Research

野村リサーチ

2026.08.19 NEW

日経平均株価2,000円超安 令和のブラックマンデーは2度来る? 野村證券・岡崎康平

日経平均株価2,000円超安 令和のブラックマンデーは2度来る? 野村證券・岡崎康平のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

2026年8月19日の東京株式市場で、日経平均株価が2日続落し、終値は前日比2,134.31円安の65,326.42円でした。中東情勢の不透明感が残り、世界的な金利上昇が続いています。日米当局による協調為替介入以降、市場では日銀の9月利上げの織り込みが進む中、2024年夏の「令和のブラックマンデー」と呼ばれた株価急落が再び起きる可能性はあるのでしょうか。野村證券チーフ・マーケット・エコノミストの岡崎康平が詳しく解説します。

日経平均株価2,000円超安 令和のブラックマンデーは2度来る? 野村證券・岡崎康平のイメージ

インフレ懸念による世界的な金利上昇が株価の下落要因に

2026年8月19日の東京株式市場で、日経平均株価は2日続落し、終値は2,000円超の下落幅となりました。足元のマーケット環境をどうみていますか。

足元の日本株下落はさまざまな要因が絡み合った結果だと思いますが、マクロ的には世界的な金利上昇が注目ポイントです。中東情勢の再不安定化による原油価格の上昇などが背景でしょう。

米国とイランが6月に締結した暫定合意が期限を迎えましたが、両国の溝は埋まらず合意延長が見送られました。UAE(アラブ首長国連邦)も7月18日、イランがUAEに向けて弾道ミサイルを発射したと発表するなど、ホルムズ海峡周辺の緊張が再び高まっています。中間選挙まで3ヶ月を切る中、トランプ政権は中東情勢からなかなか手を引けない状況です。韓国に対する米国の軍事負担低減に関する話も出るなど、米国を中心に外交面で再び動きが活発化している印象があります。地政学的リスクへの警戒感も金利上昇の一つの文脈でしょう。

このような局面では、金利に敏感で、投資家のリスクオフの影響を受けやすい銘柄が売られやすくなります。ここまで上昇してきたAI・半導体関連銘柄が、比較的大きく売られている印象です。金融株は金利上昇が追い風になりやすいセクターですが、ここ最近の株価上昇が落ち着きを見せ始めるなか、地政学リスクに対する警戒感が反映された可能性があります。

ただ、世界経済が本格的に悪化するとか、AI関連銘柄に対して新たな懸念材料が出てきたといった悲観的な状況にあるとは言えないでしょう。日米で企業の決算発表が進み、AI・半導体関連銘柄に対する警戒感が和らぎ始めるなど、数週間単位で見ると、株式市場は好転プロセスに入りかけたところです。足元の株価下落をしっかり見極めることは大切ですが、ここ数日の日本株下落は短期的な調整にとどまるとみて良いと思います。

日米の協調為替介入を経て、9月の日銀会合で追加利上げが行われるとの見方が強まっています。2024年夏に発生した「令和のブラックマンデー」を思い浮かべる人もいると思います。

そうですね。2024年夏の相場変動では、2024年7月31日から2024年8月5日にかけて日経平均株価が7,643円(-19.5%)下落し、米ドル円も154円程度から141円台に一時低下(-8.4%)しました。

2024年夏の相場変動

日経平均株価2,000円超安 令和のブラックマンデーは2度来る? 野村證券・岡崎康平のイメージ

(注)2024年のデータ。
(出所)ブルームバーグ資料より野村證券市場戦略リサーチ部作成

当時の株式市場を振り返ると、円高米ドル安が強く意識される相場環境で外需株の下げが強く、内需株が相対的に下げ幅を限定した構図でした。興味深いのは、金融セクターが株価下落を先導した点です。通常、中央銀行のタカ派サプライズは金融セクターの株価にとって追い風になりますが、2024年夏はそうならなかったわけですね。当時は米国経済指標の悪化によりFRB(米連邦準備理事会)の利下げ見通しが強まったことで、(A)日本の利上げ到達点に対する見通しが低下圧力を受けたことに加え、(B)全体としてイールドカーブの平坦化が意識されたからでしょう。

