2026.06.15 NEW
米イランが戦闘終結で合意 市場の焦点は米インフレ圧力と利上げのリスクへ 野村證券・小清水直和
写真/タナカヨシトモ(人物)
2026年6月15日の東京株式市場では日経平均株価が前週末比3297.46円高の69,317.50円に上昇し、過去最高値を更新しました。日本時間15日早朝にトランプ米大統領がイランとの戦闘終結で合意したと公表し、幅広い銘柄に投資資金が向かいました。米国とイランはどんな内容で合意したのでしょうか。野村證券の小清水直和シニア金利ストラテジストが合意内容や米景気動向に与える影響などについて、詳しく解説します。
米国とイランが戦闘終結で合意
トランプ大統領は日本時間15日早朝、ソーシャルメディアの投稿で(1)イランとの合意が完了したこと、(2)ホルムズ海峡の通行料無料の下での開放を承認すること、(3)米海軍による封鎖の即時解除を承認すること、を表明しました。(2)についてはイランが通行料徴収を主張してきたことから、本来イランが表明するはずの内容です。ただ、トランプ大統領が表明していることから、米国とイランの合意では(2)の内容が含まれていることが示唆されます。
一方、日本時間15日早朝には、イラン外務次官も米国とイランが覚書について合意に達した旨を表明していることが伝わりました。覚書の内容は、署名後に公表されるとのことです。イラン外務次官は、今後60日間で最終的な合意に向けた協議が行われるとも述べています。
また、仲介役のパキスタンのシャリフ首相は日本時間15日早朝、ソーシャルメディアへの投稿で、(1)米国・イラン合意が成立したこと、(2)両国がレバノンを含む全ての戦線において軍事作戦の即時かつ恒久的な停止を宣言したこと、(3)正式な署名が19日にスイスで行われること、を表明しました。
各種報道を踏まえれば、米国によるイラン制裁の解除、イランによる核開発問題、地域安全保障などの最終合意に向けた交渉が60日間行われると見られます。つまり、19日の覚書署名は攻撃停止、ホルムズ海峡の封鎖解除、米国によるイラン資産の凍結解除の着手を一部先行させる内容となり、その後60日でより包括的な内容を含む最終合意を詰めていく二段階方式になると見込まれます。
米国とイランは双方とも、攻撃停止やホルムズ海峡の封鎖解除を優先し、合意が困難な内容については後回しにしたと推察されます。覚書の内容の公表は署名後とされていることから、現時点で覚書の内容自体、詳細が決定されたか定かではありません。ただ、米国とイランの双方とも、少なくとも攻撃の激化は望んでいないように見受けられます。
原油価格への影響
WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油価格はこのところ低下傾向をたどり、すでに4月7日の2週間停戦合意後のレンジ下限付近にあります。今後、(1)ホルムズ海峡の航行が実際に回復している、(2)米国など中東以外の産油国において増産が顕著となる、などが確認されれば、WTI原油価格はさらに低下する可能性があります。
(出所)カンザスシティ連銀、ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成
米金融政策への影響、市場の焦点はインフレ圧力と利上げのリスクへ
米国とイランがいったん合意したことで、市場の焦点は米国景気の強さ、需給逼迫を伴うインフレ圧力、利上げのリスクといった点へとシフトしていくと予想されます。
FOMC(米連邦公開市場委員会)の中心メンバーらは、関税や原油価格上昇によるインフレへの影響は一時的との見方を取ってきました。労働市場の需給逼迫が見られないとの判断が大前提でした。ただし、足元では雇用が持ち直しを鮮明化させており、労働市場の需給が逼迫して不思議ではない情勢です。FOMC中心メンバーらは、雇用下振れリスクよりもインフレ上振れリスクへの警戒を強めるでしょう。
このため、原油価格低下のみでは米金利低下には限界があると考えています。米金利低下が持続的となるためには、FOMC中心メンバーが利上げの選択肢を排除するような状況が必要と見込まれます。雇用が潜在的な伸びとされる月ゼロ~+5万人前後にまで減速し、労働市場の需給逼迫が回避される必要があると見られます。
当面は、6月17日のFOMCでのウォーシュ新議長によるコミュニケーションが注目されます。ウォーシュ新議長は、インフレ持続化を警戒する市場と潜在的に利下げを要求し得るトランプ大統領の両者に配慮する必要に迫られているでしょう。この点、ウォーシュ新議長は、(1)当面はインフレ上振れリスクが続く、(2)ただし関税や原油価格上昇による影響が剥落すればインフレ率が低下することがメインシナリオである、という旨を述べると予想されます。
- 野村證券 市場戦略リサーチ部 シニア金利ストラテジスト
小清水 直和 - 米国市場を担当。経済・金融政策・政治といったファンダメンタルズに、投資家ポジション・規制動向といった需給要因を加味し、金利見通し・投資戦略を提供。2007年野村證券入社。2007~2010年日本経済エコノミスト、2011年より金利ストラテジーを担当。2013~2015年在英日本大使館経済専門調査員。2015年より現職。
※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。
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