2026.09.04 NEW
米半導体企業のバリュエーションマップ 割安/割高を見極める1つの指標 野村證券・竹綱宏行
撮影/タナカヨシトモ(人物)
2026年前半は、AI・半導体関連の銘柄が株式相場の上昇をけん引したことが特徴的だった一方、足元で株価が上下に大きく動く場面もありました。主要な米半導体関連企業の株価は、本来の企業価値と比べて相対的に割安なのでしょうか、それとも割高なのでしょうか。野村證券投資情報部シニア・ストラテジストの竹綱宏行がアナリスト予想などを使って、市場の見方を確認します。

AI関連企業の高い売上高成長が見込まれている
図の横軸は、主な米半導体関連企業の向こう4年度の売上高成長率(年率、市場予想平均)です。縦軸は、予想PER(現在の株価を予想1株利益で割った倍率)で、小さいほど利益に対する株価水準が低いことを示します。
(注)企業はフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)を構成する時価総額の大きい米国上場の主要半導体関連企業のうち利益が極端に小さい、また、数値が取れない企業などは除く。向こう4年度の予想売上高成長率(年率)は、今年度と4年度先の予想売上高から試算。予想はブルームバーグ集計によるアナリスト予想平均。予想PER(株価収益率=Price Earnings Ratio)は、現在の株価を予想1株利益で割った倍率で、株価が予想利益の何年分に当たるかの指標。低いほど利益に対して株価が割安であることを意味する。数式は点線で示した回帰直線の数式。R²は決定係数で、0~1の範囲の値を取り1に近いほど回帰直線がデータに対してより適合することを示す(0.5以上が適合性が高いことの目安)。証券会社や運用機関などのアナリストが将来のキャッシュフローの現在価値やPER以外の倍率などの独自の手法で算定する目標株価が市場の株価に影響することで、PERと成長性の関係の適合性が高くない場合がある。予想およびPER算出に使用した株価は2026年8月27日時点。
(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成
赤い点線の回帰直線が示すように、予想売上高成長率が高いほど予想PERが高い関係がみられます。これは、成長率予想の高い企業は、数年後に1株利益が増えた場合に、株価が同じ水準のままならPERが低下すると理解できるためです。一方で、株価に影響を与える要因はさまざまあるため、この関係だけでは比較が難しいケースもあります。
市場がどう見ているか分かる
例えば、AI演算用半導体の主要企業であるエヌビディアは、予想売上高成長率が年率23%、予想PERが19倍で点線の下側に位置します。メモリー半導体の主要企業であるマイクロン・テクノロジーも、予想売上高成長率が年率25%、予想PERが6倍で点線の下側に位置します。背景には、売上高や1株利益に関するアナリスト予想の達成の可能性を、株式市場が保守的に見ていることなどが考えられます。
また、半導体の設計図などのIP(知的財産)の主要企業であるアーム・ホールディングズは、予想売上高成長率が年率45%、予想PERが107倍で点線の上側に位置します。同社の売上高の一部は、契約により顧客企業の半導体製品の販売数量に伴い増加します。このため、向こう1年の1株利益は小さく、予想PERは高い一方、将来的にAI活用の拡大に伴って同社のIPの利用が広まり、利益も拡大すると株式市場が見ていることが一因と考えられます。
- 野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト
竹綱 宏行 - 1998年野村證券入社。2005年から2015年までニューヨーク、2016年までロンドン駐在(デリバティブモデル開発、デリバティブディーリング、機関投資家営業などに従事)。2019年から2021年に国際金融情報センターに出向(G7マクロ経済とESG金融の分析に従事)。これらの経験を活かし、グローバルな景気動向や政策分析、産業分析を踏まえ、米国株を中心とした投資戦略に関する情報を発信している。CFA協会認定証券アナリスト(米国証券アナリスト)。
※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。
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