2026.08.14 NEW
円安トレンド終焉シナリオに備える 内需系銘柄の選好と、高クオリティー・AI「手のひら返し」銘柄に注目 野村證券ストラテジストが解説
引き続きモメンタムの注目度は高いが、為替変動と物色の関係も話題
日米の通貨当局は、2026年7月31日(米東部時間)に協調介入を実施したと発表しました。日米の協調介入は2011年以来です。2011年は円売り介入でしたが、今回と同様の円買い介入は1998年以来となります。
2026年の株式市場では、AI関連銘柄に代表される株価モメンタムファクターを軸に物色が進んできました。引き続き株価モメンタムに対する投資家の注目度は高いものの、ここにきて為替変動時の物色を巡る議論も急増しています。円高トレンドに転じた場合の物色については何度か言及してきましたが、これまで円高トレンドは実現していません。むしろ2026年7月には1米ドル=164円台と、1986年以来の円安水準となりました。
仮に円安トレンドが終わる場合、これまでの基本的な見解は変わりません。ポイントは、業績への影響だけでなく、ポートフォリオ構築上の制約からも、内需系銘柄や中小型株、低ベータ株が選好されやすいことです。
緩やかな円高で海外勢の日本株買いも期待
緩やかに円高が進む場合、海外の長期投資家による日本株買いも期待できます。為替ヘッジをせずに日本株を組み入れる投資家にとって、円高は通貨リターンの押し上げ要因となるためです。こうした投資家は基本的に長期投資家と考えられます。直近の外国人保有比率を分位別に見ると、外国人保有比率の高い銘柄には輸出系銘柄が多くなっています。これまでの円安下では、業績面で優位な輸出系銘柄の注目度が相対的に高かったことと整合的です。ただ、為替トレンドが転換すれば、この傾向も大きく変わる可能性があります。海外の長期投資家が内需系銘柄への投資を拡大することも想定されます。
(注)TOPIX500ユニバース。輸出は自動車・輸送機、機械、電機・精密。内需は食品、建設・資材、医薬品、情報通信・サービスその他、電力・ガス、運輸・物流、小売、不動産。東証17業種分類。外国人保有比率で10分位に分けた時の各分位の輸出系銘柄と内需系銘柄の割合。2026年8月時点。
(出所)QUICK、Bloomberg、IFISより野村證券市場戦略リサーチ部作成
加えて、直近の外国人保有比率ファクターの傾向には留意が必要です。特に外国人保有比率が高い銘柄では、クオリティーファクターの一つであるアクルーアル(純利益と営業キャッシュフローの乖離幅)の有効性が大幅に高まっています。海外投資家の視点で相対的にクオリティーが高いと判断される銘柄が、株価モメンタム主導の相場でも同時に選ばれています。そのため、AI相場の先を見据えるうえでは、クオリティーに注目すべきです。
アクルーアルで定義したクオリティーを見ると、内需系銘柄では高クオリティー銘柄の比率が高くなっています。このため、円高局面とAI相場の次の展開のいずれを想定する場合でも、内需系銘柄を選ぶ余地があります。具体的な銘柄を以下に示しました。
| コード | 銘柄名 | 予想PER | 実績PBR |
|---|---|---|---|
| (倍) | (倍) | ||
| 1802 | 大林組 | 12.95 | 1.61 |
| 1808 | 長谷工コーポレーション | 11.05 | 1.42 |
| 1893 | 五洋建設 | 11.04 | 2.23 |
| 2181 | パーソルホールディングス | 12.06 | 2.71 |
| 2229 | カルビー | 21.35 | 1.93 |
| 2371 | カカクコム | 28.29 | 11.35 |
| 2501 | サッポロビール | 35.10 | 1.51 |
| 2579 | コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス | 24.81 | 1.88 |
| 2802 | 味の素 | 33.76 | 6.56 |
| 3401 | 帝人 | 19.99 | 0.84 |
| 3402 | 東レ | 19.53 | 1.12 |
| 3436 | SUMCO | 53.81 | 2.14 |
| 3563 | FOOD & LIFE COMPANIES | 35.00 | 10.57 |
| 3626 | TISI | 14.55 | 2.89 |
| 3659 | ネクソン | 18.05 | 1.82 |
| 3994 | マネーフォワード | 93.77 | 7.29 |