2026年9月会合で日銀がタカ派姿勢を明確化するならば、「令和のブラックマンデー」再来を懸念する見方もあるでしょう。一定の警戒感は持っておくべきですが、2024年夏のような状況が再現されるリスクは限定的だと思います。

「令和のブラックマンデー」再来リスクは低いと想定する理由

なぜ令和のブラックマンデーが再び起きる可能性が低いと見ているのでしょうか。

例えば、既に基調的なインフレ率が2%を超えて上振れし始めているとすれば、日銀が強いタカ派スタンスを示す可能性があります。金融緩和の調整局面から引き締め局面に移行する必要があり得るからです。しかし、現時点では、あくまで基調インフレ率上振れに対する「警戒感」が強まっているに過ぎません。金融市場にショックを与えるような厳しいタカ派スタンスを日銀が示す可能性は限定的と考えられます。いわば、9月会合で日銀が利上げを行うとしても、それは基調インフレ率を2%に軟着陸させるための利上げと位置付けられるでしょう。

加えて、2026年9月17~18日開催予定の日銀決定会合の周辺では、直前に行われる2026年9月FOMC(米連邦公開市場委員会、米国時間9月15~16日)が重要イベントですが、経済統計の観点では目立った公表は予定されていません。2024年の相場変動の直接的なきっかけとなったISM(全米供給管理協会)製造業指数や米国雇用統計の公表日からは、離れています。またFOMC議長が、「データ・ディペンダント」な政策運営を手掛けたジェローム・パウエル氏から、それに批判的なケビン・ウォーシュ氏に交代している点も当時とは異なる点です。ウォーシュ議長は、経済データの振れに対する過剰反応は望ましくないとのスタンスであり、一つ一つの経済統計に対する金融市場の感応度は、当時に比べて低下している可能性があります。

もちろん、日銀はタカ派姿勢の明確化に細心の注意を払うでしょう。相場の急変動は、一般論としてマクロ経済に対して好ましい事態ではないことに加え、円安米ドル高の是正を望む米国政府も広範な相場変動を望んでいない可能性が高いわけです。株高・金利低下を望むトランプ政権を念頭に置けば、米国政府が求めているのは「株安を引き起こさない範囲での円安米ドル高の是正」となります。

当然、米国政府の意向を日銀がくむ法的根拠はありません。それでも、「タカ派転換が少し行き過ぎてもよいので、確実に円安米ドル高を是正する」姿勢より、「タカ派度合いが物足りないリスクがあるとしても、グローバルな相場変動を引き起こさない」スタンスのほうが、日銀には採用されやすいのではないでしょうか。

深読みが行き過ぎるかもしれませんが、協調為替介入後も円安米ドル高圧力が拭いきれていない現状と、上記の見方は方向感が一致しています。この見方が正しい場合、2026年9月会合で日銀が株安を引き起こすほどまでタカ派姿勢を強める可能性は低いことになります。2026年9月の50bps(ベーシスポイント)利上げや、2026年9~10月の連続利上げの示唆などが理屈上の選択肢となりますが、実現のハードルは高いでしょう。

今後は利上げペースがこれまでより速くなることや、インフレ上昇に対する日銀の反応が敏感になることを示す政策運営になることが考えられます。日銀がこれまでとは少し異なる表現で情報発信を行う可能性はあるのではないでしょうか。

今後、日銀はより難しい政策運営を迫られることになりそうですね。

そうですね。マーケットを驚かせすぎないことを前提にしつつも、マーケットに対して一定の影響力を持つ必要があります。そのため、少しだけタカ派的な姿勢を示すという、難しい対応が求められます。

2026年9月会合で日銀が「ちょうどよいタカ派転換」(=円安米ドル高を抑制しつつ株安に陥らない政策スタンスへの転換)を実現できない可能性も想定しておく必要があるでしょう。その場合、2026年10月会合以降での早期の利上げが金融市場の関心事になるでしょう。その際には3つの日程が重要になります。具体的には、(A)2026年10月29~30日の日銀会合、(B)2026年11月3日の米国中間選挙、そして(C)2026年10月中頃~11月前半とみられる消費減税の国会審議です。

