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野村リサーチ

2026.09.11 NEW

「だまし」も多い円高局面の投資判断 市場の関心高まる「円高耐久力」株 野村證券ストラテジストが解説

「だまし」も多い円高局面の投資判断 市場の関心高まる「円高耐久力」株 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

急な円高、過去6割は「だまし」

米ドル円相場が1米ドル=155円を割り込み、チャート上の節目を迎えたとして、トレンド転換を見込む向きが増えています。過去の為替相場と日本株の関係を振り返ることは、状況の整理に役立ちます。一方、最大の欠点は、現在進行中の円高を含む市場価格の変動が、過去のどのパターンに該当するかをリアルタイムで断定できない点です。

そのうえで過去を振り返ると、短期間に3%以上円高が進んだ局面は1980年以降に61回ありました。その後、3%以上の円安となって元の水準に戻る「だまし」は35回と、約6割を占めました。

米ドル円とTOPIX、短期間での3%円高局面前後のTOPIXの傾向

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(注)1980年以降で検証。100日で3%円高&その後100日内に元に戻らず(レジーム転換、26回):ドル円が100営業日前比3%以上円高となり、その後の100営業日間で3%以上の円安を経験しなかったケース。100日で3%円高&その後100日内に3%以上の円安(レジーム転換しない「だまし」、35回):ドル円が100営業日前比3%以上円高となり、その後の100営業日間で3%以上の円安を経験したケース。過去100営業日で既に同様のケースが生じているケースは除外している。
(出所)JPX総研、Bloombergより野村證券市場戦略リサーチ部作成

円高の進行が「だまし」であれば、株価指数は早期に反発する傾向があります。一方、円高が定着した場合でも、TOPIX(東証株価指数)は3〜4ヶ月程度、一進一退で推移した後に上放れる傾向がみられます。円高定着時には外需やシクリカルも3ヶ月ほど弱含みますが、その後は市場平均を上回る傾向がみられました。以上を踏まえると、中長期投資家にとっては、為替だけで相場を判断しすぎないことが重要です。

米ドル円の「円高レジーム転換」&だまし前後の日本株物色の傾向(外需vs内需、シクリカルvsディフェンシブ)

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(注)1980年以降で検証。100日で3%円高&その後100日内に元に戻らず(レジーム転換、26回):ドル円が100営業日前比3%以上円高となり、その後の100営業日間で3%以上の円安を経験しなかったケース。100日で3%円高&その後100日内に3%以上の円安(レジーム転換しない「だまし」、35回):ドル円が100営業日前比3%以上円高となり、その後の100営業日間で3%以上の円安を経験したケース。過去100営業日で既に同様のケースが生じているケースは除外している。外需業種は東証33業種のうち電気機器、卸売、機械、化学、医薬、非鉄、精密、その他製品、鉄鋼、ガラス・土石、海運、ゴム製品、残りを内需業種とした。シクリカル業種は東証33業種のうち電気機器、銀行、卸売、機械、化学、保険、非鉄、精密、不動産、その他金融、証券・商品先物取引、鉄鋼、ガラス・土石、海運、ゴム製品、石油・石炭製品、金属製品、鉱業として、残りをディフェンシブ業種とした。各セクターの日次平均リターンを用いて相対株価指数を算出。
(出所)JPX総研、Bloombergより野村證券市場戦略リサーチ部作成

為替・長期金利の局面別にみると、円高・金利上昇時には銀行、商社、通信が堅調でした。ただし、為替・金利の予測には常に誤差が伴うため、先行きに確信がある場合の目安にとどめるべきです。6月以降、日本株は金利や為替よりも、米国株・韓国株の先物に連動しやすくなっています。9月7〜8日の日本株安も、地政学リスクへの懸念再燃に伴う米国株先物の下落に連動したものといえます。

米ドル円前提と業績:円高に遅行するリビジョン悪化、それに先行する株価指数

TOPIX500における会社側の米ドル円前提レートは1米ドル=153.9円です。実勢レートが前提レートより円高となるのは、2025年4月の関税ショック時以来です(9月9日時点の実勢レートは153円台前半)。