| 4004 | レゾナック・ホールディングス | 25.54 | 3.97 |
| 4062 | イビデン | 44.27 | 9.40 |
| 4063 | 信越化学工業 | 19.32 | 2.67 |
| 4188 | 三菱ケミカルグループ | 11.97 | 0.96 |
| 4194 | ビジョナル | 16.08 | 4.46 |
| 4307 | 野村総合研究所 | 20.03 | 7.30 |
| 4324 | 電通グループ | 10.95 | 2.33 |
| 4452 | 花王 | 22.95 | 2.96 |
| 4502 | 武田薬品工業 | 29.85 | 1.17 |
| 4503 | アステラス製薬 | 12.44 | 2.17 |
| 4543 | テルモ | 18.37 | 2.11 |
| 4544 | H.U.グループホールディングス | 22.08 | 1.45 |
| 4666 | パーク24 | 12.46 | 3.03 |
| 4704 | トレンドマイクロ | 23.95 | 8.54 |
| 4751 | サイバーエージェント | 15.96 | 2.55 |
| 4902 | コニカミノルタ | 9.53 | 0.60 |
| 4911 | 資生堂 | 28.11 | 2.27 |
| 5020 | ENEOSホールディングス | 12.78 | 0.97 |
| 5232 | 住友大阪セメント | 11.53 | 0.96 |
| 5233 | 太平洋セメント | 8.25 | 0.74 |
| 6098 | リクルートホールディングス | 26.21 | 10.92 |
| 6268 | ナブテスコ | 22.24 | 2.04 |
| 6370 | 栗田工業 | 20.63 | 3.02 |
| 6448 | ブラザー工業 | 15.91 | 1.41 |
| 6501 | 日立製作所 | 23.54 | 3.88 |
| 6525 | KOKUSAI ELECTRIC | 26.83 | 8.61 |
| 6632 | JVCケンウッド | 8.92 | 1.10 |
| 6701 | 日本電気 | 19.60 | 2.97 |
| 6723 | ルネサスエレクトロニクス | 22.49 | 2.47 |
| 6728 | アルバック | 16.23 | 1.89 |
| 6752 | パナソニック ホールディングス | 17.93 | 1.96 |
| 6754 | アンリツ | 25.65 | 3.60 |
| 6758 | ソニーグループ | 16.56 | 2.65 |
| 6762 | TDK | 20.02 | 2.53 |
| 6869 | シスメックス | 22.45 | 2.14 |
| 6925 | ウシオ電機 | 21.73 | 1.49 |
| 6954 | ファナック | 29.65 | 3.39 |
| 6963 | ローム | 30.96 | 2.38 |
| 6981 | 村田製作所 | 28.84 | 5.17 |
| 6988 | 日東電工 | 15.14 | 2.08 |
| 7011 | 三菱重工業 | 26.30 | 4.30 |
| 7201 | 日産自動車 | 8.67 | 0.26 |
| 7240 | NOK | 15.46 | 0.77 |
| 7269 | スズキ | 9.45 | 1.09 |
| 7270 | SUBARU | 10.34 | 0.66 |
| 7309 | シマノ | 29.60 | 1.97 |
| 7731 | ニコン | 30.38 | 1.13 |
| 7747 | 朝日インテック | 24.48 | 5.89 |
| 7752 | リコー | 12.43 | 0.78 |
| 8056 | BIPROGY | 11.76 | 2.41 |
| 8591 | オリックス | 13.96 | 1.51 |
| 8802 | 三菱地所 | 18.35 | 1.59 |
| 9020 | 東日本旅客鉄道 | 13.50 | 1.28 |
| 9072 | ニッコンホールディングス | 33.81 | 2.68 |
| 9107 | 川崎汽船 | 17.03 | 1.05 |
| 9531 | 東京瓦斯 | 14.59 | 1.16 |
| 9735 | セコム | 26.00 | 2.14 |
| 9766 | コナミグループ | 21.35 | 5.21 |
(注)TOPIX500ユニバース。外国人保有比率上位40%かつアクルーアル下位(高クオリティ側)40%銘柄。PERはIFIS予想、来期優先。8月7日時点。
