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2026.08.06 NEW

10年後の日経平均株価長期試算 標準シナリオで10年後は11万円 高成長シナリオだと? 野村CIO・宮嵜浩

10年後の日経平均株価長期試算 標準シナリオで10年後は11万円 高成長シナリオだと? 野村CIO・宮嵜浩のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

野村證券は企業利益の成長見通しや市場環境の変化を踏まえ、日本株の長期シナリオを見直しました。複数のシナリオに基づき、2035年度までの日経平均株価の長期的な水準を試算します。試算に協力した野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティングCIOマネジメント部(野村CIO)のチーフ・ストラテジストである宮嵜浩が解説します。

10年後の日経平均株価長期試算 標準シナリオで10年後は11万円 高成長シナリオだと? 野村CIO・宮嵜浩のイメージ

3つのシナリオで2035年度の日経平均株価を試算

2025年5月末に公表した前回の「日本株の長期試算」は、2034年度の日経平均株価を、標準シナリオで6万2,907円、高成長実現シナリオでは8万3,505円と試算しました。日本株の上昇ペースは、2025年5月末時点の想定を超えています。ただ、長期試算の前提として、短期的な相場変動は織り込んでいません。今後、日本の景気が後退局面に転じれば、日経平均株価が下落基調に転じ、両シナリオで想定している試算値を下回るケースもあり得ます。

足元で2025年度の株価実績が前回想定を大きく上回る一方、前回の「高成長実現シナリオ」で前提としたEPS(1株当たり利益)成長率やPER(株価収益率)17倍の妥当性を否定する材料は確認されていません。この判断に基づき、今回の「日本株の長期試算」では、前回の「高成長実現シナリオ」を「標準シナリオ」として再試算しました。また、前回の「標準シナリオ」に基づく再試算は「慎重シナリオ」として残し、新たな「高成長実現シナリオ」も試算しています。

3つのシナリオ別に試算した2035年度の日経平均株価は、標準シナリオで11万448円、高成長実現シナリオで14万6,142円、慎重シナリオで9万1,554円です。2035年度までの日本企業のEPSをフォワードルッキングな(将来を見据えた)視点で試算します。

2035年度までの日経平均株価の試算

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(注)2026~2028年度の日経平均株価は、野村證券のトップダウン予想(2028年度は2028年末、2026年7月14日時点)。2029年度以降の日経平均予想EPS成長率は内閣府の試算とIMF予想を用いた野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティングによる試算。来期予想PERは慎重シナリオ15倍、標準シナリオ17倍、高成長実現シナリオ18倍として試算。
(出所)日本経済新聞社、内閣府、IMFより野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング作成

試算は、前回同様、日本企業の長期的な利益成長の姿(EPS:1株当たり利益)と、バリュエーションの想定(PER:株価÷EPS)を組み合わせて行いました。ただし、向こう3年間については、野村證券市場戦略リサーチ部による短期ハウスビューを参照しました。各シナリオにおける2035年度の株価水準を算出し、2028年度から2035年度まで毎年同率で上昇する試算経路を想定しました。なお、為替レートについては前回の試算と同様に、明示的な想定を置いていません。

このような前提を踏まえた各シナリオのEPS成長率とPERは、以下の通りです。

高成長実現シナリオ  EPS成長率9.5%、PER18倍

標準シナリオ     EPS成長率6.8%、PER17倍

慎重シナリオ     EPS成長率6.1%、PER15倍

EPS:経済・物価・株主還元見通しと過去の実績を勘案

まず、試算の根拠となったEPSから説明していきます。

慎重シナリオと標準シナリオのEPSは先行きの経済・物価および株主還元の見通しをもとに決定しました。経済と物価の見通しについては、内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」(2026年1月)を活用しました。これはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用目標を決定する、公的年金の財政検証の経済前提にも使用されている試算です。

内閣府の試算には、「過去投影」「成長移行」「高成長実現」の3つのシナリオがあります。各シナリオの概要は以下の通りです。

内閣府による実質GDP(国内総生産)成長率のシナリオ

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(注)網掛け部分は内閣府による試算。過去投影とは、経済の成長率を予測する際に、直近の景気循環や過去の平均的な実績(全要素生産性や労働力など)をそのまま将来に当てはめるシナリオ。成長移行とは、賃上げや投資が牽引する成長型経済へ移行し、全要素生産性(TFP)上昇率が過去40年平均の1.1%程度まで高まるシナリオ。
(出所)内閣府より野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング作成