消費減税法案の審議が本格化する中で、中間選挙を控えた米国が円安米ドル高を再び問題視する可能性があります。日銀は、こうした周辺環境のもとで2026年10月会合に臨むことになります。財務省による為替介入リスクも意識されつつ、金融市場では日銀の追加利上げ期待が高水準で維持されると考えられます。

2026年10月会合での日銀の政策判断は、2026年9月会合の内容や経済・物価情勢次第であり、いまだ見通しにくい状況です。しかし、「2024年のトラウマを繰り返さない」ことを日銀が重視するならば、2026年9月会合のみならず、2026年10月会合でも過度なタカ派転換に至る可能性は低いでしょう。

以上を踏まえると、協調為替介入後も日銀が極端なタカ派姿勢に転換する可能性は低く、株高トレンドが大きく損なわれる展開は、メインシナリオになりにくいとみています。

今後のリスクはトランプ政権の外交、円高進行

その他、今後のリスク要因として、注目しておいた方が良い点について、教えてください。

今後のリスクとしては、11月に米国の中間選挙が控える中で、米国を起点とした外交リスクが大きなポイントになると思います。米国内で追加的な財政支出を行うことは、予算プロセスなどを考えるとなかなか難しいと思います。中間選挙の見通しもまだ固まっていませんが、両院で共和党が圧勝するような状況ではなく、民主党が一定程度巻き返す展開もあり得る状況です。

トランプ政権は財政拡張政策が難しい中では、外交面での動きを通じて成果をアピールしようとする可能性があります。その場合、中東情勢がもう一段混乱する可能性もありますし、それ以外の地域に問題が飛び火する可能性もあります。最近は、トランプ大統領から北朝鮮に対する言及も増えているため、中東以外の地域で地政学リスクが高まるとの見方が強まっても不思議ではありません。

もう一つは、日銀がこれから2026年9月に利上げするとの見通しが固まりつつある中で、それが行き過ぎるリスクです。先に触れた通り、日銀の政策変更が「行き過ぎる」展開はメインシナリオになりにくいとは思います。しかし、潜在的なリスクシナリオとして意識しておくことは必要です。日本企業の間で為替前提が円安米ドル高に傾く兆しも見える中、円高進行が企業業績に影響するとの見方が強まる可能性があるからです。1米ドル=150円を割るような円高が急激に進む場合には、相場変動が短期的に大きくなるリスクに注意が必要です。

日経平均株価2,000円超安 令和のブラックマンデーは2度来る? 野村證券・岡崎康平のイメージ
野村證券 市場戦略リサーチ部 チーフ・マーケット・エコノミスト
岡崎 康平
2009年に野村證券入社。シカゴ大学ハリス公共政策大学院に留学し、Master of Public Policyの学位を取得(2016年)。日本経済担当エコノミスト、内閣府出向、日本経済調査グループ・グループリーダーなどを経て、2024年8月から、市場戦略リサーチ部マクロ・ストラテジーグループにて、チーフ・マーケット・エコノミスト(現職)を務める。日本株投資への含意を念頭に置きながら、日本経済・世界経済の分析を幅広く担当。共著書に『EBPM エビデンスに基づく政策形成の導入と実践』(日本経済新聞社)がある。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

手数料等およびリスクについて

当社で取扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、年金保険・終身保険・養老保険の場合は商品ごとに設定された契約時・運用期間中にご負担いただく費用および一定期間内の解約時の解約控除、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引をご利用いただく場合は、所定の委託保証金または委託証拠金をいただきます。信用取引、先物・オプション取引には元本を超える損失が生じるおそれがあります。証券保管振替機構を通じて他の証券会社等へ株式等を移管する場合には、数量に応じて、移管する銘柄ごとに11,000円(税込み)を上限額として移管手数料をいただきます。有価証券や金銭のお預かりについては、料金をいただきません。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。

株式の手数料等およびリスクについて

国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。国内REITは運用する不動産の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。国内ETFおよび国内ETNは連動する指数等の変動により損失が生じるおそれがあります。国内インフラファンドは運用するインフラ資産等の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。
外国株式(外国ETF、外国預託証券を含む)の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。
詳しくは、契約締結前交付書面や上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。

  • EL_BORDEをフォローする
  • Pick up

    ページの先頭へ