TOPIX500企業のドル円前提推移

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(出所)QUICKより野村證券市場戦略リサーチ部作成

実勢レートが前提レートより円高となる局面では、リビジョン(業績予想の修正動向)が下向きやすい傾向があります。ただ、過去のこうした局面では、英国の欧州連合離脱ショック、VIX(恐怖指数)ショック、コロナショック、SVB(シリコンバレー銀行)ショック、植田ショックなど、為替よりも金融ショックが発生源となる場合が多くみられました。このため、リビジョンの悪化を待たずにTOPIXが急速に調整し、リビジョンの底打ちに先行して反発するケースが多くなっています。

米ドル円相場が1年間にわたり5円円高となれば、TOPIXのEPS(1株当たり利益)には1〜1.5%の下押し圧力がかかります。しかし、内外の景気や物価の影響の方が重要であり、景気拡大とインフレが続く限り、2026年度の2桁増益は崩れにくいとみられます。今後、1米ドル=150円となり、同水準で定着した場合、EPS増益率は現行のトップダウン予想で、2026年度が+19.2%から+18.3%、2027年度が+10.3%から+9.7%に低下します。ただ、景気拡大とインフレが続く限り、業績の大局観を変える必要性は小さいとみられます。なお、自動車株は円高の影響が大きく、5円の円高で利益が約4.6%減る一方、電機株への影響は約0.5%にとどまります。

1米ドル=145円となった場合に業績の下振れが警戒されやすい業種には、化学、製薬、タイヤ、建機、重工、自動車、精密などがあります。一方、以下の図表では、円高が業績改善につながる企業(円高メリット)と、1米ドル=145円でも業績悪化が限られると試算される企業(円高耐久力)を抽出しました。円高進行時には円高メリット株に注目が集まりやすいものの、株式市場の先読み傾向を踏まえると、市場の関心は徐々に「円高耐久力」株へ移ると想定しています。

