2026.09.04 NEW
「10年金利3%」は株安シグナルか? 日本株 今後の見通し 野村證券・池田雄之輔
撮影/タナカヨシトモ(人物)
9月に入り、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが3%台に上昇(債券価格は下落)しました。長期金利の上昇は株安のシグナルなのでしょうか。野村證券市場戦略リサーチ部池田雄之輔が、長期金利上昇の背景を分析し、今後の日本株の見通しを解説します。
長期金利が3%まで上昇した要因は、財政悪化リスクなのか
- 9月に入り、長期金利(新発10年物国債利回り)が一時3%に達しましたが、これをどうみていますか?
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まずは、何が原因で長期金利が3%に到達したのかを考える必要があります。財政悪化リスクが原因であれば、株価にとってネガティブな一方で、景気の足腰が強まっていることが理由であれば、必ずしもネガティブではないということになります。
そこで、市場で織り込まれている、日銀の利上げの到達点(ターミナルレート)が目安になります。この指標をみると、現在1.00%の政策金利は、2.5%近くまで引き上げられると織り込まれていることが分かります。最近の10年金利の上昇は、ほとんどがこの利上げ期待の高まりで説明ができます。つまり、10年金利と市場が織り込んでいる日銀のターミナルレートの水準との差は縮小していることから、財政不安というよりも日銀がしっかり利上げを進められるほど日本のインフレ定着、デフレ完全脱却が明確になってきたということが、金利上昇の本質だと言えます。
(注)日銀「到達」金利の市場織り込みは、2年先1年物円フォワード金利
(出所)Bloombergより野村證券市場戦略リサーチ部作成
長期金利が3%を超えても、株高基調は崩れないのか
- 足元では、長期金利は3%を下回る水準で推移していますが、再び3%を超えた場合、株価にはどのような影響がありますか。
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今後、3%を超える、あるいは3%を超えた状態が定着した場合、どのような影響があるかという点では、名目GDP(国内総生産)との関係が極めて重要だと考えています。
日本の名目GDP成長率と10年国債利回りの関係を見ると、2013年以降は、アベノミクスによって景気を拡大させる政策が進められ、当時の日銀の黒田東彦総裁による金融緩和もあり、名目GDP成長率を、長期金利が下回るという「緩和的な」環境が続いてきました。この点が株高を支える1つの要因になっていたと考えています。
(注)名目GDPは四半期移動平均の前年同期比。26年7-9月期は野村予想
(出所)Bloombergより野村證券市場戦略リサーチ部作成
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問題は、現在の3%という水準です。日本の名目GDP成長率は、今後、平均で3%程度に落ち着く可能性が比較的高いと見ています。2%のインフレ率、実質ベースで1%程度の成長率が目安になると考えられるため、合わせて名目GDP成長率は3%が基本線になります。
これに対して、10年国債利回りが3%を上回り続けると、これまでのような緩和的な環境が少し変化する可能性があります。その場合、株式のバリュエーションは上がりにくくなってくると思います。もちろん、バリュエーションが多少下がっても、業績がしっかり出ていれば株高は崩れないというのがメインシナリオです。
米CPIとFOMCが今後のマーケットの分岐点に
- 今後のマーケットの注目点について、教えてください。
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日銀の9月利上げはすでに市場に織り込まれたので、注目点は米国に移っています。市場の注目が集まった8月のジャクソンホール会議を終え、市場のシナリオの分岐点は2つあると見ています。9月11日発表の米国のCPI(消費者物価指数)と、16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)です。
まず、1つ目の分岐点である米CPIでは、インフレが上振れるかどうかを判断する重要な機会となります。インフレ鎮静化のサインが出てくれば、株高・債券高(金利低下)のベストシナリオになる可能性があります。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部作成
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一方、インフレが高く出てくると、次の分岐点であるFOMCに持ち越されます。そこで、仮にしっかりと利上げによって、インフレに対応する場合には、次善シナリオとなります。株価・金利の全体の動きは予想しにくいですが、相対的にはAI株には調整圧力が続くと見ています。流動性相場を期待しにくくなるからです。
おそらく、債券市場では、イールドカーブ(利回り曲線)がフラット化(平たん化)すると予想されます。インフレ率が上昇する中で、それを抑制するために、短期金利を引き上げ、将来の金利が上昇しないように抑える形になるためです。
- では、最も悪いシナリオはどのようなケースでしょうか。
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インフレが高いにも関わらず、9月のFOMCで利上げを見送るというのが、ワーストシナリオです。その場合、インフレが一層高まるのではないかという懸念が強まり、株安・債券安(金利上昇)になる可能性が比較的高いと見ています。
実は、このシナリオに陥るという市場の警戒は、7月のFOMC後のウォーシュ議長の記者会見で高まりました。ただ、その後、8月に開催されたジャクソンホール会議で、ウォーシュ議長が「インフレがしっかり落ち着かなければ、行動(=利上げ)をとる」と明言したため、インフレが上振れした場合には利上げが行われる可能性が高いという見方になってきています。そのため、市場ではこのワーストシナリオはなさそう、という見方に大きく変化しました。
- このようなポイントを踏まえると、今後の日本株の見通しはどう見ていますか。
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日経平均株価はAI関連銘柄の影響を受けやすいため、日銀、FRBのタカ派化はやや不利な材料ではありますが、企業業績の好調は続くと見込まれる中、年末には70,000円を回復できると見ています。
為替については、足元ではやや円安基調から円高方向に転換しつつある兆しもあります。しかし、当社の米ドル円レートの年末予想は154円で、もともとやや円高になることを想定しています。その前提でも、日経平均株価は年末に70,000円を回復するというシナリオでよいと考えています。
- 野村證券 市場戦略リサーチ部長
池田 雄之輔 - 1995年野村総合研究所入社、2008年に野村證券転籍。一貫してマクロ経済調査を担当し、為替、株式のチーフストラテジストを歴任、2024年より現職。5年間のロンドン駐在で築いた海外ヘッジファンドとの豊富なネットワークも武器。現在、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演中。
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