セクター・企業は150円前後、運輸・物流や電力・ガスなど輸入セクター・企業は155~160円前後のケースが多くあります。為替環境は2026年度の上場企業業績にとってバッファーになるでしょう。
円安メリットがあり、米ドル円の前提レートが1米ドル=150円以下の企業を整理しました。仮に円安傾向が続けば、業績の上方修正期待が高まりやすい一角と位置づけられます。米国での関税還付も同様に下支え要因となり、2026年度の日本企業の税引き前利益を数千億円規模で押し上げる可能性があります。
| 銘柄 コード |
企業名 | 会社側の 米ドル円前提 |
対米ドル1円 円安のインパクト |
会社側の ユーロ円前提 |
対ドルユーロ円 円安のインパクト |
1円円安の 経常利益への影響 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| (円) | 10億円 | (円) | 10億円 | (%) | ||
| 1963 | 日揮ホールディングス | 150.0 | 0.5 | 0.87 | ||
| 3401 | 帝人 | 150.0 | 0.5 | 176.0 | 1.47 | |
| 3402 | 東レ | 150.0 | 0.6 | 175.0 | 0.2 | 0.90 |
| 3405 | クラレ | 150.0 | 0.1 | 175.0 | 0.4 | 3.29 |
| 3407 | 旭化成 | 150.0 | 1.6 | 175.0 | 0.3 | 1.16 |
| 3436 | SUMCO | 148.5 | 1.5 | 5.48 | ||
| 4091 | 日本酸素ホールディングス | 150.0 | 0.3 | 175.0 | 0.4 | 1.11 |
| 4118 | カネカ | 150.0 | 0.5 | 1.30 | ||
| 4151 | 協和キリン | 150.0 | 180.0 | 0.2 | 0.86 | |
| 4186 | 東京応化工業 | 150.0 | 0.7 | 1.01 | ||
| 4202 | ダイセル | 150.0 | 0.8 | 1.51 | ||
| 4205 | 日本ゼオン | 150.0 | 0.5 | 175.0 | 0.1 | 2.32 |
| 4503 | アステラス製薬 | 150.0 | 1.0 | 180.0 | 1.7 | 2.29 |
| 4901 | 富士フイルムホールディングス | 150.0 | 0.6 | 175.0 | 0.8 | 1.08 |
| 4902 | コニカミノルタ | 150.0 | -0.3 | 180.0 | 0.5 | 4.96 |
| 5108 | ブリヂストン | 150.0 | 3.0 | 176.0 | 0.7 | 1.24 |
| 5333 | NGK | 150.0 | 0.3 | 175.0 | 0.2 | 1.15 |
| 5711 | 三菱マテリアル | 150.0 | 0.8 | 169.0 | 0.1 | 1.23 |
| 6141 | DMG森精機 | 150.0 | 0.3 | 175.0 | 0.84 | |
| 6301 | 小松製作所 | 150.0 | 8.5 | 174.0 | 0.6 | 2.02 |
| 6302 | 住友重機械工業 | 145.0 | 170.0 | 0.1 | 0.93 | |
| 6305 | 日立建機 | 150.0 | 2.7 | 178.0 | 1.71 | |
| 6326 | クボタ | 145.0 | 3.3 | 165.0 | 0.8 | 2.03 |
| 6367 | ダイキン工業 | 145.0 | 1.8 | 170.0 | 0.6 | 0.97 |
| 6448 | ブラザー工業 | 150.0 | -0.6 | 180.0 | 0.8 | 3.45 |
| 6457 | グローリー | 150.0 | 170.0 | 0.1 | 1.59 | |
| 6472 | NTN | 150.0 | 0.3 | 175.0 | 0.2 | 3.47 |
| 6758 | ソニーグループ | 150.0 | 1.5 | 173.0 | 6.0 | 1.76 |
| 6770 | アルプスアルパイン | 150.0 | 1.7 | 180.0 | 3.12 | |
| 6806 | ヒロセ電機 | 150.0 | 0.4 | 183.0 | 0.1 | 1.11 |
| 6965 | 浜松ホトニクス | 148.0 | 0.3 | 170.0 | 0.0 | 1.10 |
| 6971 | 京セラ | 150.0 | 1.2 | 175.0 | 0.7 | 2.34 |
| 6976 | 太陽誘電 | 150.0 | 1.4 | 2.25 | ||
| 6981 | 村田製作所 | 150.0 | 5.0 | 0.85 | ||
| 7011 | 三菱重工業 | 150.0 | 2.0 | 180.0 | 0.8 | 0.87 |
| 7201 | 日産自動車 | 150.0 | 12.0 | 175.0 | 4.87 | |
| 7203 | トヨタ自動車 | 150.0 | 50.0 | 180.0 | 0.89 | |
| 7267 | 本田技研工業 | 145.0 | 12.0 | 0.95 | ||
| 7313 | テイ・エス テック | 150.0 | 0.5 | 2.42 | ||
| 7751 | キヤノン | 150.0 | 3.0 | 175.0 | 3.4 | 4.01 |
| 7752 | リコー | 150.0 | 0.2 | 175.0 | 0.8 | 4.12 |
| 8086 | ニプロ | 143.0 | 169.0 | 0.2 | 3.29 | |
| 9104 | 商船三井 | 150.8 | 2.5 | 1.41 | ||
| 9107 | 川崎汽船 | 150.8 | 1.5 | 1.42 |
(注)TOPIX500構成企業で、米ドル円前提が150円以下で、対米ドル対ユーロ1円円安時に利益(営業利益がベース)を0.75%以上押し上げと試算される企業。業績予想はQUICKコンセンサス(東洋経済予想で補完)。2026年7月1日時点。
(出所)QUICK、東洋経済新報社より野村證券市場戦略リサーチ部作成
(編集:野村證券投資情報部)
編集元アナリストレポート
日本株ウィークリー(2026年7月2日) – AI一極集中に一巡感、「ETF分配金売り」が話題の時期に(2026年7月2日配信)
(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。画像はイメージ。
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