(出所)QUICK、Bloomberg、IFISより野村證券市場戦略リサーチ部作成
さらに、2026年の内需系銘柄のパフォーマンス低迷には、ソフトウェアやITサービス関連企業に代表される、いわゆるAIディスラプション(創造的破壊)懸念銘柄が大きく影響しました。これらの銘柄の相対リターンが急速に上昇すれば、強制的な持ち高解消が予想されることなどから、全体として弱気な見方も依然根強いといえます。しかし、複数回の決算発表を経て、現時点ではAIによる業績への大きな悪影響が明確でない銘柄も確認され始めています。当初、トップダウンの観点からAIディスラプション懸念銘柄とみなされていたものの、その評価が「手のひら返し」のように一変した銘柄も散見されます。こうした銘柄では、すでに見直し買いが始まっています。円高局面でもパフォーマンスが期待できる有力な内需系銘柄といえます。
グロース(BPR(純資産株価倍率)で割高)株を過去12ヶ月の株価モメンタムの高低で分け、さらに過去3ヶ月の株価モメンタムが高い銘柄のパフォーマンスを見ると、過去12ヶ月と過去3ヶ月の株価モメンタムがともに高い銘柄は、6月下旬以降、乱高下しています。一方、過去12ヶ月の株価モメンタムが低く、過去3ヶ月の株価モメンタムが高い銘柄は、モメンタムファクター全体の変動による影響が小さく、上昇基調にあります。こうした銘柄には、評価が「手のひら返し」のように一変した銘柄も多く含まれるとみられます。具体的な銘柄を以下に示しました。
| コード | 銘柄名 | 予想PER | 実績PBR |
|---|---|---|---|
| (倍) | (倍) | ||
| 2181 | パーソルホールディングス | 12.06 | 2.71 |
| 2413 | エムスリー | 17.26 | 2.56 |
| 3697 | SHIFT | 13.62 | 6.30 |
| 3923 | ラクス | 20.23 | 14.33 |
| 3994 | マネーフォワード | 93.77 | 7.29 |
| 4194 | ビジョナル | 16.08 | 4.46 |
| 4307 | 野村総合研究所 | 20.03 | 7.30 |
| 4452 | 花王 | 22.95 | 2.96 |
| 4661 | オリエンタルランド | 38.66 | 4.75 |
| 4680 | ラウンドワン | 17.16 | 4.64 |
| 4704 | トレンドマイクロ | 23.95 | 8.54 |
| 4716 | 日本オラクル | 15.55 | 5.71 |
| 4733 | オービックビジネスコンサルタント | 26.28 | 3.55 |
| 4751 | サイバーエージェント | 15.96 | 2.55 |
| 6532 | ベイカレント | 18.67 | 10.07 |
| 6701 | 日本電気 | 19.60 | 2.97 |
| 6702 | 富士通 | 18.71 | 3.14 |
| 6758 | ソニーグループ | 16.56 | 2.65 |
| 7453 | 良品計画 | 29.67 | 6.24 |
| 7733 | オリンパス | 17.80 | 2.84 |
| 7832 | バンダイナムコホールディングス | 20.36 | 3.93 |
| 7867 | タカラトミー | 17.20 | 3.09 |
| 8113 | ユニ・チャーム | 21.98 | 2.35 |
| 8136 | サンリオ | 23.61 | 11.45 |
| 9449 | GMOインターネットグループ | 18.01 | 4.00 |
| 9684 | スクウェア・エニックス・ホールディングス | 26.59 | 2.92 |
| 9697 | カプコン | 30.12 | 7.72 |
(注)TOPIX500ユニバース。BPR割安度下位30%銘柄かつ過去12ヶ月株価モメンタム下位40%銘柄かつ過去3ヶ月株価モメンタム上位40%銘柄。PERはIFIS予想、来期優先。8月7日時点。
(出所)QUICK、Bloomberg、IFISより野村證券市場戦略リサーチ部作成
(編集:野村證券投資情報部)
編集元アナリストレポート
日本株クオンツメモ – 為替変動とAI”手のひら返し”銘柄(2026年8月10日配信)
(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。画像はイメージ。
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