円高メリット・円高耐久力スクリーニング
コード 会社名 ドル円
前提
(円)
1円円高の
利益
インパクト
(10億円)
1円円高の
経常利益
への影響
(%)
1ドル145円
の場合の
26年度
会社予想
経常増益率
試算値
(%)
1ドル145円
の場合の
26年度
会社予想
上振れ
/下振れ度
(%)
区分
2264 森永乳業 160 0.2 0.5 2.4 8.6 円高メリット
2501 サッポロビール 150 0.004 0.0 -50.6 0.2 円高メリット
2670 エービーシー・マート 145 0.23 0.3 0.4 0.0 円高メリット
268A リガク・ホールディングス 145 -0.04 -0.3 15.2 0.0 円高耐久力
2768 双日 150 -0.3 -0.3 45.7 -0.9 円高耐久力
3197 すかいらーくホールディングス 160 0.1 0.4 19.9 5.0 円高メリット
3402 東レ 150 -0.8 -0.7 43.2 -2.5 円高耐久力
3405 クラレ 159 -0.1 -0.2 21.5 -2.2 円高耐久力
3861 王子ホールディングス 155 0.48 1.2 22.9 10.7 円高メリット
4203 住友ベークライト 155 -0.07 -0.2 19.3 -1.5 円高耐久力
4401 ADEKA 153 -0.11 -0.3 14.8 -1.8 円高耐久力
4523 エーザイ 153 0.516 1.0 53.2 5.6 円高メリット
4528 小野薬品工業 155 0.5 0.5 6.8 5.3 円高メリット
4543 テルモ 155 -0.5 -0.3 44.7 -1.9 円高耐久力
4568 第一三共 156.12 0.2 0.1 15.0 0.7 円高メリット
5101 横浜ゴム 157 -0.4 -0.3 27.7 -2.3 円高耐久力
5108 ブリヂストン 150 -2.3 -0.6 37.0 -2.3 円高耐久力
5301 東海カーボン 159.25 -0.05 -0.2 27.7 -2.1 円高耐久力
5463 丸一鋼管 150 -0.01 0.0 10.8 -0.1 円高耐久力
5803 フジクラ 150 -2 -1.0 122.1 -2.2 円高耐久力
5805 SWCC 145 -0.03 -0.1 23.2 0.0 円高耐久力
5901 東洋製罐グループホールディングス 155 0.4 0.7 -23.6 9.9 円高メリット
5991 ニッパツ 150 -0.36 -0.7 19.2 -2.8 円高耐久力
6268 ナブテスコ 145 -0.046 -0.2 67.6 0.0 円高耐久力
6324 ハーモニック・ドライブ 156.59 0.02 0.8 232.1 2.8 円高メリット
6361 荏原 145 -0.3 -0.3 28.0 0.0 円高耐久力
6448 ブラザー工業 155 0.3 0.4 18.9 3.2 円高メリット
6504 富士電機 150 0.16 0.1 13.3 0.5 円高メリット
6506 安川電機 145 -0.283 -0.6 31.1 0.0 円高耐久力
6508 明電舎 150 -0.1 -0.4 18.3 -1.5 円高耐久力
6586 マキタ 155 0.6 0.6 8.3 5.4 円高メリット
6702 富士通 150 0.8 0.2 4.5 0.9 円高メリット
6724 セイコーエプソン 156 0.7 1.4 113.3 7.8 円高メリット
6753 シャープ 160 2.4 4.1 0.1 163.6 円高メリット
6758 ソニーグループ 153 -3.5 -0.2 18.3 -1.6 円高耐久力
6871 日本マイクロニクス 156 -0.028 -0.2 85.3 -1.0 円高耐久力
6923 スタンレー電気 150 -0.3 -0.6 11.1 -2.6 円高耐久力
6952 カシオ計算機 155 0.05 0.2 34.3 1.5 円高メリット
6965 浜松ホトニクス 148 -0.2 -1.1 32.4 -2.4 円高耐久力
6971 京セラ 155 -0.11 -0.1 17.7 -0.6 円高耐久力
7013 IHI 145 -2 -1.1 29.4 0.0 円高耐久力
7276 小糸製作所 150 -0.1 -0.2 10.6 -0.8 円高耐久力
7735 SCREENホールディングス 150 -0.13 -0.1 25.4 -0.4 円高耐久力
7747 朝日インテック 155 -0.156 -0.3 13.0 -3.0 円高耐久力
7936 アシックス 160 -0.07 -0.1 34.9 -0.6 円高耐久力
7951 ヤマハ 155 -0.11 -0.3 20.2 -2.5 円高耐久力
8002 丸紅 150 -1.9 -0.3 10.7 -1.3 円高耐久力
8031 三井物産 150 -4.6 -0.4 10.1 -1.9 円高耐久力
8050 セイコーグループ 150 -0.15 -0.5 23.0 -1.8 円高耐久力
8053 住友商事 150 -2 -0.3 12.5 -1.3 円高耐久力
8058 三菱商事 150 -5 -0.5 42.4 -1.6 円高耐久力
9506 東北電力 148 2.8 2.2 41.2 4.9 円高メリット
9532 大阪ガス 159.9 0.5 0.2 -3.5 3.9 円高メリット
9533 東邦瓦斯 160 0.2 0.5 -26.1 12.0 円高メリット

(注)時価総額3500億円以上のTOPIX構成企業で、(1)業績の為替感応度が円高ドル安時にプラスという条件を満たす企業を「円高メリット」、(2)業績の為替感応度が円高ドル安時にマイナス、かつ、1ドル145円の場合でも会社予想の26年度経常増益率が2桁増益で下方修正が3%以下という条件を満たす企業を「円高耐久力」としてスクリーニング。業績予想はQUICKコンセンサス(東洋経済予想で補完)。2026年9月8日時点。
(出所)QUICK、東洋経済新報社より野村證券市場戦略リサーチ部作成

(編集:野村證券投資情報部)

編集元アナリストレポート

日本株ウィークリー(2026年9月10日) – 誤差や「だまし」も多い為替変動との付き合い方(2026年9月10日配信)

(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。画像はイメージ。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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