過去投影シナリオ

現状維持を想定しています。直近の景気循環で実現した生産性のゆるやかな改善が続くという想定です。労働参加率は女性と高齢者を中心に一定程度増加すると仮定しています。今後10年間の平均で、実質GDP成長率は0.6%と試算されています。これは、日銀が日本の潜在成長率を約0.6%と計算していることと一致しています。消費者物価上昇率は1.2%と試算されています。

成長移行シナリオ

賃上げや投資の活発化による中長期的な成長を想定しています。過去40年間の生産性の改善が続くと想定し、労働参加率は女性と高齢者を中心に過去投影シナリオよりも上昇すると仮定されています。今後10年間の平均で、実質GDP成長率は1.4%、消費者物価上昇率は2.0%と試算されています。

高成長実現シナリオ

より高い経済成長を想定しています。日本経済がデフレに入る前の期間の生産性の伸びが再現することを想定し、成長移行シナリオと同様に労働参加率は女性と高齢者を中心に過去投影シナリオよりも上昇すると仮定しています。今後10年間の平均で、実質GDP成長率は1.6%、消費者物価上昇率は2.0%と試算されています。

慎重・標準シナリオでは「海外経済成長込み」の実質GDPを試算

内閣府試算にIMF(国際通貨基金)の試算を組み合わせて、「海外成長込み」の1人当たり実質GDP成長率を算出し、自社株買い効果、物価上昇率を合計しEPS成長率を試算します。

慎重シナリオの「海外成長込み」の1人当たり実質GDP成長率は、内閣府の「過去投影」シナリオをベースとして2028年度以降は2.1%と試算しました。日本企業の海外売上高比率は約41%まで高まっています。海外の高い成長率を考慮すると企業が獲得する成長機会は、日本のGDP成長率よりも高くなります。

日本企業の海外売上高比率推移

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(出所)国際協力銀行より野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング作成

自社株買い効果は2.0%と仮定しています。日本でも資本コストや株価を意識した経営が浸透してきており、資本効率が東証や投資家から注目される中で、足元の高い水準が今後も続くと仮定しました。物価上昇率は2.0%(日銀の目標)で推移すると考えます。これらの和でEPS成長率は6.1%と試算しました。

標準シナリオの実質GDP成長率は、内閣府の「高成長実現」シナリオと同様に推移すると想定します。慎重シナリオと同様に海外の経済成長を加味し、2028年以降の1人当たり実質GDP成長率は2.8%と試算しました。

自社株買い効果は慎重シナリオと同様に2.0%とし、物価上昇率は、慎重シナリオと同様に2.0%で推移すると考えます。これらの和で、EPS成長率は6.8%と試算しました。

高成長実現シナリオは2023年を起点にEPS試算

高成長実現シナリオでは、2023年から現在(2026年6月)までの月次の前年比EPS成長率を平均して将来のEPS成長率(9.5%)として採用しました。その理由は、2023年が現在の株式市場を取り巻く環境が形成された年と考えられるからです。2023年には物価上昇率が2年連続で2%を超すなどデフレ脱却が鮮明になる中で、東証が資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を企業に要請し、これが現在に至るEPS高成長の起点となりました。かかる環境下で同等の高成長が持続する場合を想定し9.5%のEPS成長率を定めました。

PER:利益成長やデフレ脱却を将来予測に反映

次にもう一つの重要な要素であるPERについて、説明します。

今回の長期試算では、PERの実績を踏まえつつ、日本経済の中長期的な変化を将来のPER予測に反映しました。具体的には、将来の利益成長と金利上昇の影響をもとに、PERを過去平均値から修正しました。

株価は、企業が現在から将来にかけて稼ぐであろうEPSの合計を、金利やリスクを考慮して現時点での価格に換算したもの、と理論的に説明できます。EPSの予想成長率が高まれば、現在のEPSに比べた株価の理論値が大きくなり、PERを押し上げます。逆に、長期金利が上昇すると、将来受け取れるであろうEPSの現在価値(=株価)が小さくなり、PERが下押しされます。

PERは現在、上昇傾向をたどっています。日本経済の成長力は引き続き低水準ですが、近年はデフレからの脱却に伴い、幅広い製品・サービスで値上げが浸透しており、EPSの成長期待を高めています。

日経平均株価の予想PER、潜在成長率、予想インフレ率の推移

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(注)左軸は対数目盛。日経平均株価の12ヶ月先予想PERはBloomberg集計。潜在成長率は日本銀行が算出。予想インフレ率はIMFの5年先消費者物価予想。
(出所)日本経済新聞社、日本銀行、IMF、Bloombergより野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング作成

インフレ圧力の強まりは、長期金利の上昇を招きます。しかし、EPSの成長ペースが長期金利を上回る「良い金利上昇」であれば、PERは上昇します。

企業の成長の源泉は、日本国内に限りません。世界的なAI半導体需要の高まりを背景に、日本企業の海外収益が拡大しています。今後は、生産能力増強や研究開発を目的とした国内投資が活発化し、日本経済の成長力を押し上げると期待できます。

過去をみると、日本のインフレ予想や成長力の変化が、PERの中長期的な水準に影響を及ぼしてきました。日本経済の将来の成長力向上やデフレ脱却などを踏まえて、今回の「日本株の長期試算」の標準シナリオでは、PERを2025年5月に設定した15倍よりも高い17倍としました。一方、低成長の慎重シナリオにおけるPERは、過去の平均と同水準の15倍としました。

投資家のリスク許容度もPERに反映

PERの水準を決定する要因は、企業の利益成長や長期金利に限りません。株式に対する投資家のリスク許容度も、PERに反映されます。

日本と米国のPERを比較すると、米国のほうが中長期的に高いPER水準を維持しています。2026年6月は、TOPIX(東証株価指数)が17倍台、日経平均株価が18倍台であるのに対し、米国のS&P500種指数は20倍台です。

日本株と米国株のPER比較

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(注)日本のPERは、野村證券のトップダウンによるEPS予想を基に算出。
(出所)JPX総研、日本経済新聞社、S&P500、Nasdaq Global Marketより野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング作成

米国の個人金融資産に占める株式等の割合は42%であり、12%の日本とは大きく異なります(2025年時点、日本銀行調べ)。米国企業の相対的な収益性の高さや、安定かつ緩やかな物価上昇という経済環境の優位性が、株式投資に対する米国国民の積極性を生み出したと考えます。

日本でも近年、リスク許容度が高まっている可能性があります。背景には、新NISA(少額投資非課税制度)の開始や、東証の改革要請を受けた株主還元の積極化、デフレ終焉という経済環境の変化があります。加えて、政府が家計資産の4割を投資に振り向ける目標を掲げる方向で調整に入ったとの報道もあります。実際、米国と日本のPERの格差は縮小しています。

一方、株価指数を構成する銘柄の中身によっても、PERの水準に格差が生じます。TOPIXと日経平均株価のPERは、2025年までは概ね同水準でしたが、AI半導体銘柄の値上がりが際立つようになった2026年には、同銘柄の割合が相対的に大きい日経平均株価のPERが、TOPIXを上回っています。米国でも同様に、AI半導体などの高成長が期待される銘柄を相対的に多く含むナスダック総合指数が、S&P500種指数よりも高いPERとなっています。

AI半導体主導の高成長実現シナリオはPER18倍

現在のAI半導体銘柄の高成長が、中長期的にも維持されるとすれば、日経平均株価の直近のPER18倍を今回の長期試算に用いることが妥当です。前述の通り、日本の投資家のリスク許容度が構造的に変化した場合も、PERの過去平均からの上方シフトを正当化します。 以上を踏まえて、今回の長期試算では、PER18倍の高成長実現シナリオを提示しました。なお他の2つのシナリオとは異なり、過去3年の短期的な高成長を中長期予測に適用した点に留意する必要があります。

10年後の日経平均株価長期試算 標準シナリオで10年後は11万円 高成長シナリオだと? 野村CIO・宮嵜浩のイメージ
野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング CIOマネジメント部チーフ・ストラテジスト
宮嵜 浩
1994年慶應義塾大学法学部政治学科卒業、2001年中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。1994年に山一証券へ入社。その後、富士通総研、三和総合研究所(現・三菱UFJリサーチ&コンサルティング)、しんきんアセットマネジメントチーフエコノミスト、三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所シニアエコノミスト、みずほリサーチ&テクノロジーズ主席エコノミスト、伊藤忠総研マクロ経済センター長兼主席研究員として国内外のマクロ経済やマーケットの調査・分析に従事。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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